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川口直人 67
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岡本と会ってから数日後―。
出勤前のコーヒーを飲んでいる時、いつものネットニュースを開いた時の事だった。
「な、何だ?これは…」
ネットのニュースに俺と常盤恵理の婚約の事が報じられ、堂々と顔が映されているのを偶然発見してしまった。その映像からこの間2人でイタリアンレストランへ行った時の写真であることが分った。
「嵌められた…」
ドサリと椅子に座って頭を抱えてしまった。
すぐに常盤恵理の仕業だと言う事が分った。2人でイタリアンレストランで向かい合わせで食事をしている。その写真がはっきり映し出されているのだ。恐らくあらかじめ記者に情報を流していたのだろう。あえて写真を撮らせて報道させ…俺が逃げられないように仕組んだのだ。
「何て嫌な女なんだ…!」
ますます憎しみが募って来る。あの女はこんな事をすればするほど、相手から嫌われる事が分らないのだろうか?それとも自分さえ良ければ、相手の気持ちなどどうだって良いと思っているのか?
「だが、このまま思い通りになどなってたまるか…!」
俺はスーツを着ると、マンションを出た。
新しい融資先を探す為に―。
****
「直人…大丈夫か?」
父と2人で食事の為に入ったカフェで不意に尋ねられた。
「え?あ…そ、それは…」
言い淀みながらコーヒーを飲んでいると父が声を潜めた。
「気のせいかも知れないが…お前と一緒にいると何故か視線を感じるんだ。どう思う?」
「別に気のせいなんかじゃないさ。実際見張られているんだから」
コーヒーカップを置くと、ホットサンドに手を伸ばした。
「何?本当か?それは。一体誰が…」
「そんな事は決まっている。常盤恵理の仕業さ。あの女は興信所を雇って常に俺の行動を監視しているんだよ」
「何だって?どうしてそんな事を…」
「俺が鈴音と連絡を取り合っていないか監視しているんだろう。全く金持ちのやることは理解出来ない」
「鈴音って…お前が以前付き合っていた女性か?結婚まで考えていた…」
「そうだよ…」
「すまない。お前にも…。鈴音さんという女性にも…」
突然父が頭を下げて来た。
「やめてくれよ、そんな事するのは」
「だが…」
父は顔を上げて俺を見た。
「俺はまだ諦めちゃいない。何とか、融資してくれる会社を見つけてみせる。それでも駄目なら、常盤社長と話を付ける」
「話しを付けるって…そんな事出来るのか?」
「出来るかどうかは分らないけど…父親なら娘を大切にしてくれる男の元へ嫁がせてやりたいのが普通だろう?」
「うむ…まぁ、普通はな」
「最悪…このままでは例え結婚しても俺はあの女に幸せを与えるなんて到底無理だ。そこを強調してみようかと考えているんだ」
「直人…お前…何をするつもりだ…?」
父は青ざめた顔で俺を見た。
「兎に角、一度常盤社長と会って話をしないと何とも言えないよ。とにかく今は新しく業務提携や融資をしてくれそうな会社を探さないと」
「あ、ああ。そうだな」
そして俺と父は黙々と食事をとった―。
出勤前のコーヒーを飲んでいる時、いつものネットニュースを開いた時の事だった。
「な、何だ?これは…」
ネットのニュースに俺と常盤恵理の婚約の事が報じられ、堂々と顔が映されているのを偶然発見してしまった。その映像からこの間2人でイタリアンレストランへ行った時の写真であることが分った。
「嵌められた…」
ドサリと椅子に座って頭を抱えてしまった。
すぐに常盤恵理の仕業だと言う事が分った。2人でイタリアンレストランで向かい合わせで食事をしている。その写真がはっきり映し出されているのだ。恐らくあらかじめ記者に情報を流していたのだろう。あえて写真を撮らせて報道させ…俺が逃げられないように仕組んだのだ。
「何て嫌な女なんだ…!」
ますます憎しみが募って来る。あの女はこんな事をすればするほど、相手から嫌われる事が分らないのだろうか?それとも自分さえ良ければ、相手の気持ちなどどうだって良いと思っているのか?
「だが、このまま思い通りになどなってたまるか…!」
俺はスーツを着ると、マンションを出た。
新しい融資先を探す為に―。
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「直人…大丈夫か?」
父と2人で食事の為に入ったカフェで不意に尋ねられた。
「え?あ…そ、それは…」
言い淀みながらコーヒーを飲んでいると父が声を潜めた。
「気のせいかも知れないが…お前と一緒にいると何故か視線を感じるんだ。どう思う?」
「別に気のせいなんかじゃないさ。実際見張られているんだから」
コーヒーカップを置くと、ホットサンドに手を伸ばした。
「何?本当か?それは。一体誰が…」
「そんな事は決まっている。常盤恵理の仕業さ。あの女は興信所を雇って常に俺の行動を監視しているんだよ」
「何だって?どうしてそんな事を…」
「俺が鈴音と連絡を取り合っていないか監視しているんだろう。全く金持ちのやることは理解出来ない」
「鈴音って…お前が以前付き合っていた女性か?結婚まで考えていた…」
「そうだよ…」
「すまない。お前にも…。鈴音さんという女性にも…」
突然父が頭を下げて来た。
「やめてくれよ、そんな事するのは」
「だが…」
父は顔を上げて俺を見た。
「俺はまだ諦めちゃいない。何とか、融資してくれる会社を見つけてみせる。それでも駄目なら、常盤社長と話を付ける」
「話しを付けるって…そんな事出来るのか?」
「出来るかどうかは分らないけど…父親なら娘を大切にしてくれる男の元へ嫁がせてやりたいのが普通だろう?」
「うむ…まぁ、普通はな」
「最悪…このままでは例え結婚しても俺はあの女に幸せを与えるなんて到底無理だ。そこを強調してみようかと考えているんだ」
「直人…お前…何をするつもりだ…?」
父は青ざめた顔で俺を見た。
「兎に角、一度常盤社長と会って話をしないと何とも言えないよ。とにかく今は新しく業務提携や融資をしてくれそうな会社を探さないと」
「あ、ああ。そうだな」
そして俺と父は黙々と食事をとった―。
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