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第2章 86 彩花への提案
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彩花の口からポツポツと会社と椎名のことについて語られた。
彩花の勤める会社は本当に小さな会社で総勢18名、女性社員は彩花を含めてもたった4人しかいない。
にも関わらず、7年勤めていても未だに挨拶と仕事上の話だけの関係にとどまっていた。
彼女達は全員アラフォー世代で、既婚、子持ち。しかも全員短大卒だった。その為、高卒でまだ20代の彩花は疎外されていた。
総務課という部署に配属されているからありとあらゆる雑用業務まで押し付けられているので、昼休みも満足に休むことが出来ない。しかも食事をしながら電話当番をさせられたうえ、給料にも差がつけられていたのだった。
「昼休みまで彩花1人に仕事を押し付けるなんて‥‥ブラック企業だな」
聞けば聞くほど、酷い環境だ。
「そして、椎名さん‥‥さっきの男の人は同じ会社の人で、2年前に営業マンとして入社してきた人なのよ。その時から既に結婚はしていて、現在の年齢は30歳。奥さんと生まれて3カ月の赤ちゃんがいるの」
「何だ、それ……不倫じゃないか!何て奴だ!」
椎名の家庭事情は既に調べて知ってはいたが、あえて伏せて置いた。
それにしても30歳か‥‥。年齢までは忘れていたけれど。
「あの会社には……20代で未婚者は私しかいないから、ただそれだけの理由で入社したときから私に声を掛けて来ていたの。初めはあの会社で私を相手にしてくる人がいなかったから嬉しかったけど……その内、誘われるようになってきて……。それも奥さんが妊娠中で悪阻が苦しい時でさえ、椎名さんはお酒を飲みに誘ってきたこともあったし……」
彩花が項垂れた様子で話す。
「聞けば聞くほど、最低な男だ。妻が妊娠中に不貞行為を働く夫がいる話はよく聞く話だが、まさか彩花があんな男に狙われていたとはね」
もっともな台詞を言いつつ、椎名に対する激しい怒りがこみ上げて来た。
奴は親父と同様、危険な男だ。
このままではまた彩花につきまとってくるに違いない。
そして彩花は同じ会社に勤務しているから冷たい態度を取ることも出来ない……。
だが、簡単に解決できる方法がある。
しかも俺にとっては一石二鳥だ。
「なぁ、彩花。俺に良い考えがある。この際、椎名の前では本当に恋人同士のふりをするんだよ。そうすればアイツだって信用して…今に諦めるに違いない」
「え……?こ、恋人同士の…ふ、ふり……?」
彩花が少しだけ顔を赤らめながら俺を見た。
「ああ、そうだ。とりあえず、万一のことを考えて、今夜は俺の部屋に泊まった方がいい。着替えがいるだろうから取りに行こう。アパートまでついて行くよ」
立ち上がると、笑みを浮かべて彩花を見た――。
彩花の勤める会社は本当に小さな会社で総勢18名、女性社員は彩花を含めてもたった4人しかいない。
にも関わらず、7年勤めていても未だに挨拶と仕事上の話だけの関係にとどまっていた。
彼女達は全員アラフォー世代で、既婚、子持ち。しかも全員短大卒だった。その為、高卒でまだ20代の彩花は疎外されていた。
総務課という部署に配属されているからありとあらゆる雑用業務まで押し付けられているので、昼休みも満足に休むことが出来ない。しかも食事をしながら電話当番をさせられたうえ、給料にも差がつけられていたのだった。
「昼休みまで彩花1人に仕事を押し付けるなんて‥‥ブラック企業だな」
聞けば聞くほど、酷い環境だ。
「そして、椎名さん‥‥さっきの男の人は同じ会社の人で、2年前に営業マンとして入社してきた人なのよ。その時から既に結婚はしていて、現在の年齢は30歳。奥さんと生まれて3カ月の赤ちゃんがいるの」
「何だ、それ……不倫じゃないか!何て奴だ!」
椎名の家庭事情は既に調べて知ってはいたが、あえて伏せて置いた。
それにしても30歳か‥‥。年齢までは忘れていたけれど。
「あの会社には……20代で未婚者は私しかいないから、ただそれだけの理由で入社したときから私に声を掛けて来ていたの。初めはあの会社で私を相手にしてくる人がいなかったから嬉しかったけど……その内、誘われるようになってきて……。それも奥さんが妊娠中で悪阻が苦しい時でさえ、椎名さんはお酒を飲みに誘ってきたこともあったし……」
彩花が項垂れた様子で話す。
「聞けば聞くほど、最低な男だ。妻が妊娠中に不貞行為を働く夫がいる話はよく聞く話だが、まさか彩花があんな男に狙われていたとはね」
もっともな台詞を言いつつ、椎名に対する激しい怒りがこみ上げて来た。
奴は親父と同様、危険な男だ。
このままではまた彩花につきまとってくるに違いない。
そして彩花は同じ会社に勤務しているから冷たい態度を取ることも出来ない……。
だが、簡単に解決できる方法がある。
しかも俺にとっては一石二鳥だ。
「なぁ、彩花。俺に良い考えがある。この際、椎名の前では本当に恋人同士のふりをするんだよ。そうすればアイツだって信用して…今に諦めるに違いない」
「え……?こ、恋人同士の…ふ、ふり……?」
彩花が少しだけ顔を赤らめながら俺を見た。
「ああ、そうだ。とりあえず、万一のことを考えて、今夜は俺の部屋に泊まった方がいい。着替えがいるだろうから取りに行こう。アパートまでついて行くよ」
立ち上がると、笑みを浮かべて彩花を見た――。
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