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第2章 70 幸せを感じる時

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 お互い育った家庭環境を告白し合ったからだろうか、俺と彩花はいつの間にか公園で話が盛り上がっていた。

「そうなんですか、南さんは介護用品の会社に勤めていたんですか?」

「ええ、でも会社と言っても本当に小さな会社なんですよ。従業員も私を会わせて18名しかいませんし……私は総務に所属しているのですけど、もう雑用仕事ばかりで……あ、すみません。何だか仕事の愚痴を言ってるみたいですね」

彩花は恥ずかしそうに笑った。

「いえ、愚痴を言う位いいじゃないですか。俺で良ければいつだって聞きますよ?」

「え?」

彩花が驚いた様子で目を見開いた。しまった、これでは性急過ぎたかもしれない。

「あ、いや……今のは言葉の綾と言うか……その、忘れて下さい」

あまり距離をつめようとしすぎて、警戒されてしまえば元も子もない。

「いえ、そうではなく…ほ、本当に…愚痴でもお付き合いしてくれるのでしょうか?」

「え?付き合う?」

俺の聞き間違いではないだろうか?

「え?ち、違いますよ?お付き合いというのは…そういう意味ではなくて…ただ、話に付き合ってもらえればという意味で言っただけですから」

けれど、そう言う彩花の顔が真っ赤に染まっている。

これは…ひょっとして脈がある?と捉えて良いのだろうか?
そこで思い切って尋ねてみることにした。

「南さんは誰かお付き合いしている男性がいるんですか?」

「え?い、いませんよ!そ、そんな人…いたら…」

「いたら、日曜日に俺を誘ったりしなかった…ってことでいいですか?」

なるべく自然に言ってみる。

「え……?そ、そういう事に……なるかもしれません……ね…」

顔を赤らめて、うつむき加減に返事をする彩花。
これは……脈があるととらえていいのかもしれない。けれど、ガツガツした態度だと引かれてしまうかもしれない。

「そうですか、それなら良かったです。南さんと2人きりでいるところを見られたら、彼氏に勘違いされてしまうかもしれないですからね。でも誘ってくれて嬉しかったです。何しろここには転居してきたばかりで知り合いが誰もいなかったので、ご近所の南さんと知り合えて嬉しいですよ」

まぁ、正確に言えばこの世界に知り合いなんか1人もいないと言ったほうが正しいけれども。

「そ、そうですか……」

何となく、彩花の声が少し淋しげに聞こえたのは……俺の勘違い……じゃないよな?

なら……思い切って伝えよう。

「あの、南さん」

「はい」

彩花が緊張気味に返事をするのが俺にも伝わってきた。

「良ければ今度俺が誘ったときは…応じてもらえますか?」

「も、勿論ですっ!」

彩花は大きく頷き……笑みを浮かべて俺を見てくれた。

ああ……やっぱり俺は彩花のこと大好きだ。
この気持、いつになったら君に伝えられるのだろう?

けれど、一緒にこうして大人の目線で彩花と話が出来るだけで今の俺は十分すぎるくらいの幸せを感じていた――。


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