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第2章 104 21度目の再会
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彩花が安月給で働き、毎日切り詰めて生活をしていることは何度もタイムトラベルを繰り返して彼女と関わってきた俺にはよく分かっていた。
それなのに、往復のタクシー代に加えてあの怪我の治療……。
保険証だって無いのだからきっと自費で診察を受けさせたに決まっている。
そこまでして赤の他人の…しかも今日会ったばかりの子供時代の俺に親切にしてくれるなんて……。
「駄目だ…やっぱり彩花に会って…お礼を言いたい。このまま黙っているなんて真似は俺には無理だ」
気づけば言葉にしていた。
だけど、どうやって恩に報いればいい?
俺と彩花はまだ出会ってすらいない。いきなり彩花の元を訪ねて礼を言うことなんて出来っこない。
「一体どうすれば……」
結局、妙案が思い浮かばないまま…時間だけが流れていった――。
****
今後の対策を練る為にいろいろプランを立てているうちに気づけば時刻は19時半を過ぎていた。
「しまった!もうこんな時間だったのか……道理で腹が減ったと思った」
途中、部屋の中が暗くなってきたので電気をつけた記憶はあるが時間の感覚が全く無かった。
「食材もなにも無いしな…。仕方ない、駅前のスーパーにでも行くか……」
立ち上がり、上着を羽織ると部屋の電気を消して買い物へ出掛けた―。
俺は駅前の冷凍食品専門スーパーへ来ていた。この店は彩花が教えてくれた激安冷凍食品の店だった。
早速店に入ると、物色を始めた……。
「よし…これだけ買えば十分だろう」
レジカゴの中には冷凍野菜や冷凍食品が入っている。
早速レジに向かおうとした時……思わず息を呑んだ。
「あ……彩花……!」
何と驚くべきことに店に彩花が来ていたのだ。
彩花……!
思いがけない場所で出会い、目が離せなくなってしまった。
気づけば俺は彩花の姿を目で追っていた。
見ていると、彩花は冷凍ひき肉を手に取って笑みを浮かべてレジカゴに入れている。
随分喜んでいるな。きっと良い買い物が出来たことが嬉しいのだろう。
その直後の事だった。
大きなカートのせいで角を曲がりきれなかったのか、彩花は通路に積み上げられたダンボールに突っ込んでしまった。
途端にドサドサと通路に商品が落ちていく。そして慌てて床に落ちた商品を拾い上げる彩花。
「大変だ……!」
慌てて彩花の元へ向かうと、一緒になって床に落ちた商品をダンボールの中に戻す手伝いをした。
「すみません、ありがとうございます」
最後の商品を拾い上げると、彩花は笑みを浮かべてお礼を述べてきた。
彩花にとっては初めての出会いでも、俺にとってはこれは21回目の再会だ。
こみ上げる喜びを無理やり胸に押し込めた。
「いいえ、どう致しまして。こちらこそ、今日はありがとう」
気づけばこの言葉が口をついて出ていた――。
それなのに、往復のタクシー代に加えてあの怪我の治療……。
保険証だって無いのだからきっと自費で診察を受けさせたに決まっている。
そこまでして赤の他人の…しかも今日会ったばかりの子供時代の俺に親切にしてくれるなんて……。
「駄目だ…やっぱり彩花に会って…お礼を言いたい。このまま黙っているなんて真似は俺には無理だ」
気づけば言葉にしていた。
だけど、どうやって恩に報いればいい?
俺と彩花はまだ出会ってすらいない。いきなり彩花の元を訪ねて礼を言うことなんて出来っこない。
「一体どうすれば……」
結局、妙案が思い浮かばないまま…時間だけが流れていった――。
****
今後の対策を練る為にいろいろプランを立てているうちに気づけば時刻は19時半を過ぎていた。
「しまった!もうこんな時間だったのか……道理で腹が減ったと思った」
途中、部屋の中が暗くなってきたので電気をつけた記憶はあるが時間の感覚が全く無かった。
「食材もなにも無いしな…。仕方ない、駅前のスーパーにでも行くか……」
立ち上がり、上着を羽織ると部屋の電気を消して買い物へ出掛けた―。
俺は駅前の冷凍食品専門スーパーへ来ていた。この店は彩花が教えてくれた激安冷凍食品の店だった。
早速店に入ると、物色を始めた……。
「よし…これだけ買えば十分だろう」
レジカゴの中には冷凍野菜や冷凍食品が入っている。
早速レジに向かおうとした時……思わず息を呑んだ。
「あ……彩花……!」
何と驚くべきことに店に彩花が来ていたのだ。
彩花……!
思いがけない場所で出会い、目が離せなくなってしまった。
気づけば俺は彩花の姿を目で追っていた。
見ていると、彩花は冷凍ひき肉を手に取って笑みを浮かべてレジカゴに入れている。
随分喜んでいるな。きっと良い買い物が出来たことが嬉しいのだろう。
その直後の事だった。
大きなカートのせいで角を曲がりきれなかったのか、彩花は通路に積み上げられたダンボールに突っ込んでしまった。
途端にドサドサと通路に商品が落ちていく。そして慌てて床に落ちた商品を拾い上げる彩花。
「大変だ……!」
慌てて彩花の元へ向かうと、一緒になって床に落ちた商品をダンボールの中に戻す手伝いをした。
「すみません、ありがとうございます」
最後の商品を拾い上げると、彩花は笑みを浮かべてお礼を述べてきた。
彩花にとっては初めての出会いでも、俺にとってはこれは21回目の再会だ。
こみ上げる喜びを無理やり胸に押し込めた。
「いいえ、どう致しまして。こちらこそ、今日はありがとう」
気づけばこの言葉が口をついて出ていた――。
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