5 / 137
第一章.婚約破棄騒動
4.王子殿下
しおりを挟む
華麗なる一族の中で秀でた能力がない私であるけど、ちゃんと特技がある。
とは言え、かなり地味だった。
姉と妹は精霊の加護を持つのだけど、私の場合は至って地味だった。
それは、結界魔法。
文字通り、結界を敷いて身を守るのだけど。
我が国では攻撃魔法や高位精霊と契約してこそなんぼ。
私の様に守りだけしかない魔法は屑のように扱われているらしい。
強い攻撃魔法があれば、結界なんて不要らしいのだけど。
長期戦の戦いで魔力を消費すれば危険だと思う私は一度、姉に言ったけど。
「馬鹿ね?そんなのは上級魔法が使えない人のいう事よ。我が一族がそんなことを言うなんて恥よ」
穏やかに言いながらも、咎められてしまった。
姉は炎属性の魔力を持ち妹は水属性でるので正反対だった。
私はというと土属性だった。
「後使えるのはこれかな」
手をかざして土を動かす。
「まさしくモグラね。その内モグラ令嬢ってよばれないかしら?」
土ボコを沢山作り、地面に穴が開く。
ものすごく地味であるが、私生活には役立つ。
なんせ、このおかげで私は――。
「豊穣の加護があるから、邸に果物が沢山だわ」
私の魔力で邸の果実は毎年豊作で、庭も満開の花が咲き誇っている。
悪くないと思うのだけど。
「オリヴィア!また土いじりをして…」
「お姉様…」
「そんなことをする暇があるならもっと淑女の勉強をなさい。さぼってばかりいるから落ちこぼれなのよ」
ため息をつきながら言う姉は私を小さな子供にしかりつけるような言い方をする。
私だって頑張っている。
なのに…
「君がこの庭を育てたのか?」
「えっ…」
爽やかな風が吹くようにして現れたのはおとぎ話に出てくるようなとても綺麗な男性達だった。
「始めまして、私はジュリアス・フォン・ウィステリアだ」
「弟のジルベルト・フォン・ウィステリアと申します」
しかし名を告げられ私は固まった。
「殿下!ジルベルト様…妹にそのような!」
側にいた姉は言うまでもなく、ギョッとなりながらすぐに止める。
「何故だ?」
「何故って…それは」
「彼女は君の妹ではないのか?そうなれば将来は私の可愛いい義妹になる」
「ですが…オリヴィアとは身分が…」
その言葉にジュリアス様の目が険しくなるのを感じたのは気のせいだろうか?
隣にいるジルベルト様も無言だった。
何故こんな顔をされるのか解らない。
姉の言う事は最もでもあるのだから、おかしいことはない。
「マリアナ嬢、君は兄弟に身分の差別をつけるのか?では我が弟のジルベルトに対してもそう思っていたのか」
「えっ…」
「兄上、そんな怖い顔を淑女にするものではありませんよ」
氷のような瞳を向けるジュリアス様に私は怖くなる。
さっきまでの優し気な瞳とは正反対だった。
「レディー、お名前をお聞かせくださいませんか」
「オリヴィアと申します」
「素敵な名だ。オリーブを意味する名ですね。私はオリーブとヒマワリが大好きなんです。貴女は誠にヒマワリのような方だ」
「へ?」
素っ頓狂な声を出す私は放心していたが、ジルベルト様は構わず私の手を握りキスを送った。
とは言え、かなり地味だった。
姉と妹は精霊の加護を持つのだけど、私の場合は至って地味だった。
それは、結界魔法。
文字通り、結界を敷いて身を守るのだけど。
我が国では攻撃魔法や高位精霊と契約してこそなんぼ。
私の様に守りだけしかない魔法は屑のように扱われているらしい。
強い攻撃魔法があれば、結界なんて不要らしいのだけど。
長期戦の戦いで魔力を消費すれば危険だと思う私は一度、姉に言ったけど。
「馬鹿ね?そんなのは上級魔法が使えない人のいう事よ。我が一族がそんなことを言うなんて恥よ」
穏やかに言いながらも、咎められてしまった。
姉は炎属性の魔力を持ち妹は水属性でるので正反対だった。
私はというと土属性だった。
「後使えるのはこれかな」
手をかざして土を動かす。
「まさしくモグラね。その内モグラ令嬢ってよばれないかしら?」
土ボコを沢山作り、地面に穴が開く。
ものすごく地味であるが、私生活には役立つ。
なんせ、このおかげで私は――。
「豊穣の加護があるから、邸に果物が沢山だわ」
私の魔力で邸の果実は毎年豊作で、庭も満開の花が咲き誇っている。
悪くないと思うのだけど。
「オリヴィア!また土いじりをして…」
「お姉様…」
「そんなことをする暇があるならもっと淑女の勉強をなさい。さぼってばかりいるから落ちこぼれなのよ」
ため息をつきながら言う姉は私を小さな子供にしかりつけるような言い方をする。
私だって頑張っている。
なのに…
「君がこの庭を育てたのか?」
「えっ…」
爽やかな風が吹くようにして現れたのはおとぎ話に出てくるようなとても綺麗な男性達だった。
「始めまして、私はジュリアス・フォン・ウィステリアだ」
「弟のジルベルト・フォン・ウィステリアと申します」
しかし名を告げられ私は固まった。
「殿下!ジルベルト様…妹にそのような!」
側にいた姉は言うまでもなく、ギョッとなりながらすぐに止める。
「何故だ?」
「何故って…それは」
「彼女は君の妹ではないのか?そうなれば将来は私の可愛いい義妹になる」
「ですが…オリヴィアとは身分が…」
その言葉にジュリアス様の目が険しくなるのを感じたのは気のせいだろうか?
隣にいるジルベルト様も無言だった。
何故こんな顔をされるのか解らない。
姉の言う事は最もでもあるのだから、おかしいことはない。
「マリアナ嬢、君は兄弟に身分の差別をつけるのか?では我が弟のジルベルトに対してもそう思っていたのか」
「えっ…」
「兄上、そんな怖い顔を淑女にするものではありませんよ」
氷のような瞳を向けるジュリアス様に私は怖くなる。
さっきまでの優し気な瞳とは正反対だった。
「レディー、お名前をお聞かせくださいませんか」
「オリヴィアと申します」
「素敵な名だ。オリーブを意味する名ですね。私はオリーブとヒマワリが大好きなんです。貴女は誠にヒマワリのような方だ」
「へ?」
素っ頓狂な声を出す私は放心していたが、ジルベルト様は構わず私の手を握りキスを送った。
103
あなたにおすすめの小説
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
◇レジーナブックスより書籍発売中です!
本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる