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第2章 88 懐かしい味

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「はい。お待たせ~」

彩花が出来上がった料理をテーブルに運んできて、俺の前に置いた。

「これは……」

目の前に置かれた料理はオムライスだった。この料理は15年前に彩花がまだ小学生だった俺の為に良く作ってくれた料理だった。

15年前の彩花の言葉が脳裏に蘇ってくる。

『たっくん、卵の上にケチャップで好きな絵を描いていいよ?』

彩花はそう言って良く笑っていた。

彩花‥‥!

懐かしい思い出に思わず目じりに涙が浮かびそうになってきた。一方、彩花はそんな俺に気付かない様子で、俯きながら恥ずかしそうに言った。

「あははは…ごめんね。何だか子供向けの料理で。時間が無かったから簡単な料理しか作れなかったんだ」

「そんなことあるもんか。この料理には‥‥すごくいい思い出があるんだ……。懐かしくて涙が出そうだよ」

正直に自分の気持ちを吐露した。

「え‥‥?拓也さん‥‥?」

首を傾げる彩花に感謝の気持ちを述べた。

「ありがとう、彩花。とても嬉しいよ。これは‥‥俺にとっての最高のご馳走だ」

「そ、そう?あ、ありがとう」

途端に真っ赤になって俯く彩花。
その姿がとても愛らしくて‥‥ますます彩花に対する思いが強くなるのを感じた―。


****

「ご馳走様。美味かったよ」

彩花特製のオムライスを完食し、新ためて礼を述べた。

「そ、そんな大げさだよ。たかがオムライスくらいで。さて、それじゃ片づけて来るね」

食べ終えた食器を重ねてキッチンに運んでいく彩花に声を掛けた。

「彩花、風呂に入りたいだろう?今準備してくるよ」

「え?で、でも悪いからシャワーでいいよ」

彩花が俺の方を振り向いた。

「遠慮すること無いって。どうせ俺も入るつもりだったんだから。よし、それじゃ沸かしてくる」

最後まで彩花の返事を聞かずに風呂場へ掃除する為に向かった。



**

「ふ~…よし、風呂場掃除完了っと。沸かすとするか」

スポンジの水けを絞ると、給湯器を捜査して湯を流し始めた。その間に以前買っておいたバスボムの入浴剤を脱衣所の引き出しからとりだし、お湯が張られていく浴槽の中にボチャンと入れる。

「彩花……喜んでくれるかな」

子供の頃、良く彩花は俺に話していた。温泉に入るのが好きだけど、まだ余裕が無いから一度も行ったことが無いと。
いつかは日本の秘湯巡りをするのが夢なのだと――。

そして、当然彩花の影響を受けた俺も温泉に入るのが好きになっていた。
これは雰囲気だけでも味わおうと買っておいたバスボムだったのだ。

「…よし、そろそろお湯がたまりそうだな……彩花に声を掛けてくるか」

そしてキッチンへ向かった。


**

 部屋に戻ると、ちょうど片づけを終えた彩花が背を向け、荷物整理をしているところだった。
その小さな背中に向けて声を掛けた。

「彩花、風呂湧いたぞ。入って来いよ」

「あ、ありがとう。拓哉さん」

カバンから着替えを取り出した彩花は立ち上がると返事をした。

「案内するよ、こっちだ」

「うん」

そして彩花を風呂場に連れて行き、色々説明し…最後に彩花に声を掛けた。

「それじゃ、ごゆっくり」

「うん、ありがとう」

彩花の返事を聞いた俺は彼女に笑いかけ‥‥風呂場を後にした――。
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