24 / 71
24.真相⑤
しおりを挟む
彼の口から告げられた言葉に『分かりました、術を解くためなら』とは言えなかった。
握りしめた私の手は震えていた。俯きながらその手だけを見つめる。
「そ、そんな…。だってあの子は関係ないのに、魔術なんて掛けていないのに…。悪いのは王家や神官達だわ!あの子じゃないっ。知らせるなんて駄目よ…だってルーシーはどうなるのっ?あの子は優しくて繊細なのよ…」
目の前にはルカ様がいるというのに、叫ばずにはいられなかった。
だってこんなのあんまりだ。被害者ばかりが更に追い込まれるなんて。
私達が何をしたっていうのだろう。
王家によって踏みつけられただけ。
それも都合は良かったからと言う理由で。
なんでこんな目にあうの…。
なにもかもなかったことにしたい。
もとに戻りたい…。
でもそのために私はルーシーを傷つけていいの…。
もうどうしていいか分からない。
彼は私が落ち着くまで『分かっている、君達は悪くない』と何度も言葉を掛け続けてくれた。
私が少し落ち着いたのを見計らって彼は話を続ける。
「ルーシー嬢が無意識だからこそ魔力が術に強固に絡んでいるような状態だ。この最悪な状態で魔術を解くのは危険がある。解く前にまずはその魔力にヒビをいれる必要があるんだ。ヒビを入れるのは簡単だ、彼女に今回のことを話して感情を揺さぶればいい。彼女の性格を考えれば、信じなくても動揺するはずだ。
だからシシリア、魔術を解く為に君から妹に真実を伝えて欲しい」
彼は真剣そのものだった。声音は厳しいものではないけれども『否とは言わせない』そんな雰囲気を纏っている。
ルカディオ・アルガイドは今、優秀な文官の目をしている。
選択肢は一つしかないのだと悟った。
「……何を話せばいいのですか」
呟くようにそう訊ねた。
なるべく妹を傷つけないように話したい。
「嘘偽りなく全てを伝えて欲しい」
妥協するところはないようだ。
それが最善な方法なのだろう。でもそれは妹にとって最悪な方法だ、姉としては素直に頷けはしない。
「……それではあの子は…、ルーシーは術が解けてから自分のせいだと責めてしまうわ」
縋るようにそう言った。もしかしたら…と願いながら。
「そうなるだろうな…」
彼は誤魔化すことはなかった。それが文官としてのなのか、それとも誠実さゆえなのかはその表情からは分からない。きっと両方なのだろう。
私は諦め切れずに『それが分かっているのなら、せめて全てではなく、』と訴えようとするが、途中で遮られてしまう。
「今回、彼女の魔力が取り込まれたのは本当に偶然で、それは疑う余地はない。だが術がこれほどの効果を発揮したのは魔力の持ち主の内に秘めた思いが影響しているのではないかとみている。
まあこれは断定ではなく、私の勝手な憶測だが…」
彼が言った『うちに秘めた思い』という言葉にハッとする。
私が婚約解消したすぐあとにガイアに向かって見せたあの『恋している』というルーシーの顔が頭に浮かんだ。
妹は姉である私の婚約者をずっと前から秘かに愛していたのだ、私が気づかなかっただけ。
それこそがあの子の『秘めたる想い』なのだと分かってしまう。
妹の恋心に罪はない。心の中にだけ抱えているものはその人だけのものだから。
ではそれに気づかずにいることも罪ではないはず。
罪を犯していない妹と私、違いはない。
……それなのに、この違いはどうしてだろう。
あの子は幸せそうに笑っていて、私はあれから一度も笑っていない。
握りしめた私の手は震えていた。俯きながらその手だけを見つめる。
「そ、そんな…。だってあの子は関係ないのに、魔術なんて掛けていないのに…。悪いのは王家や神官達だわ!あの子じゃないっ。知らせるなんて駄目よ…だってルーシーはどうなるのっ?あの子は優しくて繊細なのよ…」
目の前にはルカ様がいるというのに、叫ばずにはいられなかった。
だってこんなのあんまりだ。被害者ばかりが更に追い込まれるなんて。
私達が何をしたっていうのだろう。
王家によって踏みつけられただけ。
それも都合は良かったからと言う理由で。
なんでこんな目にあうの…。
なにもかもなかったことにしたい。
もとに戻りたい…。
でもそのために私はルーシーを傷つけていいの…。
もうどうしていいか分からない。
彼は私が落ち着くまで『分かっている、君達は悪くない』と何度も言葉を掛け続けてくれた。
私が少し落ち着いたのを見計らって彼は話を続ける。
「ルーシー嬢が無意識だからこそ魔力が術に強固に絡んでいるような状態だ。この最悪な状態で魔術を解くのは危険がある。解く前にまずはその魔力にヒビをいれる必要があるんだ。ヒビを入れるのは簡単だ、彼女に今回のことを話して感情を揺さぶればいい。彼女の性格を考えれば、信じなくても動揺するはずだ。
だからシシリア、魔術を解く為に君から妹に真実を伝えて欲しい」
彼は真剣そのものだった。声音は厳しいものではないけれども『否とは言わせない』そんな雰囲気を纏っている。
ルカディオ・アルガイドは今、優秀な文官の目をしている。
選択肢は一つしかないのだと悟った。
「……何を話せばいいのですか」
呟くようにそう訊ねた。
なるべく妹を傷つけないように話したい。
「嘘偽りなく全てを伝えて欲しい」
妥協するところはないようだ。
それが最善な方法なのだろう。でもそれは妹にとって最悪な方法だ、姉としては素直に頷けはしない。
「……それではあの子は…、ルーシーは術が解けてから自分のせいだと責めてしまうわ」
縋るようにそう言った。もしかしたら…と願いながら。
「そうなるだろうな…」
彼は誤魔化すことはなかった。それが文官としてのなのか、それとも誠実さゆえなのかはその表情からは分からない。きっと両方なのだろう。
私は諦め切れずに『それが分かっているのなら、せめて全てではなく、』と訴えようとするが、途中で遮られてしまう。
「今回、彼女の魔力が取り込まれたのは本当に偶然で、それは疑う余地はない。だが術がこれほどの効果を発揮したのは魔力の持ち主の内に秘めた思いが影響しているのではないかとみている。
まあこれは断定ではなく、私の勝手な憶測だが…」
彼が言った『うちに秘めた思い』という言葉にハッとする。
私が婚約解消したすぐあとにガイアに向かって見せたあの『恋している』というルーシーの顔が頭に浮かんだ。
妹は姉である私の婚約者をずっと前から秘かに愛していたのだ、私が気づかなかっただけ。
それこそがあの子の『秘めたる想い』なのだと分かってしまう。
妹の恋心に罪はない。心の中にだけ抱えているものはその人だけのものだから。
ではそれに気づかずにいることも罪ではないはず。
罪を犯していない妹と私、違いはない。
……それなのに、この違いはどうしてだろう。
あの子は幸せそうに笑っていて、私はあれから一度も笑っていない。
179
あなたにおすすめの小説
行ってらっしゃい旦那様、たくさんの幸せをもらった私は今度はあなたの幸せを願います
木蓮
恋愛
サティアは夫ルースと家族として穏やかに愛を育んでいたが彼は事故にあい行方不明になる。半年後帰って来たルースはすべての記憶を失っていた。
サティアは新しい記憶を得て変わったルースに愛する家族がいることを知り、愛しい夫との大切な思い出を抱えて彼を送り出す。
記憶を失くしたことで生きる道が変わった夫婦の別れと旅立ちのお話。
嘘の誓いは、あなたの隣で
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢ミッシェルは、公爵カルバンと穏やかに愛を育んでいた。
けれど聖女アリアの来訪をきっかけに、彼の心が揺らぎ始める。
噂、沈黙、そして冷たい背中。
そんな折、父の命で見合いをさせられた皇太子ルシアンは、
一目で彼女に惹かれ、静かに手を差し伸べる。
――愛を信じたのは、誰だったのか。
カルバンが本当の想いに気づいた時には、
もうミッシェルは別の光のもとにいた。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
【完結】他の人が好きな人を好きになる姉に愛する夫を奪われてしまいました。
山葵
恋愛
私の愛する旦那様。私は貴方と結婚して幸せでした。
姉は「協力するよ!」と言いながら友達や私の好きな人に近づき「彼、私の事を好きだって!私も話しているうちに好きになっちゃったかも♡」と言うのです。
そんな姉が離縁され実家に戻ってきました。
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
(完結)婚約者の勇者に忘れられた王女様――行方不明になった勇者は妻と子供を伴い戻って来た
青空一夏
恋愛
私はジョージア王国の王女でレイラ・ジョージア。護衛騎士のアルフィーは私の憧れの男性だった。彼はローガンナ男爵家の三男で到底私とは結婚できる身分ではない。
それでも私は彼にお嫁さんにしてほしいと告白し勇者になってくれるようにお願いした。勇者は望めば王女とも婚姻できるからだ。
彼は私の為に勇者になり私と婚約。その後、魔物討伐に向かった。
ところが彼は行方不明となりおよそ2年後やっと戻って来た。しかし、彼の横には子供を抱いた見知らぬ女性が立っており・・・・・・
ハッピーエンドではない悲恋になるかもしれません。もやもやエンドの追記あり。ちょっとしたざまぁになっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる