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第七部 ハーレム勇者認定試験-後期編-

第七部 第27話 女勇者誕生……?

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 話題のスマホRPG『蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-』今なら、新規登録で、無料十連職業ガチャ開催中。ダーツ魔法学園編が新規実装されたこともあり、プレイヤーは増える一方。
 だが、このゲームの臨場感の正体はただの画面上で終わらないことを、萌子たちは実感することになる。

 ダウンロードと同時に、まばゆい光に包まれ気がつくと、萌子たちはどこかのソファで横たわっていた。


「萌子さん、萌子さん……しっかりするんだ。大丈夫か?」
「んっあれっルーン会長、キオさん、ここは……どこだろう」
「どうやら、どこかの学校のロビーみたいですね。学生服の生徒がいっぱいいるし、生徒の心得とかいろいろ張ってあるし……」

 ついさっきまで、駅前のカフェで新しいゲームソフトのダウンロードをしていたはずだ。なのに、ここはどこだろう? 自分たちの学校のそばでは見かけない制服……男女ともにお揃いのブレザーを着用しているし共学っぽい雰囲気だけど。
「ゲームは……普通にダウンロードが終わっている」
 手にはスマホが握られていて、例のスマホRPGのマイページが表示中。いつの間にか、『新人プレイヤー萌子』と名前まで記録されていて、不思議だ。

「ふむ、こんな学校あったかな? いや、さっきまでカフェでゲームのダウンロードをしていた気がするが……寝ぼけているのだろうか? さっきまで、パンフレット集めをして学校周辺の写真を撮って……それからカフェに……」
「パンフレット……そうだ、学校案内のパンフレットに学校の住所とか、電話番号とか載っているんじゃないの?」
「そういえば、そうだな。突然のことで状況が掴めずにいたが、まずは情報収集だ」
 混乱する頭を整理しながら、まずは自分たちがどこにいるのか正しく把握することにした。
「ですよね、私パンフ取ってきます!」

 この中で一番年下のキオが、後輩の使命感からかパンフレットを取りに設置スペースまでかけていく。あっさり、ロビーに大量にあったパンフレットをゲットしたキオは、なんだか不思議そうな表情で戻ってきた。

「あの……パンフレット……これなんですけど……私たち、夢でも見ているのかなぁ」
「えっどういうこと、キオ?」
 言葉が見つからないのか、戸惑った表情でパンフを手渡ししてくるキオ。受け取った萌子もルーンも、思わず言葉を失う。


【ダーツ魔法学園入学案内】
 冒険者教育のエキスパート、あらゆる職業を極めたダーツ学園長のスキルアップ技術を伝授。全国から入学可能、寄宿舎制で安心。
 勇者コース、戦士コース、魔法使いコース、エルフ・他民族コース、ほか女子生徒専用特別コースも。


「ダーツ魔法学園……これって、さっきダウンロードしたゲームの中の学校名だよね? なんだろう、噂のコスプレイベントか何かなのかな?」

 辺りを見渡しても、ロビー内は学生ばかりでそれらしきコスプレイヤーは見あたらない……。
 と思っていたが、何人かの生徒たちは、魔法の杖を手にしている者やロングソードを携えている者など……コスプレと言うより、冒険者の勉強をする学校といった雰囲気だ。

 これって、俗に言う『異世界転移』もしくは、『異世界転生』なのだろうか? けど、そんな非現実的なことを発言する勇気のない萌子をよそに、ルーン会長がなにも気にしていないようなそぶりで『はははっ』といつもの調子で笑い始めた。

「ああ、私もついに疲れで、異世界に行きたいなどという願望を抱くようになっていたようだ。よしっせっかくの夢の中だ。異世界の学校について、リサーチするぞっ」

 夢の中……そうか、夢の中か……。
 やたら、リアルで臨場感があるけど、本当に夢の中……なの?

 ルーン会長の言うとおり夢の中なら怖いことなんてなにもない……どうせなら、会長たちと一緒に楽しんだ方が良い。
 すると、ルーン会長のその言葉を待っていたのか、受付担当者が萌子たち一行にチケットを差し出して、新入生説明会会場へと誘ってきた。

「新規登録の生徒さんたちですね。今なら、新入生説明会会場で無料の十連ガチャを行っております。見事超レア職業を引き当てた方には、勇者になれる権利があたるかもしれませんよ」
「おおっ勇者候補なら……ここに、勇者の双子の姉である萌子さんがいるしなっ。もしかしたら、ハイレベル職業でクエストが出来るかもしれないっ。夢とは言え、ゲーマーの名にかけて本気で行くぞっ」

 ノリノリのルーン会長は、すでにリアルなゲーム異世界へと転移している夢だと考えているようで、無料ガチャを引く気全開である。

「せっかくなら、楽しまないと損ですものね。行ってみましょう!」
「わっ2人ともテンション高いよっ」


 萌子は、2人に背中を押されて、ずいずいと会場の中へ。会場内は、すでに新規プレイヤーで賑わっており、私服の人や部屋着らしきファッションの人もいて、まさか、みんな本当に突然異世界転移か転生をしているんじゃ……と、不安になった。

 雑談の声に耳を傾けるも、喜んでガチャに挑戦する様子である。

「びっくりしたよ、突然目が覚めたらダーツ魔法学園に転移しちゃっててさぁ。どうせなら、ハイレベル職業がいいよなあ」
「オレは、上級ジョブのハイプリースト狙ってるんだけど……どのジョブを極めればいいんだっけ?」
「まずは、白魔法使いになって、それから高等スキルをたくさんゲットして……」

 すでに攻略モードなのか、スマホ片手に雑談や情報交換に熱を入れている人も見られる。
 無料十連ガチャは、装備品やアイテムのほかにプレイヤーの職業権利が必ずひとつ以上付いてくるという特殊ガチャだ。転職をしなくても上級職になれる可能性があり、なおかつ、最上級の権利は勇者や聖女といった主役級の職業だ。
 まあ、まったりスロー学園ライフ系を求めている人には、勇者の肩書きは重いだけかもしれないが。

「次は、お嬢様寄宿舎学校出身の3人かしら……どうぞ、無料だから安心して引いてね」
 メイド服衣装のお姉さんに促されて、ガチャ台にあがる。
「おっまずは私からか……よしっ。かの栄光は我の頭上にあり……伝説の賢者の生まれ変わりである知の申し子ルーン……ここに見参っっ。ガチャの女神よっ我にチカラをあたえたまえっ」

 恥ずかしい口上を堂々と大声で叫びながら、オーバーアクションでガチャを回すルーン会長。あまりの大胆さに、恥ずかしがり屋の萌子やキオは尊敬の眼差しを向ける。

「会長すごい……異世界のガチャを、ここまでエンジョイできるなんて……」

『おめでとうございますっ。称号賢者、称号黒魔法使い、その他武器防具などをゲットしました』

 おおー! あの女の子すげー! やっぱ、宣言すると当たるんだってさ……など、ざわざわと、他の新規ユーザーからも拍手が送られる。キオも順調にガチャを引き魔法剣士の称号と魔法使いの称号をゲット、すごい。

「あれっ次は私? ……ううっ緊張する……えっと萌子です……双子の弟が女アレルギーってこと以外は本当にごく普通の女の子で……よろしくお願いしますっ」

 からからから……コロン、コロン。

「あれっ職業が出てこない……はずれなしのガチャのはずなのに……?」
 すると、突然ファンファーレが鳴り響き、お祝いのくす玉が萌子の頭上に舞い始めた。

『おめでとうございます! 超レア職業女勇者の称号が当たりましたっ』

「えっ嘘っ私が超レア職業の女勇者なのっ?」
「すごいぞっ萌子さんっ」
「やりましたねっ今日から女勇者ですよっ」

『では、さっそく職業権を固定するクエストに参加してください。クリアをすると、女勇者としてゲームプレイが可能になります』

「えっクエストクリアが条件なの?」
「さすが超レア職業だな、私達もサポートするから挑戦しようっ」

 すると、クエストに参加しようとする萌子たちを呼ぶ声が何処からともなく聞こえてきた。

『お客様、お客様……お食事が出来ましたが……』

「えっお食事? そういえば私達ってさっきまでどこにいたんだっけ? そうだカフェで、ランチのパスタを注文していたような……」


 はっと3人が目を覚ますと、駅前のカフェ。店員さんが今日のランチを運んでくれたようだ。
 魚介類たっぷりのパスタが目の前にあり美味しそう……お腹もすいている。

「あれっ私達、ダーツ魔法学園のガチャで女勇者のクエストを……?」
「おや、私としたことが……ゲームに没頭してしまったようだな」
「どうします? 受理したクエストが保留扱いになっていますけど……」
「うん、そうだね。もうご飯にしよう……ダウンロードは出来たんだし、寄宿舎に帰ってからにしよう」

 空腹と美味しいパスタの誘惑に勝てず、楽しいランチタイムを優先することに……。

 現実世界へと戻ってきた萌子たちだが、ゲームに没頭していただけという認識に切り替わってしまう。
 本当に異世界転移してたなんて、まだこの時の萌子たちは考えもしない。

 そんなわけで、クエストは保留……この選択が、萌子の異世界ライフを大きく狂わすことになるとは、まだ誰も気付いていなかった。
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