29 / 115
第一章
28爵位
しおりを挟むカナリアとエンディミオンが船で隣国に向かう頃、ウィスター子爵家に伯爵が与えられていた。
国王に勲章と感謝の言葉を貰い、拍手がされていた。
「この度はそなたが伯爵位を得た事を心から嬉しく思う」
「ありがとうございます。身に余る光栄です」
通常、下級貴族が伯爵位を得るのは敵国の将の首を打ち取った騎士団長や、国に大きな利益を与える程の事をした場合だった。
「そなたたち一族は長い間王家を守るべくすべてを捧げてくれていた。その忠誠を心から感謝する」
「これからも頼みましたよ」
「はっ!」
国王と王妃の言葉は重く、周りにも緊張感が走る。
「そしてそなたには新たな領地を与える。今後も国の為に働いてくれ」
「はい、喜んで」
国にトップである二人に感謝の言葉を貰えるのは高位貴族でも少ないのだ。
嫉妬心を抱く者もいるが、この場で嫌味を言うなんて無理なのだった。
「それにしてもすごい出世ですわね」
「でも、これまで出世の話はあったみたいよ」
「アンデス様はあの通り真面目で控えめな方でしたもの。でも…あれがあったもの」
「ええ、聞けばご息女が婚約を破棄になった事で責任をご自分でお取りなって女官を辞職された事よね」
「あの方も若いのに責任感が強いわ」
ウィスター家の王家への忠誠は誰もが知っていても決定打となったのはまだ年若いカナリアが婚約破棄の事で責任を感じて女官を辞めた事だ。
王宮勤めをする者にとって女官になるのがどれだけ大変かなった者だけが知っている。
婚約破棄に関してはカナリアに責任はないという声もあったが、責任感の強さから辞表を出したのだ。
その噂が流れ、まだ若いのに既に骨の髄まで王家に忠誠を誓うウィスター家の血筋はしっかり受け継がれていると感心されたのだ。
「本当に立派ですわ」
「それだけにお気に毒だわ。爵位を賜ったのにご息女は国を出ざるを得なくなって。何方も行方を知らないとか」
「アリエス様に聞くのも躊躇しますものね…」
「ええ」
好奇心旺盛な者達は興味本位に聞こうとするも、アリエルの表情で何も言えなくなる。
勿論縁起である事に気づいている者はほとんど知らない。
社交界には必要最低限しか顔を出さなくなったアリエルは仕事はするが精神的に辛い状況で追い込まれていると誤解をさせていた。
その所為でオイシス家は完全な悪人だった。
「本当にどういう神経をしているのかしら」
「聞けばご当主の兄君を追い出したとか」
「まぁ、最低ね!」
エスターとミリアがオイスター家と縁を切った事を別の形で受け取られていたのだった。
76
あなたにおすすめの小説
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」
「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」
「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」
「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」
あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。
「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」
うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、
「――俺のことが怖くないのか?」
と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?
よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?
しゃーりん
恋愛
アヴリルは2年前、王太子殿下から婚約破棄を命じられた。
そして今日、第一王子殿下から離婚を命じられた。
第一王子殿下は、2年前に婚約破棄を命じた男でもある。そしてアヴリルの夫ではない。
周りは呆れて失笑。理由を聞いて爆笑。巻き込まれたアヴリルはため息といったお話です。
二人の妻に愛されていたはずだった
ぽんちゃん
恋愛
傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。
二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。
アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。
アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。
何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。
全二十八話。
十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)
幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】
小平ニコ
恋愛
「パメラが熱を出したから、今日は約束の場所に行けなくなった。今度埋め合わせするから許してくれ」
ジョセフはそう言って、婚約者である私とのデートをキャンセルした。……いったいこれで、何度目のドタキャンだろう。彼はいつも、体の弱い幼馴染――パメラを優先し、私をないがしろにする。『埋め合わせするから』というのも、口だけだ。
きっと私のことを、適当に謝っておけば何でも許してくれる、甘い女だと思っているのだろう。
いい加減うんざりした私は、ジョセフとの婚約関係を終わらせることにした。パメラは嬉しそうに笑っていたが、ジョセフは大いにショックを受けている。……それはそうでしょうね。私のお父様からの援助がなければ、ジョセフの家は、貴族らしい、ぜいたくな暮らしを続けることはできないのだから。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる