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第2章 21 驚きの事実
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「お兄さん…あのお姉さんと知り合いなの?」
15年前の俺…卓也が尋ねてきた。
「い、いや…知り合いに似ていた気がしただけなんだ。君は知らないのか?」
「うん。知らないよ。でも…綺麗なお姉さんだったね」
「…うん」
そうだ、彩花は…自分では全く自覚していなかっただろうけど美人だった。恋人がいないことが不思議なくらいに。
だが…何故か今回は嫌な予感がする。
背中を嫌な汗がつたう。
まさか、彩花…。
これは、確かめる必要がありそうだ。
俺は卓也を振り向いた。
「もうすっかり日が暮れた。家に帰った方がいいんじゃないか?」
「うん…。でも…」
卓也はうつむいている。
奴が怖くて家に帰りにくいのだ。自分の事だからよく分かっている。
「よし、1人で家に帰るのがイヤなら俺が一緒についていってあげよう」
「え?ほ、本当に?!」
卓也が目を見開いて俺を見る。
「ああ、困っている子供を見過ごすわけにはいかないからな。よし、一緒に行こう」
「うん!」
卓也はブランコから降りると、元気よく首を縦に振った―。
****
俺と卓也はアパートの前に立っていた。
「ここが君の住むアパートなのか?」
当然知ってはいたが、あえて卓也に声を掛けた。
「うん、そうだよ。あ2階の左から2番目が僕とお父さんが暮らしている部屋だよ」
卓也が部屋を指さした。
そして…一番左の部屋が本来なら彩花が暮らす部屋のはず。
「ところで、隣には誰か住んでるのかい?」
念の為に尋ねてみた。すると、衝撃の言葉が返ってきた。
「え?隣?誰も住んでいないよ」
…何だって?
驚きのあまり、思考が一瞬フリーズする。
「誰も…住んでいないのかい?途中で引っ越したとかじゃなく?」
尋ねる声が震えているのが自分でも分かった。
「うん。多分最初から空き部屋だったと思うよ」
「そう…なのか…?」
ドクン
ドクン
心臓の鼓動が大きくなる。
最初から誰も住んでいなかった…?
そんな…嘘だろう?
それじゃ、つまり…この世界の俺と彩花は出会っていないということなのか?
ドクン…
ドクン…
今にも足元が崩れ落ちそうな気がしてきた。
「お兄さん、どうしたの?」
卓也が心配そうに俺を見上げる。
「あ…い、いや。何でも無い。それじゃ、部屋に行こうか?」
混乱する頭を抱えながら、無理やり顔に笑顔を浮かべて卓也を見た。
「うん」
「よし、行くか!」
そして俺は卓也を連れて奴の待つアパートへ向かった―。
****
ピンポーン
部屋の前に辿り着くと、すぐに呼び鈴を押した。
少しの間の後…。
ガチャッ
扉が乱暴に開けられ、奴が物凄い剣幕で現れた。
「卓也!一体今まで何処へ…!ん…?誰だ?お前?」
酒臭い匂いをまきちらせながら怪訝そうに俺を見る。
こいつ…配達員として現れた俺をどうやら覚えていないようだ。
「ええ、実は道に迷っているこの子を偶然見かけ、住所を聞いて連れてきたんですよ」
俺の後ろで身を縮こませている卓也をチラリと見ながら奴に説明した。
「全く…道に迷ったのか?道理で帰りが遅いと思った…。おい、卓也。早く中へ入れ」
親父は卓也に手招きした。
「う、うん…」
俯きながら部屋入ると卓也はこちらを振り返った。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「ああ、それじゃあな」
2人で手を振ると親父はつまらなそうに鼻を鳴らした。
「フン!」
バタンッ!!
そして目の前で扉は乱暴に閉められた―。
15年前の俺…卓也が尋ねてきた。
「い、いや…知り合いに似ていた気がしただけなんだ。君は知らないのか?」
「うん。知らないよ。でも…綺麗なお姉さんだったね」
「…うん」
そうだ、彩花は…自分では全く自覚していなかっただろうけど美人だった。恋人がいないことが不思議なくらいに。
だが…何故か今回は嫌な予感がする。
背中を嫌な汗がつたう。
まさか、彩花…。
これは、確かめる必要がありそうだ。
俺は卓也を振り向いた。
「もうすっかり日が暮れた。家に帰った方がいいんじゃないか?」
「うん…。でも…」
卓也はうつむいている。
奴が怖くて家に帰りにくいのだ。自分の事だからよく分かっている。
「よし、1人で家に帰るのがイヤなら俺が一緒についていってあげよう」
「え?ほ、本当に?!」
卓也が目を見開いて俺を見る。
「ああ、困っている子供を見過ごすわけにはいかないからな。よし、一緒に行こう」
「うん!」
卓也はブランコから降りると、元気よく首を縦に振った―。
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俺と卓也はアパートの前に立っていた。
「ここが君の住むアパートなのか?」
当然知ってはいたが、あえて卓也に声を掛けた。
「うん、そうだよ。あ2階の左から2番目が僕とお父さんが暮らしている部屋だよ」
卓也が部屋を指さした。
そして…一番左の部屋が本来なら彩花が暮らす部屋のはず。
「ところで、隣には誰か住んでるのかい?」
念の為に尋ねてみた。すると、衝撃の言葉が返ってきた。
「え?隣?誰も住んでいないよ」
…何だって?
驚きのあまり、思考が一瞬フリーズする。
「誰も…住んでいないのかい?途中で引っ越したとかじゃなく?」
尋ねる声が震えているのが自分でも分かった。
「うん。多分最初から空き部屋だったと思うよ」
「そう…なのか…?」
ドクン
ドクン
心臓の鼓動が大きくなる。
最初から誰も住んでいなかった…?
そんな…嘘だろう?
それじゃ、つまり…この世界の俺と彩花は出会っていないということなのか?
ドクン…
ドクン…
今にも足元が崩れ落ちそうな気がしてきた。
「お兄さん、どうしたの?」
卓也が心配そうに俺を見上げる。
「あ…い、いや。何でも無い。それじゃ、部屋に行こうか?」
混乱する頭を抱えながら、無理やり顔に笑顔を浮かべて卓也を見た。
「うん」
「よし、行くか!」
そして俺は卓也を連れて奴の待つアパートへ向かった―。
****
ピンポーン
部屋の前に辿り着くと、すぐに呼び鈴を押した。
少しの間の後…。
ガチャッ
扉が乱暴に開けられ、奴が物凄い剣幕で現れた。
「卓也!一体今まで何処へ…!ん…?誰だ?お前?」
酒臭い匂いをまきちらせながら怪訝そうに俺を見る。
こいつ…配達員として現れた俺をどうやら覚えていないようだ。
「ええ、実は道に迷っているこの子を偶然見かけ、住所を聞いて連れてきたんですよ」
俺の後ろで身を縮こませている卓也をチラリと見ながら奴に説明した。
「全く…道に迷ったのか?道理で帰りが遅いと思った…。おい、卓也。早く中へ入れ」
親父は卓也に手招きした。
「う、うん…」
俯きながら部屋入ると卓也はこちらを振り返った。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「ああ、それじゃあな」
2人で手を振ると親父はつまらなそうに鼻を鳴らした。
「フン!」
バタンッ!!
そして目の前で扉は乱暴に閉められた―。
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