その公爵令嬢は、殿下の秘密を宿す

 義母たちに遺産を奪われ国外追放されたセナ。
 とある王国の高級リゾート地で、ホテルの清掃係として働いていた。

 ある日、幼馴染だった帝国貴族のミアがホテルに宿泊し、いきなり病に倒れ伏してしまう。
 友人として仕事の合間にミアの部屋へと、たびたび顔を出していたセナは、親友から驚きの贈り物を受け取る。

「自分は参加できないから貴方に貰って欲しいの」、と渡されたそれは、このホテルで開催される仮面舞踏会のチケットと仮面、そして豪奢なドレスだった。
 スタイルも容姿もよく似ているセナは、確かにミアの代理を務められそうだった。

 かつて馴染みのある社交界に、今夜だけでも戻ることができる。
 セナは内心で嬉しさがこみ上げてくるのを、抑えきれないでいた。

 噂では王国の王太子殿下の妃候補を選ぶ場所でもあるらしい。
 新聞やホテルのロビーに飾られている人物画で見知っただけの彼に声をかけられたとき、セナの心は思わず、踊った。

 ダンスを踊り、一夜だけの夢を見て、セナは彼に身も心も捧げてしまう。
 そして一夜が明け、普段の自分にもどる時間がやってきた。

 セナは正体を知られる前に、彼の元から姿を消す。
 殿下の秘密を宿しているとも気づかずに。

〇前半をヒロインと殿下との出会いとしているため、ヒロインが不遇になった理由などは中盤になっております。
 継母と義姉たちへのざまあ回は、後半のラスト近くなりますが、ヒロインにはハッピーエンドを用意しておりますので、お付き合いいただけると幸いです。



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