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第1章 35 児童相談所
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「着いた、ここだよ」
拓也さんは駐車場に車を止めると、エンジンとヘッドライトを消した。
目の前には3階建てのコンクリート造りの建物が建っており、窓から明るい電気の光が見える。
玄関の入り口には明かりがついており、『児童相談所』の看板が掛けられてある。
「ここに…たっくんがいるの?」
「そうだよ。取り敢えず降りよう」
拓也さんがシートベルトを外したのを見て、私も慌ててシートベルトを外し、車を降りた。
ここは駅の中心部から少し離れた場所にある閑静な場所だった。外灯が所々に設置され、道路を照らしている。児童相談所の正面には道路を挟んで高いフェンスに囲まれた広々とした校庭が外灯で照らされている。校庭の奥には校舎が見えた。
「もしかして向かい側にある学校は…小学校…かな?滑り台が見えるから」
「ああ。ここで暮らしている小学生の子供達は全員あの小学校に通っているんだ」
「え…?」
そんな…たっくん…。
「どうしたんだ?」
拓也さんが不思議そうな顔をして私を見た。
「ううん…ただ…」
「ただ?」
「たっくん…転校してきたばかりで、友達も出来たばかりなのに…もう違う学校に通わなくちゃいけないの?あまりにも可哀想過ぎるよ…」
新しく出来た友達の事、楽しそうに話してくれたのに…。たっくんのことを思うと胸が締め付けられる。
「彩花…。取り敢えず、まずは卓也に会いに行かないか?」
「うん…」
そして私は拓也さんと一緒に建物の中へと入っていった。
****
私と拓也さんは『面会室』と書かれた部屋に通された。
「待っていてくださいね。今、丁度皆で夜ご飯を食べ終えた所で後片付けをしているところなので」
私達を案内してくれたのは40代位の女性だった。
「すみません。変な時間に面会に来てしまって…」
私は頭を下げた。
「いいんですよ。でもわざわざ御親戚の方が面会にいらして下さるなんて…。正直な話、ここに預けられる子供達…親御さんですら、中々面会に来てくれませんので…」
「そうですか…」
拓也さん、私達を『親戚』と言ったんだ…。
「…」
拓也さんは無言で話を聞いている。…一体どうしたというのだろう?
「それではもう少しだけお待ち下さいね」
「「はい」」
私と拓也さんは声を揃えて返事をした。そして女性は会釈をすると部屋を出て行った。
バタン…
扉が閉じると、隣に座る拓也さんに声を掛けた。
「ねぇ、拓也さん…さっきから何だか様子がおかしいけど…どうかしたの?」
「え?何が?」
「何だか、さっきからキョロキョロ辺りを見渡して…何かあったの?」
「いや、何も無いさ」
その時―
『ここにお姉ちゃんとお兄ちゃんがいるんだね?』
あどけないたっくんの声が扉の外で聞こえた―。
拓也さんは駐車場に車を止めると、エンジンとヘッドライトを消した。
目の前には3階建てのコンクリート造りの建物が建っており、窓から明るい電気の光が見える。
玄関の入り口には明かりがついており、『児童相談所』の看板が掛けられてある。
「ここに…たっくんがいるの?」
「そうだよ。取り敢えず降りよう」
拓也さんがシートベルトを外したのを見て、私も慌ててシートベルトを外し、車を降りた。
ここは駅の中心部から少し離れた場所にある閑静な場所だった。外灯が所々に設置され、道路を照らしている。児童相談所の正面には道路を挟んで高いフェンスに囲まれた広々とした校庭が外灯で照らされている。校庭の奥には校舎が見えた。
「もしかして向かい側にある学校は…小学校…かな?滑り台が見えるから」
「ああ。ここで暮らしている小学生の子供達は全員あの小学校に通っているんだ」
「え…?」
そんな…たっくん…。
「どうしたんだ?」
拓也さんが不思議そうな顔をして私を見た。
「ううん…ただ…」
「ただ?」
「たっくん…転校してきたばかりで、友達も出来たばかりなのに…もう違う学校に通わなくちゃいけないの?あまりにも可哀想過ぎるよ…」
新しく出来た友達の事、楽しそうに話してくれたのに…。たっくんのことを思うと胸が締め付けられる。
「彩花…。取り敢えず、まずは卓也に会いに行かないか?」
「うん…」
そして私は拓也さんと一緒に建物の中へと入っていった。
****
私と拓也さんは『面会室』と書かれた部屋に通された。
「待っていてくださいね。今、丁度皆で夜ご飯を食べ終えた所で後片付けをしているところなので」
私達を案内してくれたのは40代位の女性だった。
「すみません。変な時間に面会に来てしまって…」
私は頭を下げた。
「いいんですよ。でもわざわざ御親戚の方が面会にいらして下さるなんて…。正直な話、ここに預けられる子供達…親御さんですら、中々面会に来てくれませんので…」
「そうですか…」
拓也さん、私達を『親戚』と言ったんだ…。
「…」
拓也さんは無言で話を聞いている。…一体どうしたというのだろう?
「それではもう少しだけお待ち下さいね」
「「はい」」
私と拓也さんは声を揃えて返事をした。そして女性は会釈をすると部屋を出て行った。
バタン…
扉が閉じると、隣に座る拓也さんに声を掛けた。
「ねぇ、拓也さん…さっきから何だか様子がおかしいけど…どうかしたの?」
「え?何が?」
「何だか、さっきからキョロキョロ辺りを見渡して…何かあったの?」
「いや、何も無いさ」
その時―
『ここにお姉ちゃんとお兄ちゃんがいるんだね?』
あどけないたっくんの声が扉の外で聞こえた―。
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