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序章
4帝国の条件
しおりを挟むそもそも帝国は当初、王女殿下を所望されていたはずだ。
「娘を献上というのは先方の意志ではないわ」
「はい?」
「敵国だった国の同盟国になるあるには問題点があるわ」
確かに相手は大帝国。
歴史は四千年以上もあり、たんたとは歴史の長さが違う。
「この同盟は国を存続する上で重要なのだけど、先方は特別の待遇で表向き従国だけど、これまでおおりでいいとも言ってくださっているの」
「え?」
それはありえない事だ。
通常従国となれば、付属品扱いだ。
なのにこれまででい良いと。
「我が国には魔法使いが多いわ。特に結界に関してはどの国よりも上だわ」
「はっ…はい」
「攻撃魔法を重宝される昨今、だけどどんなに攻撃魔法が強かろうと身を守ることができなければ本末転倒よ」
「陛下…」
こんな風に言ってくださるなんて泣けてきた。
魔導士の癖に戦えない私は役立たずだ。
対する聖女は結界を敷くことも、強い攻撃魔法も使える。
片方しかできない私とは正反対だった。
周りから聖女がいるなら不要だと言われた。
「今の魔導士は馬鹿が多いわ。貴方は錬金術を応用して新たな結界術を生み出したというのに」
魔法がすべてと考えている一族の中ではこう呼ばれておる。
魔法は才能。
錬金術は技術。
相反する存在である。
そして魔法は何もないところから生み出すけど、錬金術はある物を利用して行う。
魔法のように炎を出したりすることはできない。
資源を使うのだから。
だけど魔法にも欠点がある。
「魔力とて無限ではないことに未だ気づかない」
「限りがありますから」
「補う為のポーションも飲み過ぎると人体に悪影響が起きるというのが貴女の研究の結果だったはずよ」
「はい…」
そもそも薬とはそういうものだ。
人間が本体持つ自己治癒能力を高めるものでポーションはそもそもそういう類のものだ。
今では回復薬となっているが病気の人間を救うことはできない。
外傷を治癒はできるけど病を治癒するには限界がある。
「帝国では薬学の知識が乏しい…何より欲しているのは結界魔法」
「え?」
「帝国側は結界魔法が使える少女を献上して欲しいと」
それって聖女ではなく、結界魔法が使える女性が欲しいということ?
「表向きは王女殿下を献上して欲しいと言えば我が国は代理を用意すると思っていたのでしょう。皇帝陛下の配慮よ」
「そうだったんですか…」
戦後、傷だらけの国は多く。
金銭的もきつい状況なのを配慮してくださるなんて。
悪い方ではない。
すべてを見越しておられるのかもしれない。
だって普通は王女殿下を献上しろと命じながら、こうなることを予測したとなれば踊らされた貴族はまんまと騙されたことになる。
「とはいえ…後宮はそうもいかないわ」
「陛下、私は…」
「私は貴方をゆくゆくは女官にして、婚約解消をした後に私の傍に置き、娘の補佐を任せようと思っていたのよ。信頼のある側近に下賜して…」
そこまで考えてくださったなんて知らなかった。
思えば私が王宮内で生きてこれたのはこの方のおかげだわ。
「元は敵国、他の妃達や貴族達が手を出さないとは限らない」
「覚悟の上です」
今まで生きてこられたのはお優しい女王陛下の慈悲によるもの。
少しでも恩をお返しできるなら私は…
「陛下、イリスは陛下をずっとお慕いしております」
私にとって貴女は女神様だった。
誰よりも美しく慈悲の慈母女神様だった。
だから貴女のお役に立てるなら私は帝国に行く。
聖女の為じゃない。
私は私の愛する女神様の為に。
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