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41.ルカディオ・アルガイド①

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シシリアとの話し合いが終わり、彼女はゲート伯爵家へと戻っていく。

私は窓から見送り、その姿が視界から消えると同時に動き出した。

屋敷にいる全員が集まれるほど広い部屋へと足を運ぶと、すでに今回のことに関わっている者達はみな私のことを待っていた。
彼らはこの国に来る前から私についている者達。
みな信頼でき有能な者ばかりだ。

時間が惜しいとばかりに余計なことは言わずに指示を出す。

「予定が変更になった。第一案は中止とし第三案を行うこととする。シシリア・ゲートは翌日の夕方にはこの国から出す。時間はあまりない、みなすぐに動いてくれ」

複数の案を同時進行していたから、結果的にどの案になろうと彼らはすぐに動けるはずだ。

「ほぼ第一案に決まっていましたのに、変更でしょうか?マイナスの上の者達も第一案を押していたはずですが…。それにアルガイド様なら相手が誰であろうと第一案に持っていくことも出来たのではないでしょうか…」

皆が動き出す前にそう聞いてきたのはジェイク・ボーン。私の幼馴染で今は右腕のような存在だ。

だから他の者達よりも距離が近く、礼儀は弁えているが思ったことはしっかりと聞いてくる。

「確かにそれも可能だった。だが今回は第三案にするのがいいと総合的に見て判断した。
今回の件についての最終判断は私に一任されている。上の者への説明も私がするから問題はない。
これは決定事項だ、みなは予定通りに動くように」

「「「はい、アルガイド様」」」

私の指示に声を揃えて応えると、みな自分の役割を果たす為にすぐさま部屋から出ていった。


一人残った私は母国へと送る報告書を書き始める。

事情の説明とシシリアを迎え入れる準備のために私自身も彼女より一足早くに母国へと向かうつもりだ。

だがその前に簡単な報告書だけは魔術を使って送ることになっている。

通常ならわざわざ魔術で送ったりはしないが、今回はあの事件絡みなのでマイナス側も早い報告を望んでいるので特別だった。


『解術は行わないことに決定した』とだけ記した簡潔すぎる報告書。

詳細は自分の口から伝えたほうが誤解がないだろうと判断し、あえて書かないでおいた。
きっと兄達はこの報告書に呆れるだろうが、まあどうにかなるだろう。


最後に手早く『ルカディオ』と署名をする。
母国へと送る正式な書類なので『アルガイド』という偽名はつけなかった。
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