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51-10 妹の座争奪戦

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「それでは喫茶店の準備は以上になります、個人の衣装やキャラ設定は各々で準備すると言うことでいいですか?」

「はーーい」

 進行役の先生がホワイトボードの前で最終確認をしながら皆に言った。

 
 召集された臨時生徒会役員、会長以外は昨年の学園祭を知らない、そんなメンバーで準備をするとなると大変な時間が掛かると思った……が!

  美月の加入で色々な事がスムーズに進み残り2週間もあるのに一通りの準備は終了してしまった。

 美月が必要な物のピックアップをし、それを妹の交友関係を利用してあっという間に揃えてしまった。
 この二人が揃ったら本当に無敵になるのを、まざまざと見せつけられている……

 特に美月は凄かった。

 美月がどれくらい凄いとかと言うと、例えばメニューに関して、当初パフェやらケーキやらを提供すると言っていたのだが、「生クリームは衛生上使えないよ」と美月に指摘され、麻紗美のクッキーを焼いてくると言う案も、「調理はその場でしないと駄目だよ」とあっさりダメ出しされる。

 試しに調べると、やはり生クリームは植物性のホイップクリームとかだと許可が降りる場合もあるが基本的には駄目で調理も基本その場で、もしくは正規の所で作られた物じゃないと駄目との事……すげえ詳しいな……

 美月によると模擬店の場合は保健所に臨時営業の申請をするとか、ちなみに正式にお店を営業する場合、調理師免許とかは要らないが、保健所で講習を受けた食品衛生管理責任者を置かなければならないらしい、まあ今回は模擬店なのでそれは要らないが……それにしても美月の知識って一体……


 あ、ちなみに先生が進行してるのは、相変わらず……

「にいにーー、ちゅう~~ちゅう~~」

「ハイハイ……」
 会長が俺のほっぺを舐めるようにキスしまくっているせいです……

 当初は会長がこうなる度に妹が怒りに震えていたが、この時の会長は幼児化していて尚且つ記憶にも残って居ないらしいのと、俺が犬に舐められてると言う感情しか持ってないのが分かったので、あまり気にしなくなったみたい…………多分?


「お店の飾り付け等の準備は1週間前からで大丈夫なので後はそれぞれの準備をしましょう」

「はーーい」

「それぞれ……」

 後はそれぞれ……と言うのも、この妹カフェ表向きは生徒会の感謝イベントと言う事なんだけど、メインは俺の妹の座争奪戦と言う訳の分からない裏企画が進行している為である。
 まあ要するに当日迄俺の妹に相応しいと思うキャラクター設定と衣装を各々が考え準備をし妹カフェで披露し俺が理想の妹は誰か決めると言う事に……

 いやマジで実の妹が居るのに何故こんな事に?


 まあ、やるとなった以上、ちゃんとやるけど……俺の中で妹以上の妹になる人物って……ぶっちゃけ美月しかいないんだけどね、そもそも俺、妹になんの不満も持ってないんだけど……
 可愛いし、世話好きだし、俺の事を好きで居てくれるし……
 唯一の欠点は……俺の事を恋愛対象として見ている事位?
 それにしたって……

「さあお兄ちゃん帰ろう」
「お兄ちゃま帰りましょ」

 そんな事をボンヤリ考えていて気がつくと会議は終わっていた、会長はいつの間にか正気に戻って俺から離れ赤い顔してうつ向いている。

 キスをしている事は覚えて居ないが、目が覚めた瞬間俺に抱きついて居る為に自分が何をしていたかはある程度分かっているらしい……まあ恥ずかしいよな。

 俺は敢えて会長には何も言わない様にしている。
 何年もの間自分を見失っていた会長、やはりそれなりの後遺症はあるだろうし、辛い思いがこれで少しでも解消してくれるなら……まあ妹には内緒だけど……別に嫌じゃないし。


 一応正式な生徒会活動なので議事録を残す為、会長と書記の美智瑠と先生は残り、麻紗美もお茶を片付けたり机を拭いたりしている。

 俺と妹と美月と雫は特にする事がないので先に生徒会室を出て家路に着いた。

 雫とは校門を出たところで別れる、相変わらずうつ向いて小さな声で
「あんちゃん……また……」と言ってそそくさと帰っていく、うーーん今一影が薄いと言うか作者がキャラを決めかねていると言うか……

 あ、そうそう、セシリーは今日は家の関係で休みとの事、やはり良いところのお嬢様なので色々あるらしい……


「お兄ちゃま、明日は美月の買い物に付き合ってね」

「あ、ああ、でも栞も行くんだろ」

「うん、3人でお出かけって久しぶり~~ね、お姉ちゃま」

「そうだね、美月ちゃん」
 妹は俺と一緒に寝ている事を美月にダメ出しされ、当初はかなり不機嫌だった。

 でも美月がうちに来る事に関しては俺が受け入れる以上それに反することはしないと言った通り、美月を快く受け入れ凄く仲良くしている。

 それが妹の本心かどうかは俺には分からない、でも美月が妹の本心を見極められないわけがない。

 妹が本当に美月の事を嫌がっているならば、それを美月が分からない筈がなく、もしそうだとしたら美月はうちに来ることを拒むだろう。

 楽しそうに明日の話しをしている二人を見て、つくづく思った。

「栞ってすげえな……」

 自分で言うのもなんなんだが、妹がどれだけ俺の事を好きか俺は知っている。
 いや……多分俺が思ってる以上に俺の事を好きなのかもしれない。

 妹から告白されてそろそろ半年、これまでも、いや……その前からも、俺の事を思い続け俺に尽くしてくれている妹に俺は何を返せば良いのだろうか?

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