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連載
ケリー ④
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「でもマルセル様…アゼリア様とカイザード王太子様の仲を…どうやって取り持つおつもりですか?カイザード王太子様はアゼリア様に思いを寄せられていることを知らないのですよ?」
私の質問にマルセル様は笑みを浮かべた。
「俺に考えがあるんだ。こういうのはどうだろうか…?」
マルセル様のアイデアに私とヨハン先生は顔を見合わせた―。
****
午後5時―
「それでは失礼します」
診療所の扉を開けたマルセル様が振り返ると言った。
「本当にアゼリアに会わなくて良かったのですか?」
ヨハン先生が尋ねる。
「ええ、今はまだ…正直、どんな顔をしてアゼリアと会えば良いか分からなくて…」
マルセル様が寂しげな表情を見せる。やっぱり、ショックが大きいのかも知れない。アゼリア様はつい最近まで婚約者であり、そして気持ちこそ伝えていないとは言え…マルセル様はアゼリア様の事を…。
するとマルセル様が私を見ると言った。
「ケリー。そんな顔をしなくていい。俺は…大丈夫だから…」
「で、ですが…」
私の目には今のマルセル様は少しも大丈夫のように見えない。
「俺はアゼリアから婚約破棄をして貰いたいと言われたときに…もう分かっていたんだ。彼女は…俺の事は何とも思っていないのだろうなって。けど…こんな事になるのなら、もっと早くにアゼリアに自分の気持ちを告げておくべきだったかもな。そうすれば…今とは違う結果になっていたかもしれない。アゼリアは病気にはならず…そして俺と彼女は…」
しかし、マルセル様はそこで言葉を切った。
「マルセル様…」
私の言葉にマルセル様はニコリと笑みを浮かべた。
「アゼリアに宜しく伝えておいて下さい」
それだけ言い残すとマルセル様は診療所を出て行った。
パタンと扉が閉まるとヨハン先生が私に言った。
「ケリー。アゼリアの様子を見てきてくれないか?もし目が覚めていれば診察をしておきたいから」
「はい、分かりました」
アゼリア様の元へ向かう為にヨハン先生に背を向けた時…。
「ケリー」
「はい」
振り向くと、そこには神妙そうな顔つきのヨハン先生の姿があった。
「先生?どうかしましたか…?」
「君には伝えておこうと思うのだが…アゼリアの病気の進行が早くなっている気がするんだ…。今朝の出血の量…今までに無い位に多かった…。アゼリアは口に出していないかも知れないが…かなり貧血が進んでいるかも知れない…」
「えっ?!そ、そんな…っ!」
「だからこそ、アゼリアには後悔しない生き方をして貰いたいと思っている。つまり、僕が言いたいことは…アゼリアには例え短い期間だとしても…幸せを感じて生きて貰いたいって事なんだ…」
ヨハン先生は悲しげに言った―。
****
コンコン
「アゼリア様、起きてらっしゃいますか?」
すると部屋の中から返事があった。
「ええ、ついさっき起きたところよ。どうぞ」
「失礼します…」
扉を開けると、そこにはカーテンを開けてベッドの上で窓の景色を眺めているアゼリア様の姿があった。
「アゼリア様、お身体は大丈夫なのですか?」
まさか起き上がっているとは思わなかった。
「ええ…こうしてじっとしている分には平気よ。ところでマルセル様はどうしたのかしら?」
「マルセル様なら先程お帰りになりました」
私の言葉にアゼリア様は目を伏せると言った。
「そう…目が覚めた時、ご挨拶に行こうと思ってベッドから出ようとした時、頭がくらくらして、1人で階下まで降りられる自信が無かったの…でも、帰られてしまったのね。マルセル様にはカイに会わせてくれたお礼を言いたかったのに…残念だわ」
「アゼリア様…」
青白い顔のアゼリア様を見て、先程のヨハン先生の言葉が脳裏に浮かんだ。
【 アゼリアの病気の進行が早くなっている気がするんだ…。 】
そんな、アゼリア様…。
弱々しいアゼリア様を見て、目頭が熱くなってくる。
「どうしたの?ケリー。目が赤いけど…?」
アゼリア様が不思議そうに私を見る。
「あ…め、目にゴミが入ったみたいです」
ゴシゴシこするとアゼリア様が言った。
「あ、駄目よケリー。擦ったら目を傷つけてしまうわ。はい、これを使って?」
アゼリア様がハンカチを差し出してきた。
「ありがとうございます…」
私はアゼリア様からハンカチを借りると、溢れそうになる涙を拭った。
神様…どうかまだアゼリア様を連れて行かないで下さい。私から…アゼリア様を思う皆から…お願いですから奪わないで下さい…!
私はハンカチを握りしめ、心のなかで強く祈った―。
私の質問にマルセル様は笑みを浮かべた。
「俺に考えがあるんだ。こういうのはどうだろうか…?」
マルセル様のアイデアに私とヨハン先生は顔を見合わせた―。
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午後5時―
「それでは失礼します」
診療所の扉を開けたマルセル様が振り返ると言った。
「本当にアゼリアに会わなくて良かったのですか?」
ヨハン先生が尋ねる。
「ええ、今はまだ…正直、どんな顔をしてアゼリアと会えば良いか分からなくて…」
マルセル様が寂しげな表情を見せる。やっぱり、ショックが大きいのかも知れない。アゼリア様はつい最近まで婚約者であり、そして気持ちこそ伝えていないとは言え…マルセル様はアゼリア様の事を…。
するとマルセル様が私を見ると言った。
「ケリー。そんな顔をしなくていい。俺は…大丈夫だから…」
「で、ですが…」
私の目には今のマルセル様は少しも大丈夫のように見えない。
「俺はアゼリアから婚約破棄をして貰いたいと言われたときに…もう分かっていたんだ。彼女は…俺の事は何とも思っていないのだろうなって。けど…こんな事になるのなら、もっと早くにアゼリアに自分の気持ちを告げておくべきだったかもな。そうすれば…今とは違う結果になっていたかもしれない。アゼリアは病気にはならず…そして俺と彼女は…」
しかし、マルセル様はそこで言葉を切った。
「マルセル様…」
私の言葉にマルセル様はニコリと笑みを浮かべた。
「アゼリアに宜しく伝えておいて下さい」
それだけ言い残すとマルセル様は診療所を出て行った。
パタンと扉が閉まるとヨハン先生が私に言った。
「ケリー。アゼリアの様子を見てきてくれないか?もし目が覚めていれば診察をしておきたいから」
「はい、分かりました」
アゼリア様の元へ向かう為にヨハン先生に背を向けた時…。
「ケリー」
「はい」
振り向くと、そこには神妙そうな顔つきのヨハン先生の姿があった。
「先生?どうかしましたか…?」
「君には伝えておこうと思うのだが…アゼリアの病気の進行が早くなっている気がするんだ…。今朝の出血の量…今までに無い位に多かった…。アゼリアは口に出していないかも知れないが…かなり貧血が進んでいるかも知れない…」
「えっ?!そ、そんな…っ!」
「だからこそ、アゼリアには後悔しない生き方をして貰いたいと思っている。つまり、僕が言いたいことは…アゼリアには例え短い期間だとしても…幸せを感じて生きて貰いたいって事なんだ…」
ヨハン先生は悲しげに言った―。
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コンコン
「アゼリア様、起きてらっしゃいますか?」
すると部屋の中から返事があった。
「ええ、ついさっき起きたところよ。どうぞ」
「失礼します…」
扉を開けると、そこにはカーテンを開けてベッドの上で窓の景色を眺めているアゼリア様の姿があった。
「アゼリア様、お身体は大丈夫なのですか?」
まさか起き上がっているとは思わなかった。
「ええ…こうしてじっとしている分には平気よ。ところでマルセル様はどうしたのかしら?」
「マルセル様なら先程お帰りになりました」
私の言葉にアゼリア様は目を伏せると言った。
「そう…目が覚めた時、ご挨拶に行こうと思ってベッドから出ようとした時、頭がくらくらして、1人で階下まで降りられる自信が無かったの…でも、帰られてしまったのね。マルセル様にはカイに会わせてくれたお礼を言いたかったのに…残念だわ」
「アゼリア様…」
青白い顔のアゼリア様を見て、先程のヨハン先生の言葉が脳裏に浮かんだ。
【 アゼリアの病気の進行が早くなっている気がするんだ…。 】
そんな、アゼリア様…。
弱々しいアゼリア様を見て、目頭が熱くなってくる。
「どうしたの?ケリー。目が赤いけど…?」
アゼリア様が不思議そうに私を見る。
「あ…め、目にゴミが入ったみたいです」
ゴシゴシこするとアゼリア様が言った。
「あ、駄目よケリー。擦ったら目を傷つけてしまうわ。はい、これを使って?」
アゼリア様がハンカチを差し出してきた。
「ありがとうございます…」
私はアゼリア様からハンカチを借りると、溢れそうになる涙を拭った。
神様…どうかまだアゼリア様を連れて行かないで下さい。私から…アゼリア様を思う皆から…お願いですから奪わないで下さい…!
私はハンカチを握りしめ、心のなかで強く祈った―。
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