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第一章
9オイシス家
しおりを挟む伯爵以下の貴族は商人貴族が多い。
特に新貴族はお金で爵位を買う者が多く、格式が低い。
オイシス家は男爵家の家柄で新貴族となる家柄だった。
他の高位貴族と深い繋がりがあるわけでもないのだが、亡くなった先代当主が人当たりも良く、同業者からも信頼されていた。
現在は長男が家督継いでいたが、家を反映させるためにも先代当主がウィスター家に縁談を頼み込んだのだ。
下級貴族は一代限りが多く、後ろ盾が必要になる。
ウィスター家は何代も前から王家に貢献して来た実績もあり、手を結ぶのは理想的だった。
しかしオイスター夫人は違った。
せめて伯爵家以上の令嬢と良い縁談を結びたいと考えていた。
その結果、ランドルフが恋した相手が貴族で父親が伯爵だという事を知ったので許したのだ。
それがまさか――。
「エミリー・エスタークは平民です」
「は?」
「正確に言えば、彼女の父親がお針子に手を出した。いわば妾腹の娘にすぎず、伯爵殿は彼女を娘と認知しない。今回の事は自分に責任はない…むしろこちらが訴えると」
婚約破棄の一件でランドルフの愚行によりキャスティ商会よりキャンセル料を請求されていた。
通常、商会に仲介して式場を用意してもらう場合は式のキャンセルが決まればキャンセル料が発生する。
衣装代やレストランの準備もされているのだが、土壇場でなければ問題ない。
当初はキャンセルする事無くそのまま利用する予定だったがキャスティ商会が断ったのだ。
そして今回の事はキャルティ商会側もランドルフに対して詫びを入れるどころか訴えて来ていた。
その理由はエミリーだけの責任ではなく、ランドルフが率先して彼女との不義を働きながら全くの相談をせずにいたことだ。
通常ならばキャスティ商会も責任があるのだが。
二人の関係を巧みに隠し通して、尚且つ式は予定通りを行うつもりでいたランドルフの罪は大きい。
そしてその愚行を許したのがオイシス夫人だとなれば、状況は変わって来る。
今回の事でキャスティ商会が受けた損害額に精神的苦痛は相当なもので弁護士を立てることになり。
現在オイシス家の邸にて話し合いが設けられていた。
「エミリー・エスタークは既にキャスティ商会を解雇になっております。彼女に慰謝料の返済能力がない場合、夫であるご子息に慰謝料の請求が行くのは当然です。尚且つ、キャスティ家とオイシス家の間に契約もされてましたね?」
「それはそうだけど!でも円満な婚約解消でしょう?だったら…」
「いいえ、婚約解消ではなく婚約破棄です」
ランドルフの母、ライアン・オイシスは声を上げた。
円満に解決しようと考えていたのだが、対峙する弁護士は更なる証拠を突きつけたのだった。
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