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第2章 66

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 カンカンカンカン……

派手な音を鳴らす外階段を上りながら、不安な気持ちがこみ上げて来た。
彩花から返さなくても良いと言われていたのに、借りたタッパと一緒に焼き菓子まで持ってきてしまった。

「まずかったかな……図々しい男だと思われるんじゃないだろうか……?」

一番初めにタイムトラベルをした時の彩花の反応が脳裏をよぎる。

再会できた喜びで、思わず出会った瞬間に強く抱きしめてしまった。
その為に俺は痴漢呼ばわりされ…彩花の傍にいられなくなってしまった。結果、彩花は…親父に…。

「いや、今度はきっと大丈夫。慎重に行動しているんだから…。きっと…多分…」

だんだん不安な気持ちがこみ上げてくる。
よし、一度だけインターホンを鳴らし…彩花が出て来なければドアノブにこの紙袋をぶら下げて置こう。

どうせ2階には彩花と…俺と親父しか暮らしていなかった。けれど、肝心の親父は警察にいるし、子供時代の俺だって今は多分児童相談所に引き取られているはずだ。


 そんな考え事をしているうちに、彩花の暮らす部屋の前に立っていた。

「……」

ゴクリと息を呑むと、インターホンをならした。

ピンポーン

「……」

誰も出てくる気配が無い。
……留守なのか、それとも居留守を使っているのかは分からないが、流石にもう一度インターホンを鳴らす気にはなれなかった。

仕方ない……帰ろう。

踵を返し、俺は自分のマンションへ戻る為にアパートを後にした――。


****

 部屋に戻り、コーヒーを飲みながら今後のことを考えた。

親父がどのくらいの間、警察に拘留されるかは不明だが……仮に警察から出て来れたとする。
だが、俺の顔は覚えていたとしても恐らく背後にいた彩花には気付いていないはずだ。
だとすれば、親父が今回狙うターゲットは俺だけに絞られるはず……彩花から注意をそらすことが出来れば…。


そこまで考えた時――。

ピンポーン

突然インターホンが部屋に鳴り響いた。

「誰だ?俺を訪ねてくるなんて……」

そこでふと思った。
この世界で俺の知り合いと言ったら……たった1人しかいないじゃないかっ!

慌ててマグカップをテーブルの上に置くと、玄関へ向かい扉を開けた。


ガチャッ!


すると、そこには驚いた様子で扉の目に立つ彩花がいた。

「あ……南さん、こんにちは」

何と声を掛ければよいか、咄嗟に思い浮かばずに微妙な挨拶になってしまった。

「あの……上条さん。先ほどアパートのドアノブにタッパとケーキを入れた紙袋をぶら下げて行ってくれましたよね?」

「ええ。昨夜のカレーのお礼です」

「私…ついさっきまでコンビニに行っていたんです。それでドアノブに紙袋がぶらさがっていたので中身を見たら私のタッパとケーキが入ってました,、お礼を言いたくて伺いました。かえってお気遣い頂き、ありがとうございます」

彩花は頭を下げて来た。

「いえ、たいしたものではありませんから。気にしないで下さい」

すると彩花から意外な提案をされた。

「それで……出来れば一緒に食べようかと思って、持ってきたのですが…どうでしょうか?」

彩花は少し照れた様子で尋ねて来た――。
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