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18-12 アリアドネの詫び
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「辺境伯に『生命の雫』を分けてあげたことだし、君を手に入れることも出来た。もうここには用が無いから、王都に戻ろうか?」
マクシミリアンはアリアドネの耳元で囁いた。
「い、いえ!ま、まだエルウィン様の様態が気になるので……せ、せめて回復されるまでは……ここにいさせて下さい」
「アリアドネ。もしかして私のことを疑っているのかい?あの液体が偽物では無いかと?」
マクシミリアンが眉を潜めた。その声は冷淡なもので、アリアドネは背筋が冷たくなるのを感じた。
「そ、そんなことはありません!た、ただ……この目で確かめたいだけなのです……決してマクシミリアン様を疑っているわけではありません……」
「ハハハ。今のはほんの冗談だよ。あの液体は勿論本物だよ。何しろ辺境伯は貴重な人材だからね。彼がいなければ国境の平和を守れる者はいないだろうからね。死なすにはまだまだ惜しい存在だよ」
「ありがとうございます……」
返事をしながらアリアドネは暗い気持ちになっていた。
(王太子殿下は……まるでエルウィン様のことを道具か何かのように仰るのね……。こんなに冷淡な方だとは思いもしなかったわ。やはり……王族の方と言うのは利用価値があるかどうかでしか人を見ることが出来ないのかしら……)
そんなアリアドネの心の内を知ってか知らずか、マクシミリアンは近くに立っていた近衛兵に声を掛けた。
「そこのお前。宿屋に行って辺境伯の様子を見て来るのだ。彼の意識が戻り次第、すぐに知らせに来い」
「はい!かしこまりました!」
命じられた近衛兵は敬礼すると、すぐさま宿屋へと向かって行った。
「彼は信頼できる人物だから、嘘をつくことは無い。安心して大丈夫だよ」
マクシミリアンは笑顔でアリアドネを見つめる。
「はい……」
(やはり……私の目でエルウィン様の無事を確認することは出来ないのね……)
「それでは、彼の目が覚める知らせが届くまでは馬車の中で待つことにしよう。辺境伯の意識が戻ったのを確認でき次第、すぐに出発出来る様にね。」
「分かりました……」
アリアドネは本当は自分の目でエルウィンの無事を確認したかった。
だが、そんなことを口にするわけにもいかず……ただ言うなりになるしかなかった。
向かい合わせで馬車に座ると、早速マクシミリアンは今後の話を始めた。
「王都に着いたら早速国民に向けて挨拶を行おう。君が正式な私の妻になることを宣言するのだ。そうだ、先にこれだけは告げておかなければな」
マクシミリアンは向かい側に座るアリアドネの手を取ると話を続けた。
「私は側室を持つつもりはない。生涯かけてアリアドネ、君1人だけを愛することを誓おう。早めに式を執り行いたいからな……すぐに挙式用のドレスも仕立てることにしよう」
「は、はい……」
アリアドネの気持ちを置き去りに、勝手に話を進めていくマクシミリアン。
けれど、今のアリアドネには彼の言葉は殆ど頭には入って来なかった。エルウィンのことが気がかりでならなかったのだ。
その時、馬車の外で声を掛けられた。
「殿下、辺境伯の目が覚めたそうです」
「ほ、本当ですか?!」
アリアドネはその言葉に素早く反応た。素早く窓から顔を覗かせると、報告に来た近衛兵に尋ねた。
「本当にエルウィン様の目が覚められたのですよね?ご無事なのですよね?」
「ええ、本当です。嘘は申しません。それでは持ち場に戻ります」
近衛兵は敬礼すると、持ち場へ戻って行った。
「これで分かっただろう?アリアドネ」
席に着席したアリアドネにマクシミリアンは尋ねた。
「はい……分かりました。ほ、本当に…‥‥エルウィン様を助けて頂き、ありがとうございます……」
アリアドネは目に涙を浮かべながら、マクシミリアンに礼を述べた。
「では辺境伯の無事を確認したことだし、すぐに出発しよう」
そしてマクシミリアン一行はアリアドネを連れて、再び王都へ向けて移動を始めた。
泣きたい気持ちを堪えながら馬車の窓から小さくなっていく宿屋を見つめているアリアドネ。
(エルウィン様…‥最後にきちんとお別れをせずに申し訳ございません……)
アリアドネは心の中でエルウィンに詫びるのだった――。
マクシミリアンはアリアドネの耳元で囁いた。
「い、いえ!ま、まだエルウィン様の様態が気になるので……せ、せめて回復されるまでは……ここにいさせて下さい」
「アリアドネ。もしかして私のことを疑っているのかい?あの液体が偽物では無いかと?」
マクシミリアンが眉を潜めた。その声は冷淡なもので、アリアドネは背筋が冷たくなるのを感じた。
「そ、そんなことはありません!た、ただ……この目で確かめたいだけなのです……決してマクシミリアン様を疑っているわけではありません……」
「ハハハ。今のはほんの冗談だよ。あの液体は勿論本物だよ。何しろ辺境伯は貴重な人材だからね。彼がいなければ国境の平和を守れる者はいないだろうからね。死なすにはまだまだ惜しい存在だよ」
「ありがとうございます……」
返事をしながらアリアドネは暗い気持ちになっていた。
(王太子殿下は……まるでエルウィン様のことを道具か何かのように仰るのね……。こんなに冷淡な方だとは思いもしなかったわ。やはり……王族の方と言うのは利用価値があるかどうかでしか人を見ることが出来ないのかしら……)
そんなアリアドネの心の内を知ってか知らずか、マクシミリアンは近くに立っていた近衛兵に声を掛けた。
「そこのお前。宿屋に行って辺境伯の様子を見て来るのだ。彼の意識が戻り次第、すぐに知らせに来い」
「はい!かしこまりました!」
命じられた近衛兵は敬礼すると、すぐさま宿屋へと向かって行った。
「彼は信頼できる人物だから、嘘をつくことは無い。安心して大丈夫だよ」
マクシミリアンは笑顔でアリアドネを見つめる。
「はい……」
(やはり……私の目でエルウィン様の無事を確認することは出来ないのね……)
「それでは、彼の目が覚める知らせが届くまでは馬車の中で待つことにしよう。辺境伯の意識が戻ったのを確認でき次第、すぐに出発出来る様にね。」
「分かりました……」
アリアドネは本当は自分の目でエルウィンの無事を確認したかった。
だが、そんなことを口にするわけにもいかず……ただ言うなりになるしかなかった。
向かい合わせで馬車に座ると、早速マクシミリアンは今後の話を始めた。
「王都に着いたら早速国民に向けて挨拶を行おう。君が正式な私の妻になることを宣言するのだ。そうだ、先にこれだけは告げておかなければな」
マクシミリアンは向かい側に座るアリアドネの手を取ると話を続けた。
「私は側室を持つつもりはない。生涯かけてアリアドネ、君1人だけを愛することを誓おう。早めに式を執り行いたいからな……すぐに挙式用のドレスも仕立てることにしよう」
「は、はい……」
アリアドネの気持ちを置き去りに、勝手に話を進めていくマクシミリアン。
けれど、今のアリアドネには彼の言葉は殆ど頭には入って来なかった。エルウィンのことが気がかりでならなかったのだ。
その時、馬車の外で声を掛けられた。
「殿下、辺境伯の目が覚めたそうです」
「ほ、本当ですか?!」
アリアドネはその言葉に素早く反応た。素早く窓から顔を覗かせると、報告に来た近衛兵に尋ねた。
「本当にエルウィン様の目が覚められたのですよね?ご無事なのですよね?」
「ええ、本当です。嘘は申しません。それでは持ち場に戻ります」
近衛兵は敬礼すると、持ち場へ戻って行った。
「これで分かっただろう?アリアドネ」
席に着席したアリアドネにマクシミリアンは尋ねた。
「はい……分かりました。ほ、本当に…‥‥エルウィン様を助けて頂き、ありがとうございます……」
アリアドネは目に涙を浮かべながら、マクシミリアンに礼を述べた。
「では辺境伯の無事を確認したことだし、すぐに出発しよう」
そしてマクシミリアン一行はアリアドネを連れて、再び王都へ向けて移動を始めた。
泣きたい気持ちを堪えながら馬車の窓から小さくなっていく宿屋を見つめているアリアドネ。
(エルウィン様…‥最後にきちんとお別れをせずに申し訳ございません……)
アリアドネは心の中でエルウィンに詫びるのだった――。
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