ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第五部見習い騎士

32.薔薇と純白のドレス

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大まかな所を省いて相談すると。


「なんていうか、その友人馬鹿ですよね」

「おい!」


エーファの言葉に何故?と思った。


「ようするにその貴族の方は幼馴染みたいなものなんですよね?」

「ええ…」

「その友人も、拗らせ過ぎですよね?別に気にしないで結婚しちゃえばいいのに」

「はい?」


遠慮なしに言われた言葉に絶句する。


「だって、政略結婚が当たり前の貴族社会で女は結婚したら生ごみポイですよ」

「言葉を慎め!」

「だから例えだって…大体貴族の結婚は貞節の欠片もないのは暗黙の了解です」


あっけらかんというエーファだが、冷静に物事を見ている。
エステルも否定する気は一切ないので何とも言えない気分になるのだ。


「結婚と恋愛は別で考えられていますから…正妻の立場はツライですしね」

第一夫人の立場は子供を産むことで確立されるにすぎない。

「神の前で永遠の愛を誓っても浮気しているんですから…まぁ貴族の道徳が歪んでいますけど」

「確かに…」

二人は貴族と言えど平民に近い立場なのでままともな考えを持っている。


「だからこそ、ご友人の婚約者様は優良物件です!」

「言い方を!」

不動産のような言い回しをするエーファを止めようとするセスも解りやすい例えだった。


「それに私はご友人に婚約を申し込んだ婚約者殿がまりにも哀れでなりませんね」

「え!」

「私も…男として同感です」


セスまでも、エーファに同意していて驚く。


「身分の高い方ならばなおのことです」

「柵が多いでしょうから」


政略結婚とはそれだけに重いのもので、家を背負っているので当人同士の感情など二の次だった。

望まない結婚を強いられるのは男女関係ない。
ただし、男尊女卑の傾向が強いので女性には色々と風当たりが厳しいのが今の現状ともいえるだろう。


「身分の高い貴族様で、第二夫人も妾も取らないなんて簡単なことではありません」

「言葉だけでならなば何とでも言えますが、深紅の薔薇と純白のドレスを贈った以上は約束を違えない表れですよエステル」


(深紅の薔薇と純白のドレス?)


この二つを贈る意味をエステルは知らなかった。
薔薇の告白は貴族社会にそれなりに浸透しているのだが、純白のドレスを一緒に贈る風習はあっただろうか?


「東の国では純白の百合は天使とされているんです」

「天使?」

「はい、しかもその天使は神の左を指す者と言われているんです」

東の国では別の異教徒とを信仰し、中でも神に仕える天使にも信仰心を持っていた。


「その天使の加護がありますようにと言う願いともう一つ意味があります」

「意味…ですか」

どんな意味なあるのか見当も聞かないエステルにエーファはニヤリと笑みを浮かべた。

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