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第一章
1報告
しおりを挟む「なんですってぇぇぇ!」
その夜邸に帰りカナリアは両親に事実をありのままに伝えた。
「結婚前夜に婚約破棄をして式場はそのまま使いたいですって?ウェディングドレスもそのまま使いたい?馬鹿にしているのか!」
「式場は私の伝手で最高の場所を選び、料理もその日のイベントもお金は我が子爵家が出したというのに!花嫁道具までも」
「ドレスは既に恋人の物になっているそうです。このままだと新居までよこせといいそうですわね」
「カナリア。どうするんだ」
「勿論本人に再確認しました。既に手を打ってあります」
このままやられたままでなんている程馬鹿ではないし大人しくもない。
「店では私達の会話を聞いている者がおります」
「ランドルフ殿はなんと?」
「婚約破棄を宣言されましたわ。私は解消ですか?と尋ねましたが、証言は店の店長の耳に入ってますし、あの店は防犯の為に音声録音もされてますわ」
「貴族も多く出入りする店だからな」
さっきまでいた店は完全予約制の王族御用達の喫茶だった。
故に何か事件が起きた時に対策を命じたのはカナリア自身だった。
「皮肉な物ですね」
「カナリア…」
「貴族が己の欲の為に生きる事を正当化するとは。私はあの男を心底軽蔑しますわ」
二人とは反対に思いのほか冷静だった。
「しかし、結婚前夜にこのような事になったら」
「社交界の笑い物です。王宮に務めるのも難しくなるでしょう」
婚約が白紙になり傷物令嬢となったカナリアは今後は真面な婚約話は来ないだろう。
「申し訳ありませんお父様、お母様」
「私達の事なんて心配しなくていいのよ」
「そうだ。オイシス家は、我がウィスター家以下の家だ」
ウィスター家は子爵家であるが、資産家である。
過去に多くの文官や官僚に王宮勤めの侍女を輩出して来た家柄だった。
元は商人だったが、戦時中に全財産を投げうって国を、王家を守った功績により爵位を賜ったのだ。
王家はウィスター家を信頼し、ウィスター家は王家に絶対の忠誠を誓って来た。
出世よりも国の安泰。
軍事資金を稼ぎ、良い政治をするべく王宮に貢献して来た。
「お父様、私が婚約破棄された事実は変わりません。私は王族に泥を塗る前に王宮を去ります」
「何を言うの…あんなに努力していたのよ」
「私は女官です」
カナリアは女官という仕事に誇りを持って来た。
王家に忠誠を誓う身として一番危惧しているのは一つだった。
「私もこのまま傷物で終わる気はありませんわ。報復はきっちりいたします」
優秀な女官としての経歴は飾りではない。
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