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13−8 噛み合わない2人
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「聞きたいこと?それは一体何でしょう?」
アリアドネはエルウィンをじっと見つめた。
「あ、ああ。その……馬車の中で1人で‥…退屈では無かったか?」
「いえ。退屈と言う事はありませんでした」
「そうか。なら…馬車の中で何をしていたんだ?!」
つい、語尾に力が入るエルウィン。
「馬車の中で‥‥‥」
アリアドネは考えた。
(馬車の中ではエルウィン様にマフラーを編んでいたけれども……サプライズでプレゼントしたいわ。だから内緒にしておかなければ…)
「そうですね…読書をしたり、窓の外の景色を眺めたりして過ごしていました」
一方、驚いたのはエルウィンの方だった。
てっきり編み物をしていたと答えてくれるかと思っていたアリアドネがそのことを伏せたからだ。
「な、何?他には何かしてはいなかったのか?!」
「え、ええ…そうですね」
アリアドネはエルウィンに嘘をついていることを心の中で謝罪しながら返事をする。
「そ、そう…か‥‥」
エルウィンは返事をしながら目まぐるしく頭の中で考えた。
(編み物をしていたことすら内緒にしている…。部下たちはアリアドネは自分の為にマフラーを編んでいると言っていたが、もし自分用だったら隠す必要は無いはずだ。俺の為だとしたら、隠す必要は無いはずだ。だが、部下たちは俺にマフラーを編むはずは無いと言い切っていたからな。だとしたら…まさかシュミットかスティーブの為か?だから俺に内緒にしているのか?!)
「あ、あの‥‥エルウィン様…?一体どうされましたか…?」
難しい顔で腕組みをしながらブツブツ呟いているエルウィンにアリアドネは恐る恐る声を掛けた。
「い、いや。何でもない。それより全員食事も終わったようだしな…。そろそろ出発することにしよう。次はここから馬車で約4時間程南下した場所にある宿場町を目指すことになるからな。今夜の宿もそこで取るつもりだ」
「分かりました」
アリアドネが返事をするとエルウィンは椅子から立ち上がり、騎士達に声を掛けた。
「よし!全員次の宿場町へ向けて出発だ!」
『はい!』
騎士達は全員声を揃えて返事をした――。
****
アリアドネが馬車に乗り込むと、エルウィンは馬上から声を掛けた。
「いいか、アリアドネ。何か用が出来たり、不便な事があればいつでも御者のカインに声を掛けろよ?」
エルウィンの言葉に頷くカイン。
「はい、分かりました。お気遣いありがとうございます」
「よし、それじゃ…また後程…な」
「はい」
そして扉を閉めると、再び隊列の先頭に戻り……更に南へと向かった。
(アリアドネ……やはりまだ俺が信用出来ないのか……)
エルウィンのモヤモヤした気持ちを知ること無く、アリアドネは再び編み物を始めた。
感謝の気持を込めて、エルウィンにプレゼントを送る為に――。
アリアドネはエルウィンをじっと見つめた。
「あ、ああ。その……馬車の中で1人で‥…退屈では無かったか?」
「いえ。退屈と言う事はありませんでした」
「そうか。なら…馬車の中で何をしていたんだ?!」
つい、語尾に力が入るエルウィン。
「馬車の中で‥‥‥」
アリアドネは考えた。
(馬車の中ではエルウィン様にマフラーを編んでいたけれども……サプライズでプレゼントしたいわ。だから内緒にしておかなければ…)
「そうですね…読書をしたり、窓の外の景色を眺めたりして過ごしていました」
一方、驚いたのはエルウィンの方だった。
てっきり編み物をしていたと答えてくれるかと思っていたアリアドネがそのことを伏せたからだ。
「な、何?他には何かしてはいなかったのか?!」
「え、ええ…そうですね」
アリアドネはエルウィンに嘘をついていることを心の中で謝罪しながら返事をする。
「そ、そう…か‥‥」
エルウィンは返事をしながら目まぐるしく頭の中で考えた。
(編み物をしていたことすら内緒にしている…。部下たちはアリアドネは自分の為にマフラーを編んでいると言っていたが、もし自分用だったら隠す必要は無いはずだ。俺の為だとしたら、隠す必要は無いはずだ。だが、部下たちは俺にマフラーを編むはずは無いと言い切っていたからな。だとしたら…まさかシュミットかスティーブの為か?だから俺に内緒にしているのか?!)
「あ、あの‥‥エルウィン様…?一体どうされましたか…?」
難しい顔で腕組みをしながらブツブツ呟いているエルウィンにアリアドネは恐る恐る声を掛けた。
「い、いや。何でもない。それより全員食事も終わったようだしな…。そろそろ出発することにしよう。次はここから馬車で約4時間程南下した場所にある宿場町を目指すことになるからな。今夜の宿もそこで取るつもりだ」
「分かりました」
アリアドネが返事をするとエルウィンは椅子から立ち上がり、騎士達に声を掛けた。
「よし!全員次の宿場町へ向けて出発だ!」
『はい!』
騎士達は全員声を揃えて返事をした――。
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アリアドネが馬車に乗り込むと、エルウィンは馬上から声を掛けた。
「いいか、アリアドネ。何か用が出来たり、不便な事があればいつでも御者のカインに声を掛けろよ?」
エルウィンの言葉に頷くカイン。
「はい、分かりました。お気遣いありがとうございます」
「よし、それじゃ…また後程…な」
「はい」
そして扉を閉めると、再び隊列の先頭に戻り……更に南へと向かった。
(アリアドネ……やはりまだ俺が信用出来ないのか……)
エルウィンのモヤモヤした気持ちを知ること無く、アリアドネは再び編み物を始めた。
感謝の気持を込めて、エルウィンにプレゼントを送る為に――。
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