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1 目覚めの悪い朝

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僕と主であるジュリオは、今まさに裁判に掛けられている真っ最中だった。

カンカンカン‼

壇上にいる裁判官が木槌を大きく打ち鳴らした。いよいよ僕達に判決が下されるのだ。

隣に立つジュリオは顔面蒼白になって震えているが……冗談じゃない! 何故僕まで彼の巻き添えで裁判に掛けられなくてはならないんだ⁉ 僕は……僕は何もしていないのに!

そして、裁判官は口を開いた。

「ジュリオ・モンターニュ! 及び、彼の従者であるクリフ・ブランディ! ふたりは共謀してジュリオ・モンターニュの婚約者であるクレア・フリーゲルを自殺未遂へ追い込んだ罪状により、十年監獄に収監するものとする!」

そ、そんな……‼ 十年も監獄に収監されるなんて……‼


「い……いやだぁあああああああっ‼」


で僕は絶叫した――



「あ……?」

自分の叫び声で目が覚めた。ここはいつもの自分のベッドの上だ。

「よ、良かった……ゆ、夢か……それにしても……やけにリアルな夢だった……」

まだ心臓がバクバク早鐘を打っている。
ムクリとベッドから起き上がり、壁の時計を見た。時刻は五時半を指している。

「まさか……よ、予知夢じゃないよな……」

いや、まさか。今まで予知夢なんか一度も見たことがないし、第一ジュリオはまだ婚約者がいない。

「そう、これは夢。ただの夢なんだ」

自分自身に言い聞かせると、朝の支度をするためにベッドから下りた。


「よし、こんなものだろう」

姿見を覗き込むと鏡の中にグレーのスーツ姿を着用したシルバーの髪に青い瞳の自分が写っている。

「さて、それじゃジュリオを起こす準備をしないとな」

ジュリオを起こすために僕は自室を後にした。


僕の名前はクリフ・ブランディ、十八歳。ブランディ男爵家の長男で、礼節を磨くために、モンターニュ伯爵家に住み込みで学んでいる……というのは建前で、貧しい家計を支える為に父と一緒にこの屋敷で奉公している身分だった。

現在、僕は同じ年齢ジュリオ・モンターニュの従者として仕えている。


そして、僕には家族にしか知らない、ある秘密があった……。


長い廊下を歩いていると、僕より二歳年下のメイドのシビルが前から歩いてきた。

「おはよう、クリフ」
「うん、おはようシビル」

二人で挨拶を交わす。

「クリフはこれからジュリオ様のお部屋に行くのね?」

「うん、そうだよ。シビルは何処へ行くんだい?」

「私はこれからリネン室へ行って洗濯物を取りに行くのよ」

「ふ~ん……そう」

そのとき、自分の頭の中にある光景が浮かび上がった。

「あ、そうだ。シビル。早くリネン室へ行ったほうがいいよ」

「あら? どうして?」

「リネン室のそばにあるポンプにヒビが入って、水漏れしそうだからだよ」

「え? そうなの? そんな話初耳よ?」

「あ……じ、実は昨夜誰かがポンプの様子がおかしいって話しているのを耳にしたからだよ。まだ平気かもしれないけれど、早く様子を見に行ったほうがいいよ。なんとなく怪しい気がするんだ」

「……分かったわ。そう言えばクリフの予感て外れたことがないものね。急いで行ってくるわ!」

シビルはスカートをたくし上げると、急ぎ足でリネン室へと向かった。

「ふ~……危ないところだった……」

そう、僕の秘密というのは……それは、ほんの少しだけ「未来を先読む」能力があることだった――




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