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第2章 119 一度は捨てた恋心
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「何でだよ…彩花…何で…そこまでして卓也に構うんだよ…?彩花にとっては…所詮は…ただの…他人じゃないか…」
気づけば彩花の髪に顔を埋め、強く抱きしめていた。我慢していた涙が溢れそうになってくるのを感じながら。
「あのねぇ…!」
腕の中で怒った様子の彩花だったが、何かに気付いたのか突然身体の力を緩めた。
「彩花…俺は…俺はまた失敗してしまったのか…?何所がいけなかったんだ…?また俺は君を…失ってしまうのか…?」
この時の俺は多分正気を失っていたのだと思う。
自分でも訳の分からないことを言っているのは十分分かりきっていたけれども口に出さずにはいられなかった。
「た、拓也さん…?」
彩花の戸惑った様子の声で我に返った。
「ご、ごめん…。いきなり抱きしめたりして…驚いただろう?」
慌てて彩花の身体から離れた。
「それは確かに驚いたけど…」
「ねぇ、拓也さん…。今言った事って…」
「ごめん」
俺は彩花に頭を下げた。
「え?な、何で謝るの?私、まだ何も言ってないよ?」
「言わなくても分ってる…彩花が何を言いたいのか。だけど…本当にごめん。今はまだ何も話せないんだ…」
お願いだ、彩花。
俺は……お前の聞きたいことに答えられないんだ……!
「今はまだ何もって…それじゃ、いずれは話してくれるって事なの?」
彩花は真剣な瞳で見つめてくる。
「ああ、いずれ…全て話すよ。だけど、今は…何も言えないんだ…」
彩花の視線が痛くて、思わず視線をそらせてしまった。
「そうなの…?それじゃ、昨日拓也さんを見かけたことも話してくれないの…?」
え?何だって……?
まさか……俺の姿を彩花に見られていたのか?
「昨夜、たっくんのお父さん…アパートに帰って来なかったんだよ?さっき、もっとあいつを痛めつけておけばよかったって言ったよね?それも私は聞いたらいけないの?」
あまり彩花に隠し事をして嫌われたくはなかった。
「それは…話すよ……」
俺は自分が卓也であることを伏せながら、過去の体験談を彩花に語った。
いかに哀れな子供時代、奴に虐げられてきたかを……。
嘘と事実を織り交ぜながら。
「拓也さん……」
話を聞き終えた彩花が神妙そうな顔つきで俺を見ている。
その姿が愛しくてたまらなかった。
あぁ…あんなにも今回は彩花を諦めようと思っていたのに、俺の心は彩花を欲している。
「彩花…」
無意識の内に彩花の身体を抱きしめていた。
「何があっても必ず…君を守ってあげるよ…」
耳元で、そっと囁いた。
「うん…ありがとう…」
そして俺たちは暫くの間、無言で互いを抱きしめあった――。
気づけば彩花の髪に顔を埋め、強く抱きしめていた。我慢していた涙が溢れそうになってくるのを感じながら。
「あのねぇ…!」
腕の中で怒った様子の彩花だったが、何かに気付いたのか突然身体の力を緩めた。
「彩花…俺は…俺はまた失敗してしまったのか…?何所がいけなかったんだ…?また俺は君を…失ってしまうのか…?」
この時の俺は多分正気を失っていたのだと思う。
自分でも訳の分からないことを言っているのは十分分かりきっていたけれども口に出さずにはいられなかった。
「た、拓也さん…?」
彩花の戸惑った様子の声で我に返った。
「ご、ごめん…。いきなり抱きしめたりして…驚いただろう?」
慌てて彩花の身体から離れた。
「それは確かに驚いたけど…」
「ねぇ、拓也さん…。今言った事って…」
「ごめん」
俺は彩花に頭を下げた。
「え?な、何で謝るの?私、まだ何も言ってないよ?」
「言わなくても分ってる…彩花が何を言いたいのか。だけど…本当にごめん。今はまだ何も話せないんだ…」
お願いだ、彩花。
俺は……お前の聞きたいことに答えられないんだ……!
「今はまだ何もって…それじゃ、いずれは話してくれるって事なの?」
彩花は真剣な瞳で見つめてくる。
「ああ、いずれ…全て話すよ。だけど、今は…何も言えないんだ…」
彩花の視線が痛くて、思わず視線をそらせてしまった。
「そうなの…?それじゃ、昨日拓也さんを見かけたことも話してくれないの…?」
え?何だって……?
まさか……俺の姿を彩花に見られていたのか?
「昨夜、たっくんのお父さん…アパートに帰って来なかったんだよ?さっき、もっとあいつを痛めつけておけばよかったって言ったよね?それも私は聞いたらいけないの?」
あまり彩花に隠し事をして嫌われたくはなかった。
「それは…話すよ……」
俺は自分が卓也であることを伏せながら、過去の体験談を彩花に語った。
いかに哀れな子供時代、奴に虐げられてきたかを……。
嘘と事実を織り交ぜながら。
「拓也さん……」
話を聞き終えた彩花が神妙そうな顔つきで俺を見ている。
その姿が愛しくてたまらなかった。
あぁ…あんなにも今回は彩花を諦めようと思っていたのに、俺の心は彩花を欲している。
「彩花…」
無意識の内に彩花の身体を抱きしめていた。
「何があっても必ず…君を守ってあげるよ…」
耳元で、そっと囁いた。
「うん…ありがとう…」
そして俺たちは暫くの間、無言で互いを抱きしめあった――。
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