余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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第99話 マルセル様との会話

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 カイが私の元へ現れたその翌日、お父様が病弱なお母様を連れて診療所へとやってきた。お母様はお父様から私の病気の事を聞かされたらしく、私を強く抱きしめてすすり泣いた。けれど流石に余命の事までは伝えられていなかったのか、母からは早く元気になってねと言われた。

その後…お母様の体調の事もあり、結局2時間ほど親子3人で応接室で話をした後、2人は馬車に乗って帰って行った。帰り際に、3日後迎えに来るよとお父様が私に言った―。


****


 お父様とお母様が帰った後、私はケリーに支えられながら部屋へと戻ってきた。

「ふぅ…」

ベッドに横たわって、ため息を付くと私の洗濯物をしまっていたケリーが尋ねてきた。

「アゼリア様、お疲れですか?」

「ええ…そうね。ちょっと疲れたかしら?」

時計を見ると時刻は16時になるところだった。

「夕食まではまだ時間がありますから横になって休まれたらいかがですか?」

「ええ、そうね。眠くは無いけれども…このまま休んでいるわ」

「その方が良いと思います。では私は失礼しますね」

洗濯物をしまい終えたケリーは部屋を出て行った―。



****

コンコン…
コンコン…

「う…ん…」

ノックの音に目が覚めた。

「アゼリア様…眠っていらっしゃいますか…?」

いつの間に眠っていたのだろうか?部屋の外でケリーの遠慮がちな声が聞こえる。

「あ、ごめんなさい…。ケリー。入っていいわよ」

「はい、失礼致します…」

ケリーが扉を開けて部屋へ入ってきた。時計を見ると時刻は17時少し前である。

「ケリー、どうかしたの?」

「はい、実は…マルセル様がいらしているのですが…」

ケリーが言葉を濁しながら言う。

「まぁ、マルセル様が?勿論会うわ。昨日言えなかったお礼も伝えたいし…」

「そうですか…それは良かったです。では早速お呼びしますね?」

どこかケリーはホッとした様子で部屋を出ていくと、程なくしてノックの音と同時にマルセル様の声が聞こえた。

「アゼリア…今入っていいか?」

「はい、どうぞ」

するとカチャリと扉が開かれ、マルセル様が現れた。

「どうだ?身体の具合は?」

「はい、昨日よりは調子はいいです」

「そうか…それなら良かった」

マルセル様は傍らの椅子に座った。

「昨日はありがとうございました」

私が頭を下げるとマルセル様が首を傾げた。

「え…?何故お礼を?」

「はい。私の恩人…カイザード王太子様と会わせてくれた事へのお礼です。本当にありがとうございました」

「ああ…その事か…」

マルセル様は小さくため息を付くと私を見た。

「アゼリア…正直に答えて欲しい。ひょっとすると…アゼリアはカイザード王太子様の事を好きなんじゃないか?」

「え?そ、それは…」

言えない…。言えるはずが無かった。元婚約者のマルセル様に私はカイの事が好きだなんて…。思わず俯くとマルセル様が再び言った。

「俺の前だからといって遠慮する事は無い。もう俺とお前は…婚約は解消した仲なのだから…」

「マルセル様…」

マルセル様の姿を見ていると、本当の事を伝えたほうが良いのでは無いだろうかという気持ちになってきた。だから私は正直に自分の気持ちを伝えることにした。

「は、はい…私はカイザード王太子様の事が好きです…」

「そうか…。アゼリアの行方を探す為に俺の元へ現れた時…ひょっとするとカイザード王太子はアゼリアの事を好きなのではないかと思ったのだが…違うか?」

「!」

マルセル様は…カイの気持ちに気付いていたのだ…。

「は、はい。そうです…。私はカイザード王太子様に告白をされました。…例え僅かな時間だとしても、それでもいいから側にいたいと言われたのですが…お断りさせて頂きました…。貴方のことは好きでも何でも無いから無理だと…伝えました」

私が断った時…カイは真っ青な顔になって私を悲しげな目で見つめていた。その時の事を思い出すと今も胸が痛む。

「何故、断ったんだ?」

マルセル様が優しい声で尋ねてくる。

「そ、それは私の余命が残り僅かだからです。私はカイの事が好きだから…自分がこの世を去った後…悲しい思いをさせたくは無かったのです。だからお断りしたのです。カイには幸せになって貰いたかったから…」

絞り出すように言った。

「そうか…分かった。…今の話、聞こえていましたよね?カイ」

マルセル様は扉に向かって声を掛けた。

「え…?」

すると開け放たれたままの扉の陰からカイが現れた―。

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