婚約者は愛を選び、私は理を選んだので破滅しても知りません!

ユウ

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第一章

28爵位

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カナリアとエンディミオンが船で隣国に向かう頃、ウィスター子爵家に伯爵が与えられていた。


国王に勲章と感謝の言葉を貰い、拍手がされていた。


「この度はそなたが伯爵位を得た事を心から嬉しく思う」

「ありがとうございます。身に余る光栄です」


通常、下級貴族が伯爵位を得るのは敵国の将の首を打ち取った騎士団長や、国に大きな利益を与える程の事をした場合だった。


「そなたたち一族は長い間王家を守るべくすべてを捧げてくれていた。その忠誠を心から感謝する」

「これからも頼みましたよ」

「はっ!」


国王と王妃の言葉は重く、周りにも緊張感が走る。


「そしてそなたには新たな領地を与える。今後も国の為に働いてくれ」

「はい、喜んで」


国にトップである二人に感謝の言葉を貰えるのは高位貴族でも少ないのだ。
嫉妬心を抱く者もいるが、この場で嫌味を言うなんて無理なのだった。




「それにしてもすごい出世ですわね」

「でも、これまで出世の話はあったみたいよ」

「アンデス様はあの通り真面目で控えめな方でしたもの。でも…あれがあったもの」

「ええ、聞けばご息女が婚約を破棄になった事で責任をご自分でお取りなって女官を辞職された事よね」

「あの方も若いのに責任感が強いわ」


ウィスター家の王家への忠誠は誰もが知っていても決定打となったのはまだ年若いカナリアが婚約破棄の事で責任を感じて女官を辞めた事だ。


王宮勤めをする者にとって女官になるのがどれだけ大変かなった者だけが知っている。
婚約破棄に関してはカナリアに責任はないという声もあったが、責任感の強さから辞表を出したのだ。

その噂が流れ、まだ若いのに既に骨の髄まで王家に忠誠を誓うウィスター家の血筋はしっかり受け継がれていると感心されたのだ。


「本当に立派ですわ」

「それだけにお気に毒だわ。爵位を賜ったのにご息女は国を出ざるを得なくなって。何方も行方を知らないとか」


「アリエス様に聞くのも躊躇しますものね…」

「ええ」


好奇心旺盛な者達は興味本位に聞こうとするも、アリエルの表情で何も言えなくなる。
勿論縁起である事に気づいている者はほとんど知らない。


社交界には必要最低限しか顔を出さなくなったアリエルは仕事はするが精神的に辛い状況で追い込まれていると誤解をさせていた。


その所為でオイシス家は完全な悪人だった。


「本当にどういう神経をしているのかしら」


「聞けばご当主の兄君を追い出したとか」

「まぁ、最低ね!」


エスターとミリアがオイスター家と縁を切った事を別の形で受け取られていたのだった。





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