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第2章 10 初めてのタイムトラベル
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磁場発生装置が完成した週の土曜午前10時―
俺と宮田教授は『時巡神社』に来ていた。
「いいか、上野。これからお前は15年前の6月7日…事件発生の2日前に戻る…でいいんだな?」
「ええ、そうです。2日もあれば事件を食い止めることが出来ます。あいつの居場所は俺の記憶が正しければ拘置所にいるはずですからね。そこで待ち伏せして、あいつが事件を起こせないようにすればいいだけですから」
「う、うむ…なら早速戻る時間を設定するのだ」
宮田教授は言いよどみながら、磁場発生装置を操作する様に促してきた。
「はい、分かりました」
早速装置に戻りたい時間をセットする。
「…準備できました」
背中に背負ったリュックを背負いながら俺は返事をした。
「ああ、それじゃ…上野。行って来い、見当を祈る」
「はい」
そして俺はスタートボタンを押した途端…辺りを濃い霧が覆い始める。そして途端に足元が大きく揺れ動くような目眩を感じる。
「く…」
霧の中、宮田教授の声が聞こえてきた。
「いいか…上野…何があっても…決して…」
言葉はもうそれ以上聞こえなかった―。
****
「う…」
激しい目眩後…徐々に濃い霧が晴れていく。
「あ…」
やがて霧が完全に晴れ、俺は1人神社に立っていた。…当然宮田教授の姿はない。
「…成功したのか…?本当にここは15年前の6月7日か…?」
林の中を抜け、鳥居をくぐり抜けて俺は路上に出た。
「…景色が違う…」
そこは俺が知る世界ではなかった。目の前の古いアパートは今は新築マンションになっている。
「…時間を確認しに行こう」
宮田教授に言われていたこと…。まずはスマホを契約しに行かなければ…。
俺は駅前に足を向けた―。
****
2時間後の13時―
「どうもありがとうございました」
スマホの手続きを終えた俺は店員に見送られながら店を出た。
「信じられないな…」
俺から見れば旧式のスマホを握りしめながらポツリと呟いた。
やはりここは10年前の6月7日の金曜日だった。
「という事は…あのアパートがあるってことだよな…」
短かったけど、幸せな日々を彩花と過ごしたあのアパート。
この時の俺は既に養護施設に預けられていたけれども、彩花は土日は必ず俺に会いに来てくれていた。
彩花…。
まだ彼女は仕事に行っている時間なのでアパートには帰っていない。でもその前に…どうしてもあのアパートをこの目で確認しておきたかった。
****
「あった…あのアパートが…」
今では駐車場になっているのに、この世界ではアパートとしてちゃんと存在している。
「…っ」
途端に彩花と過ごしたあの頃がまるで走馬灯の様に思い出され、胸が熱くなった。暫く感無量でそこに佇んでいたが…やるべきことが俺にはある。
そう、それはあいつの凶行を止めることだ。
俺はあいつが交流されている拘置所へ向かった―。
****
「え…?出所…した…?」
「はい、その人物なら今朝早くに出所しましたけど?」
「そ、そんな…嘘ですよね?!では何処へ行ったのか教えて下さいっ!」
受付にいた刑務官に気づけば俺は大きな声で詰め寄っていた。
「そんなこと教えられるはずないでしょうっ?!もうお帰り下さいっ!」
そして、俺はなすすべもなく追い返されてしまった。
「嘘だろう…?そんな…」
俺は焦りながら爪を噛んでいた。
そんなバカな。
俺の記憶が正しければ、あいつは6月8日に出所したはずだ。
何故だ?何故予定が狂った?
ひょっとして…俺がここにやってきたことで過去が代わってしまったのだろうか…?
だったら…。
拳を握りしめた。
俺の取るべき行動は後1つしかない。
こうなったら彩花に直接会うしか無い。
けれど、俺が彩花に会うことで…運命が大きく狂っていくことなるとは、この時の俺は思いもしていなかった―。
俺と宮田教授は『時巡神社』に来ていた。
「いいか、上野。これからお前は15年前の6月7日…事件発生の2日前に戻る…でいいんだな?」
「ええ、そうです。2日もあれば事件を食い止めることが出来ます。あいつの居場所は俺の記憶が正しければ拘置所にいるはずですからね。そこで待ち伏せして、あいつが事件を起こせないようにすればいいだけですから」
「う、うむ…なら早速戻る時間を設定するのだ」
宮田教授は言いよどみながら、磁場発生装置を操作する様に促してきた。
「はい、分かりました」
早速装置に戻りたい時間をセットする。
「…準備できました」
背中に背負ったリュックを背負いながら俺は返事をした。
「ああ、それじゃ…上野。行って来い、見当を祈る」
「はい」
そして俺はスタートボタンを押した途端…辺りを濃い霧が覆い始める。そして途端に足元が大きく揺れ動くような目眩を感じる。
「く…」
霧の中、宮田教授の声が聞こえてきた。
「いいか…上野…何があっても…決して…」
言葉はもうそれ以上聞こえなかった―。
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「う…」
激しい目眩後…徐々に濃い霧が晴れていく。
「あ…」
やがて霧が完全に晴れ、俺は1人神社に立っていた。…当然宮田教授の姿はない。
「…成功したのか…?本当にここは15年前の6月7日か…?」
林の中を抜け、鳥居をくぐり抜けて俺は路上に出た。
「…景色が違う…」
そこは俺が知る世界ではなかった。目の前の古いアパートは今は新築マンションになっている。
「…時間を確認しに行こう」
宮田教授に言われていたこと…。まずはスマホを契約しに行かなければ…。
俺は駅前に足を向けた―。
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2時間後の13時―
「どうもありがとうございました」
スマホの手続きを終えた俺は店員に見送られながら店を出た。
「信じられないな…」
俺から見れば旧式のスマホを握りしめながらポツリと呟いた。
やはりここは10年前の6月7日の金曜日だった。
「という事は…あのアパートがあるってことだよな…」
短かったけど、幸せな日々を彩花と過ごしたあのアパート。
この時の俺は既に養護施設に預けられていたけれども、彩花は土日は必ず俺に会いに来てくれていた。
彩花…。
まだ彼女は仕事に行っている時間なのでアパートには帰っていない。でもその前に…どうしてもあのアパートをこの目で確認しておきたかった。
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「あった…あのアパートが…」
今では駐車場になっているのに、この世界ではアパートとしてちゃんと存在している。
「…っ」
途端に彩花と過ごしたあの頃がまるで走馬灯の様に思い出され、胸が熱くなった。暫く感無量でそこに佇んでいたが…やるべきことが俺にはある。
そう、それはあいつの凶行を止めることだ。
俺はあいつが交流されている拘置所へ向かった―。
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「え…?出所…した…?」
「はい、その人物なら今朝早くに出所しましたけど?」
「そ、そんな…嘘ですよね?!では何処へ行ったのか教えて下さいっ!」
受付にいた刑務官に気づけば俺は大きな声で詰め寄っていた。
「そんなこと教えられるはずないでしょうっ?!もうお帰り下さいっ!」
そして、俺はなすすべもなく追い返されてしまった。
「嘘だろう…?そんな…」
俺は焦りながら爪を噛んでいた。
そんなバカな。
俺の記憶が正しければ、あいつは6月8日に出所したはずだ。
何故だ?何故予定が狂った?
ひょっとして…俺がここにやってきたことで過去が代わってしまったのだろうか…?
だったら…。
拳を握りしめた。
俺の取るべき行動は後1つしかない。
こうなったら彩花に直接会うしか無い。
けれど、俺が彩花に会うことで…運命が大きく狂っていくことなるとは、この時の俺は思いもしていなかった―。
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