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第二章魔導士の条件
4聖女の資格
しおりを挟むズタボロにされる革靴を焼却炉の中に放り込み少女はブツブツ言っていた。
「あんな出来損ないが…あんな使えない女が何でよ。この靴のようになればいいのよ」
尋常じゃない様子の少女は焼却炉に火をつけようとしたが。
「随分だな」
「誰!」
「お前に名乗る気はない。随分と醜いな」
顔を言っているのではない。
心が見るに堪えない程醜いと告げた。
「お前が何処で何をしようと勝手だ。だが、目の前で陰湿な行為をするのは反吐が出る」
「何の事を言って…」
「別に告げ口はしない。だが、覚えておけ」
ユリウスは冷たい視線で射貫く。
「仏の顔も三度までだ。何時までも許されると思うなよ」
「言っている意味が解らないわ」
「ああ、血の巡りが悪いアンタには解らないか。よく学園に入れたものだ…それからこれは返してもらうぞ」
「なっ…いつの間に」
ユリウスはメアリの靴を手の取りながら魔力を込める。
「修復魔法」
「なっ!」
傷つけられた靴は一瞬にして元通りだった。
「修復魔法を詠唱無しで」
「この程度初級魔法だ。何だ?自称聖女はこんなこともできないのか?修復魔法もできないのによき魔術師なんてできるな」
「自称じゃな…」
「基本聖女は聖職者のトップだ。正教公国等では聖女を勝手に名乗る事は罪だ。自称するならもう少し聖女に見合う振る舞いをしろ…国の沽券に関わる」
「なっ…」
「まぁ、聖女ならぬ性女か?」
これ以上無い程の屈辱を言われ怒りで魔力を発動させようとするも。
「止めておけ。お前のようなしょぼい魔力など俺には効かない。なんでこんな女がいいんだか…メアリの方がずっと優れているな」
「メアリの方が優れている?」
「ああ、人脈も矜持も、物事の道理もメアリの方が理解している」
ユリウスはメアリに出会って日も浅いが、何時だって前を向いている。
どんなに辛くとも前を見て歩いている。
今回の噂も誰かの所為にしたりしない。
その前向きさと強さはユリウスも認めていた。
「見た目だけ繕って聖女気取りだろうが、心の醜さは目につくぜ」
「私が醜いですって…あんな!」
「メアリには言わないでいてやる。だが、あまり彼女を舐めるなよ」
ユリウスは背を向けその場を去って行く。
ユーフィリアがどんな性格なのかは大体理解した。
あの噂を聞いた時からユーフィリアがどんな少女か察していたが、口出しをしなかった。
「男女の問題に第三者が介入するのはどうかと思ったが…これではメアリが哀れだ」
信じていた婚約者に浮気をされ、一方的に悪女の噂をたてられ。
噂から婚約者は守ろうともしないし、親友だと言いながらあんな真似をするなんてありえない。
「とにかく様子を…」
教室に一旦戻ろうとしたが。
「あー、ユリウス様」
「メアリ?」
何故か魔牛にまたがっているメアリがいた。
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