上野国、血を拒んだ剣士、上泉信綱

戦国の世。
上野国(こうづけ)に生まれた上泉信綱は、武士の子として幼い頃から剣と死に囲まれて育った。
村が焼かれ、首が晒される光景は日常であり、剣は人を守るためのものではなく、人を斬るための道具だった。

やがて信綱は剣の才を認められ、各地で修行と実戦を重ねていく。
勝ち続けることで名を上げる一方、彼の前には、斬っても斬っても終わらぬ死と憎しみだけが残った。
剣が強くなるほど、救えなかった命の重さが、彼の心に積み重なっていく。

剣とは、何のためにあるのか。
人を斬り、勝ち続けることだけが、武士の道なのか。

答えを求めて放浪する中で、信綱は一つの境地に辿り着く。
それは、力でねじ伏せる剣ではなく、相手の心と動きを制し、血を流さずに勝つという思想だった。

血に塗れた戦国の世で、「斬らずに勝つ」ことを選んだ剣士。
新陰流を生み出した男・上泉信綱の、生涯を描く歴史剣豪譚。
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