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109隣国での現状~リオネルside③
しおりを挟む有無を言わせずに執務室から出てもらい、信頼できる部下に彼女がヒギンズ夫人と顔合わせをしないようにきつく命じる。
「お前も下がれ」
だが未だに待機している私の部下。
私一人でいいと言ったはずだが未だに動こうとしない。
「断りします」
「命令だ」
「でしたらなおの事聞きません」
普段は命令だと言えば従うのだが。
「頼むから出てくれ。この後罵倒されるだけですまない…彼女が癇癪を起す可能性もあるんだ」
まがりなりにも戦場に生きた元騎士でもある女性だ。
私も現役の騎士だから遅れをとるわけではないが、万一のことがある。
何より女性に剣を向ける真似はする気はない。
万一殺されたとしてもだ。
「だから申し上げているのです。団長は女性や子供に弱い。どんな極悪非道で最低な女でも」
「酷い言われようだな」
「過去にビッチ夫人に言い寄られていたではありませんか」
「ビッチじゃない。ヴィッセルだ」
「同じです」
心の底から蔑んだ口調だ。
当初から相当毛嫌いしていたからな。
「私は貴方の事を尊敬してました。ですが、騎士道の貫き方を間違えないでください」
「本当にはっきり言うな」
昔から見た目の美しい顔立ちに反して物事をはっきり言い過ぎる傾向がある。
その所為で社交界でも騒動が起きたことはあった。
まぁその分優秀なので罰することはできず、騎士職よりも文官の方が向いていると何度思った事か。
「団長は甘いんです。過去の事はとやかく言いたくありませんが」
「あー…解った。もういい」
これ以上口論を増やせば、彼女を待たせることになる。
邸の外は静かだけど、この静かさが余計に不気味だと感じる。
嵐の前の静けさというべきか。
「団長」
「ああ」
そう思ったののもつかの間だ。
廊下を歩く足音が聞こえた。
既に足音と言っていいのか解らないが。
「お待ちください!」
「触るな無礼者!」
廊下に響く声に私はげんなりした。
待っていると言うことはしないのかとも思ったが今言っても仕方ない。
「団長はまだ…」
このままではけが人が出ると思い私は扉を開けることにした。
少々マナーがなってないが、それだけ追い詰められていると言うことなのは理解できるが。
この後の事を思うと頭が痛いができるだけ早くお帰りいただこう。
天井に隠れている部下達がヒギンズ夫人を殺しかねないからな。
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