210 / 519
第14章 4 レモネードと過去の記憶
しおりを挟む
ガチャリ
ドアが開けられ、お姉ちゃんが目の前に立っていた。
「鈴音ちゃん!雨凄いけど・・大丈夫だった?濡れていない?」
お姉ちゃんは私を見るなり、心配そうに髪に触れてきた。
「うん、大丈夫だよ。雨が降り出してきた時にはタクシーに乗っていたし、門から玄関までだってすぐじゃない。それに大きな傘も持っていたしね。」
たたんだ傘を少しだけ持ち上げてお姉ちゃんに見せた。
「そう・・なら良かったけど・・それじゃ上がって、鈴音ちゃん。」
お姉ちゃんが部屋に招き入れてくれた。
「うん、それじゃお邪魔します・・。」
濡れた傘を玄関脇にある傘立てに入れ、中へあがろうとしたところ、お姉ちゃんが言った。
「鈴音ちゃん、お邪魔しますじゃなくて、ただいまでしょう?」
「あ・・・。」
「ここは・・・私と鈴音ちゃんの家なんだから・・。」
お姉ちゃんは私をじっと見つめている。
「う、うん。そうだったね・・。ただいま。」
言いながら玄関へあがるとお姉ちゃんは満足そうに笑みを浮かべると言った。
「お帰りさない、鈴音ちゃん。」
「鈴音ちゃん。飲み物は何がいい?アイスコーヒーと麦茶・・・それにレモネードを作ったのよ。」
リビングのソファに座った私に台所口に立っているお姉ちゃんが尋ねてきた。
「レモネード・・・。」
レモネードと言えば子供の頃を思い出す。夏になればお母さんが必ず私たちの為に冷たいレモネードを作ってくれたことを・・・。
「それじゃ、レモネードにしようかな?」
「レモネードね?待っててね。すぐ持ってくるから。」
お姉ちゃんは笑みを浮かべるとすぐに台所の奥へと引っ込み、何やらガチャガチャと音が聞こえ・・・そして姿を現した。お姉ちゃんはレモネードが注がれたグラス乗っているお盆を手にしていた。
「お待たせ~鈴音ちゃん。」
お姉ちゃんはにこにこしながら丸い木目のコースターの上に、氷が浮きストローがささったレモネード入りのグラスを目の前に置いてくれた。グラスの中にはシュワシュワと炭酸がはじける音がかすかに聞こえている。
「子供の頃・・・お母さんは水で割ってくれていたけど炭酸水で割ってみたの。昨日レモンを買ってきて作ったのよ。どう?飲んでみて?」
「うん、それじゃいただきます。」
ストローでグラスの中を混ぜるとカランと氷のぶつかる音がする。グラスの中には薄くスライスしたレモンの輪切りが浮いている。私は早速ストローで一口飲んでみた。
炭酸の清涼感の中にはちみつの甘みとレモンの酸味がとてもよく合っていた。
「・・どう?」
お姉ちゃんが心配そうに聞いてくる。
「おいしい・・・。うん、すごくおいしいよ!このレモネード。」
「そう?鈴音ちゃんにそこまで喜んでもらえると・・すごく嬉しいな。今度服部さんが来たら出してみるわ。」
お姉ちゃんの口ぶりは・・・何だかまるで服部さんが特別の男性のように聞こえてしまった。亮平とは・・一体どうなっているのだろう?
「お姉ちゃん・・服部さんは・・よく来るの?」
「そうね・・・週に3回は来てくれるわ。」
「3回・・・。」
私にはケースワーカーという人が週に何回患者さんを尋ねるかは分からなけれども・・週に3回は多い気がした。
「何?どうかしたの?」
レモネードをストローで飲んでいたお姉ちゃんが顔を上げて尋ねてきた。
「ううん、何でも無いよ。」
そこで私はさりげなく亮平の事を口にしてみた。お姉ちゃんは今亮平の事をどう思っているのだろう・・?
「お姉ちゃん。亮平もレモネード好きなんだよ。亮平にもあげてみたら?」
「あら?そうだった?う~ん・・あまりよく覚えてはいないけど・・・そうね?鈴音ちゃんは今夜家で夜ご飯食べていくんだから・・亮平君も呼んでみようか?」
亮平を呼ぶ・・・。
あんなことがあった後だから一瞬迷った。けれども・・・2人きりになるよりもいいかもしれない。
だから私は頷いた―。
ドアが開けられ、お姉ちゃんが目の前に立っていた。
「鈴音ちゃん!雨凄いけど・・大丈夫だった?濡れていない?」
お姉ちゃんは私を見るなり、心配そうに髪に触れてきた。
「うん、大丈夫だよ。雨が降り出してきた時にはタクシーに乗っていたし、門から玄関までだってすぐじゃない。それに大きな傘も持っていたしね。」
たたんだ傘を少しだけ持ち上げてお姉ちゃんに見せた。
「そう・・なら良かったけど・・それじゃ上がって、鈴音ちゃん。」
お姉ちゃんが部屋に招き入れてくれた。
「うん、それじゃお邪魔します・・。」
濡れた傘を玄関脇にある傘立てに入れ、中へあがろうとしたところ、お姉ちゃんが言った。
「鈴音ちゃん、お邪魔しますじゃなくて、ただいまでしょう?」
「あ・・・。」
「ここは・・・私と鈴音ちゃんの家なんだから・・。」
お姉ちゃんは私をじっと見つめている。
「う、うん。そうだったね・・。ただいま。」
言いながら玄関へあがるとお姉ちゃんは満足そうに笑みを浮かべると言った。
「お帰りさない、鈴音ちゃん。」
「鈴音ちゃん。飲み物は何がいい?アイスコーヒーと麦茶・・・それにレモネードを作ったのよ。」
リビングのソファに座った私に台所口に立っているお姉ちゃんが尋ねてきた。
「レモネード・・・。」
レモネードと言えば子供の頃を思い出す。夏になればお母さんが必ず私たちの為に冷たいレモネードを作ってくれたことを・・・。
「それじゃ、レモネードにしようかな?」
「レモネードね?待っててね。すぐ持ってくるから。」
お姉ちゃんは笑みを浮かべるとすぐに台所の奥へと引っ込み、何やらガチャガチャと音が聞こえ・・・そして姿を現した。お姉ちゃんはレモネードが注がれたグラス乗っているお盆を手にしていた。
「お待たせ~鈴音ちゃん。」
お姉ちゃんはにこにこしながら丸い木目のコースターの上に、氷が浮きストローがささったレモネード入りのグラスを目の前に置いてくれた。グラスの中にはシュワシュワと炭酸がはじける音がかすかに聞こえている。
「子供の頃・・・お母さんは水で割ってくれていたけど炭酸水で割ってみたの。昨日レモンを買ってきて作ったのよ。どう?飲んでみて?」
「うん、それじゃいただきます。」
ストローでグラスの中を混ぜるとカランと氷のぶつかる音がする。グラスの中には薄くスライスしたレモンの輪切りが浮いている。私は早速ストローで一口飲んでみた。
炭酸の清涼感の中にはちみつの甘みとレモンの酸味がとてもよく合っていた。
「・・どう?」
お姉ちゃんが心配そうに聞いてくる。
「おいしい・・・。うん、すごくおいしいよ!このレモネード。」
「そう?鈴音ちゃんにそこまで喜んでもらえると・・すごく嬉しいな。今度服部さんが来たら出してみるわ。」
お姉ちゃんの口ぶりは・・・何だかまるで服部さんが特別の男性のように聞こえてしまった。亮平とは・・一体どうなっているのだろう?
「お姉ちゃん・・服部さんは・・よく来るの?」
「そうね・・・週に3回は来てくれるわ。」
「3回・・・。」
私にはケースワーカーという人が週に何回患者さんを尋ねるかは分からなけれども・・週に3回は多い気がした。
「何?どうかしたの?」
レモネードをストローで飲んでいたお姉ちゃんが顔を上げて尋ねてきた。
「ううん、何でも無いよ。」
そこで私はさりげなく亮平の事を口にしてみた。お姉ちゃんは今亮平の事をどう思っているのだろう・・?
「お姉ちゃん。亮平もレモネード好きなんだよ。亮平にもあげてみたら?」
「あら?そうだった?う~ん・・あまりよく覚えてはいないけど・・・そうね?鈴音ちゃんは今夜家で夜ご飯食べていくんだから・・亮平君も呼んでみようか?」
亮平を呼ぶ・・・。
あんなことがあった後だから一瞬迷った。けれども・・・2人きりになるよりもいいかもしれない。
だから私は頷いた―。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
755
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる