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第1話
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「……もう一度仰って頂けます?」
「ですからシリル様の子が出来たので、シリル様と別れて欲しいんです!」
「俺からも頼むよ、アイリーン! エイダを愛してしまったんだ!」
アイリーンは、最初は聞き間違いかと思ったが、どうやら聞き間違いではないらしい。
ここはエヴァンス侯爵家の応接室。
エヴァンス侯爵家の娘・アイリーン、その婚約者のシリル。
そしてシリルの恋人のエイダ。
この3人が応接室にて顔を突き合わせている。
アイリーンは一人掛けのソファーに座り、シリルとエイダは二人掛けのソファーに二人でぴったりと体をくっつけて座っている。
シリルの子が出来たから別れてと主張しているのは、エイダ・バーク。
彼女はバーク男爵家の令嬢である。
ふわふわした薄いピンク色の髪に若草色の瞳で小動物を思わせるような雰囲気の令嬢だ。
彼女は今日、シリルの恋人だと名乗り、重要な話があるとのことで、アイリーンの家であるエヴァンス侯爵邸を訪れた。
彼女が訪れた時、アイリーンは一人で対応しようとしたが、最近殆どエヴァンス侯爵邸に来ていなかったシリルが何の因果か今日はいたので、シリルにも関係のある話かもしれないと判断し、同席を許可した。
アイリーンとシリルの婚約は親戚の中で都合が良いという理由で決まった。
アイリーンはエヴァンス侯爵家の一人娘で、エヴァンス家に婿入り可能な婚約者を探していた。
そこで白羽の矢が立ったのがシリルである。
アイリーンの両親は他家よりも血筋的に近過ぎず遠過ぎずの親戚から婿を取る意向を示しており、シリルはエヴァンス侯爵家の遠縁にあたるマイソン伯爵家の出身だ。
さらにシリルは兄一人弟一人の三兄弟の真ん中で、彼が婿に行くことにマイソン伯爵家にとって何の不都合もなかった。
そのような経緯でアイリーンとシリルの婚約は成立した。
(私という婚約者がありながら、恋人を作って挙句子供まで出来た婚約者なんてこちらから願い下げですわ。シリル様の有責ということで体よくお別れ出来そうですわね。お父様も最近のシリル様のご様子から見切りをつけていらしたからこちらとしては願ったり叶ったりな状況になりましたわ)
「私とシリル様の婚約はシリル様とエイダ様の間に子が出来たということもありますし、私は婚約解消ということで構いませんわ。お父様とあなたのご実家のマイソン伯爵家の皆様にはあなたの有責で婚約を解消することにしたと伝えておきます。マイソン伯爵家とバーク男爵家には慰謝料の請求はさせて頂きますので悪しからず」
アイリーンの言葉に、シリルとエイダは手を叩いて喜びを分かち合っている。
「わかった。エイダとのことを認めてくれてありがとう、アイリーン!」
「ありがとうございます! 私はアイリーン様がシリル様を手放してくれないかと思って不安だったの!」
「用件がこれだけならば二人ともお帰り下さい。婚約解消に伴う諸々の後処理は後日きちんとやりますので」
アイリーンは用事は済んだとばかりにエヴァンス侯爵家にとって無関係な客人二人を追い返すことにしたが、二人は驚きの言葉を告げる。
「何を言っているんだ、アイリーン。俺達二人は今日からここで暮らすんだ。出で行くのはアイリーン、お前の方だ!」
「そうですわ。私がアイリーン様の代わりに侯爵夫人としてこの家を盛り立てていくのです。この子はエヴァンス侯爵家の跡取りですわ」
(え!? 二人は何を仰っているのかしら? 私を追い出して恋人との子を我が家の跡取りにする? エヴァンス侯爵家は私の家ですわよ? 冗談も大概にして下さいませ)
「ですからシリル様の子が出来たので、シリル様と別れて欲しいんです!」
「俺からも頼むよ、アイリーン! エイダを愛してしまったんだ!」
アイリーンは、最初は聞き間違いかと思ったが、どうやら聞き間違いではないらしい。
ここはエヴァンス侯爵家の応接室。
エヴァンス侯爵家の娘・アイリーン、その婚約者のシリル。
そしてシリルの恋人のエイダ。
この3人が応接室にて顔を突き合わせている。
アイリーンは一人掛けのソファーに座り、シリルとエイダは二人掛けのソファーに二人でぴったりと体をくっつけて座っている。
シリルの子が出来たから別れてと主張しているのは、エイダ・バーク。
彼女はバーク男爵家の令嬢である。
ふわふわした薄いピンク色の髪に若草色の瞳で小動物を思わせるような雰囲気の令嬢だ。
彼女は今日、シリルの恋人だと名乗り、重要な話があるとのことで、アイリーンの家であるエヴァンス侯爵邸を訪れた。
彼女が訪れた時、アイリーンは一人で対応しようとしたが、最近殆どエヴァンス侯爵邸に来ていなかったシリルが何の因果か今日はいたので、シリルにも関係のある話かもしれないと判断し、同席を許可した。
アイリーンとシリルの婚約は親戚の中で都合が良いという理由で決まった。
アイリーンはエヴァンス侯爵家の一人娘で、エヴァンス家に婿入り可能な婚約者を探していた。
そこで白羽の矢が立ったのがシリルである。
アイリーンの両親は他家よりも血筋的に近過ぎず遠過ぎずの親戚から婿を取る意向を示しており、シリルはエヴァンス侯爵家の遠縁にあたるマイソン伯爵家の出身だ。
さらにシリルは兄一人弟一人の三兄弟の真ん中で、彼が婿に行くことにマイソン伯爵家にとって何の不都合もなかった。
そのような経緯でアイリーンとシリルの婚約は成立した。
(私という婚約者がありながら、恋人を作って挙句子供まで出来た婚約者なんてこちらから願い下げですわ。シリル様の有責ということで体よくお別れ出来そうですわね。お父様も最近のシリル様のご様子から見切りをつけていらしたからこちらとしては願ったり叶ったりな状況になりましたわ)
「私とシリル様の婚約はシリル様とエイダ様の間に子が出来たということもありますし、私は婚約解消ということで構いませんわ。お父様とあなたのご実家のマイソン伯爵家の皆様にはあなたの有責で婚約を解消することにしたと伝えておきます。マイソン伯爵家とバーク男爵家には慰謝料の請求はさせて頂きますので悪しからず」
アイリーンの言葉に、シリルとエイダは手を叩いて喜びを分かち合っている。
「わかった。エイダとのことを認めてくれてありがとう、アイリーン!」
「ありがとうございます! 私はアイリーン様がシリル様を手放してくれないかと思って不安だったの!」
「用件がこれだけならば二人ともお帰り下さい。婚約解消に伴う諸々の後処理は後日きちんとやりますので」
アイリーンは用事は済んだとばかりにエヴァンス侯爵家にとって無関係な客人二人を追い返すことにしたが、二人は驚きの言葉を告げる。
「何を言っているんだ、アイリーン。俺達二人は今日からここで暮らすんだ。出で行くのはアイリーン、お前の方だ!」
「そうですわ。私がアイリーン様の代わりに侯爵夫人としてこの家を盛り立てていくのです。この子はエヴァンス侯爵家の跡取りですわ」
(え!? 二人は何を仰っているのかしら? 私を追い出して恋人との子を我が家の跡取りにする? エヴァンス侯爵家は私の家ですわよ? 冗談も大概にして下さいませ)
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