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第二章
6.去る者
しおりを挟む朝一番で王都内にて、新聞が配られた。
――最大のロマンス。
聡明で心優しき黄金の令嬢と、王族の影の功労者の愛の物語。
王都日報から報じられた電撃婚約発表にて、王都は賑わっていた。
「かつて王家を救った献身の塊の一族のご令嬢と、同じく王家を陰から支え続けた侯爵家のラブロマンスなんて素敵ね」
「ええ、愛のない結婚を強いられながら、健気に耐えていたんだろ?」
「私も知っているよ。確か借金を抱えた伯爵家が金目当てに子爵家に縁談を持ち掛けたんだって?」
「最低よね?婚約者を蔑ろにして自分は遊び歩いて愛人まで作るなんて」
世は男尊女卑の時代。
常に女性が耐え忍び、陰で泣くのが常である。
ただし平民では異なる。
上流階級ならまだしも、平民で貧しい暮らしをする者からすればそんな常識は通用しない。
中には職業婦人として女でありながら男顔負けに働く女性も少なくない。
女だから目立つな、女だから家で大人しくしていろなんて事は時代錯誤だと豪語しているフレデリカを貴族社会でははしたない令嬢だと罵倒するも、平民の女性からすれば有難い存在だった。
何故なら働く女性を支援してくれる数少ない貴族だからだ。
「女でありながら多くの事業を手掛けていらっしゃる方なんだ…当然だね」
「侯爵様は見る目があるね!私は応援するよ」
「そうさ、女を大事にしない男なんて屑だね!」
口々に言い放つ女性達はフレデリカの味方だった。
逆に、不義を働き、散々フレデリカを利用したローガスに対しる評価が最悪だった。
ローガスの恋人発言をしていたアマンダも同様に。
群衆の力は時として権力を上回り、特に中年の女性の勢力は強かった。
母となった女性や、子育てを終えた女性に、独身女性等を敵に回せば貴族社会を壊すことも簡単だった。
何故なら宮廷に仕える侍女に女官、メイド等はの6割は平民や下級貴族だったからだ。
その結果、アマンダの実家のヴィッツ家は。
「今日限りで辞めさせていただきます」
「「「辞めさせていただきます」」」
ヴィッツ男爵家の使用人一同が辞表を提出した。
ほとんどが女性だったのだが、彼女達は優秀な侍女だった。
「これは…」
「もう、我慢できません」
「アマンダお嬢様の傲慢さには耐え切れません」
「その上、あんな真似をなさるなんて…」
辞表を提出した女性達は平民であるがほとんどが騎士の妻だった。
貧しくとも、性根がまっすぐだったので、このまま男爵家に残れば家族が後ろ指を刺されるのは確実だった。
「待て…」
「お給金も真面に支払われず、騎士の娘だから奴隷以下だと侮辱を受けても耐えました」
「何?」
「私もですわ。貧しい故に耐え忍びましたが…不義を働くお嬢様にお仕え難敵出ません。貧しくともプライドがありますわ」
アマンダは身分が低い、彼女達を侮辱していた。
特に子ができない女性や結婚できない女性をした目に見ては言葉の暴力を言い放っていた。
それでも、生きて行くために。
家族を養うために耐えて来たが、ある日を境に給金が減らされてしまった。
アマンダが報酬に見合うだけの働きをしてないと言った所為だ。
その事を知らされていなかったヴィッツ男爵は唖然としたが既に遅かった。
彼女達は今月の給料は要らないと言い放ち、辞表を提出して邸を出て行ってしまった。
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