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24.真相⑤

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彼の口から告げられた言葉に『分かりました、術を解くためなら』とは言えなかった。
握りしめた私の手は震えていた。俯きながらその手だけを見つめる。

「そ、そんな…。だってあの子は関係ないのに、魔術なんて掛けていないのに…。悪いのは王家や神官達だわ!あの子じゃないっ。知らせるなんて駄目よ…だってルーシーはどうなるのっ?あの子は優しくて繊細なのよ…」

目の前にはルカ様がいるというのに、叫ばずにはいられなかった。
だってこんなのあんまりだ。被害者ばかりが更に追い込まれるなんて。
私達が何をしたっていうのだろう。
 
 王家によって踏みつけられただけ。
 それも都合は良かったからと言う理由で。
 なんでこんな目にあうの…。
 
 なにもかもなかったことにしたい。
 もとに戻りたい…。

 でもそのために私はルーシーを傷つけていいの…。


もうどうしていいか分からない。 


彼は私が落ち着くまで『分かっている、君達は悪くない』と何度も言葉を掛け続けてくれた。
私が少し落ち着いたのを見計らって彼は話を続ける。

「ルーシー嬢が無意識だからこそ魔力が術に強固に絡んでいるような状態だ。この最悪な状態で魔術を解くのは危険がある。解く前にまずはその魔力にヒビをいれる必要があるんだ。ヒビを入れるのは簡単だ、彼女に今回のことを話して感情を揺さぶればいい。彼女の性格を考えれば、信じなくても動揺するはずだ。
だからシシリア、魔術を解く為に君から妹に真実を伝えて欲しい」

彼は真剣そのものだった。声音は厳しいものではないけれども『否とは言わせない』そんな雰囲気を纏っている。

ルカディオ・アルガイドは今、優秀な文官の目をしている。
選択肢は一つしかないのだと悟った。

「……何を話せばいいのですか」

呟くようにそう訊ねた。
なるべく妹を傷つけないように話したい。

「嘘偽りなく全てを伝えて欲しい」

妥協するところはないようだ。
それが最善な方法なのだろう。でもそれは妹にとって最悪な方法だ、姉としては素直に頷けはしない。

「……それではあの子は…、ルーシーは術が解けてから自分のせいだと責めてしまうわ」

縋るようにそう言った。もしかしたら…と願いながら。

「そうなるだろうな…」

彼は誤魔化すことはなかった。それが文官としてのなのか、それとも誠実さゆえなのかはその表情からは分からない。きっと両方なのだろう。


私は諦め切れずに『それが分かっているのなら、せめて全てではなく、』と訴えようとするが、途中で遮られてしまう。

「今回、彼女の魔力が取り込まれたのは本当に偶然で、それは疑う余地はない。だが術がこれほどの効果を発揮したのは魔力の持ち主のが影響しているのではないかとみている。
まあこれは断定ではなく、私の勝手なだが…」

彼が言った『うちに秘めた思い』という言葉にハッとする。

私が婚約解消したすぐあとにガイアに向かって見せたあの『恋している』というルーシーの顔が頭に浮かんだ。
妹は姉である私の婚約者をずっと前から秘かに愛していたのだ、私が気づかなかっただけ。

それこそがあの子の『秘めたる想い』なのだと分かってしまう。

 
妹の恋心に罪はない。心の中にだけ抱えているものはその人だけのものだから。
ではそれに気づかずにいることも罪ではないはず。

罪を犯していない妹と私、違いはない。

……それなのに、この違いはどうしてだろう。
あの子は幸せそうに笑っていて、私はあれから一度も笑っていない。
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