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第12話
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「あら、誰かと思えば元婚約者様じゃない。あなたみたいな人がよく恥ずかしげもなくこのようなパーティーに参加出来ますわね。もしかして一人で参加かしら?」
ユージェニー王女殿下はアドリアンに婚約破棄を突き付けた時と同じくクレメントを連れている。
「ユージェニー王女殿下。私とあなたはもう婚約破棄したから無関係ですよね? わざわざ来ないでくれませんか」
「一人で参加している癖に仮装なんてしちゃっているあなたを笑いに来たのよ。しかもやたら本格的な仮装で可笑しいわ。わたくし達は仮装も完璧だけど? ね、クレメント?」
「そうだね、ユージェニー。君が一番素敵だよ」
ユージェニー王女殿下とクレメントは妖精の仮装をしている。
王女殿下は薄くて軽い生地でできたふんわりしたピンクのドレスを着用し、クレメントの方は薄手の生地のシャツとスラックスを着用して緑のスカーフを首元に飾っている。
花の妖精と風の妖精といったところだろう。
「私は一人で参加していませんよ。婚約者と参加していますが、王女殿下の目は節穴ですか?」
「あなたの婚約者なんてどこにいるのよ? 地味眼鏡の血筋と成績しか取り柄のないあなたに婚約を申し込む令嬢なんていないでしょう? もしいるとしたら余程の変わり者ね。あなたこそ自分に婚約者がいるなんて妄想しているのではないかしら?」
「ユージェニー王女殿下。お話に割り込んですみません。私はフローレンス・アンベールと申します。アドリアン様と生徒会活動をしております」
「生徒会所属の才媛のフローレンス様ですね。婚約者がいないから、婚約者がいない者同士アドリアンと参加されているのでしょう? 可哀想に。気の毒ね」
「いいえ、違いますわ。私はアドリアン様の婚約者ですわよ」
「あなた見る目は大丈夫? それともこんな地味眼鏡をわざわざ婚約者にしなければならないほど切羽詰まっているのかしら?」
「ユージェニー王女殿下こそ見た目にばかりこだわってその人の本質を見落としているのではなくて?」
フローレンスはアドリアンをこき下ろして侮辱するユージェニー王女殿下に対して怒っていた。
確かに外見はその人を構成する要素の一つだが、外見が全てではない。
だから外見にばかり囚われて、その人の中身をろくに見ようともしないのは愚か者がすることだ。
現にユージェニー王女殿下が連れているクレメントは見た目こそ良いが黒い噂が絶えないグラミリアン男爵家の長男だということはフローレンスも把握している。
外見は地味でも品性高潔なアドリアンと外見は良くても中身が怪しいクレメント。
どちらが良いかなんて考えるまでもないだろう。
「クレメントのことを言ってるのかしら? 王女のわたくしが間違っているなんてそんなことあり得ないわ。現にお父様だってアドリアンと婚約破棄してクレメントと新たに婚約することに何も言わず承諾して下さいましたわ」
「そうなのですわね。その婚約、国王陛下が祝福して認めていると本気で思っていらっしゃるならば、王女殿下は本当におめでたいですわ。そう思いますわよね、アドリアン様?」
「そうですね。私もフローレンス嬢と同じくそう思いますよ。陛下はユージェニー王女殿下のことはもう廃嫡する予定でいらっしゃるのかもしれません。好きにして良い代わり、王家には関係ないこととして関わらないで欲しいということだと思いますよ」
フローレンスとアドリアンの言葉にユージェニー王女殿下は激高した。
「そんな訳ないわ! お父様はわたくしを廃嫡なんてする訳がないのよ! 勝手なことを言わないで頂戴。不愉快よ!!」
そしてフローレンスに目掛けて手に持っていた葡萄ジュースがたっぷりと入ったグラスを思い切り振りかざす。
バシャッと勢いよくフローレンスに葡萄ジュースがかかりそうなところを寸前でアドリアンがフローレンスの前に庇うようにして立ち、アドリアンは葡萄ジュースを頭から浴びた。
ユージェニー王女殿下はアドリアンに婚約破棄を突き付けた時と同じくクレメントを連れている。
「ユージェニー王女殿下。私とあなたはもう婚約破棄したから無関係ですよね? わざわざ来ないでくれませんか」
「一人で参加している癖に仮装なんてしちゃっているあなたを笑いに来たのよ。しかもやたら本格的な仮装で可笑しいわ。わたくし達は仮装も完璧だけど? ね、クレメント?」
「そうだね、ユージェニー。君が一番素敵だよ」
ユージェニー王女殿下とクレメントは妖精の仮装をしている。
王女殿下は薄くて軽い生地でできたふんわりしたピンクのドレスを着用し、クレメントの方は薄手の生地のシャツとスラックスを着用して緑のスカーフを首元に飾っている。
花の妖精と風の妖精といったところだろう。
「私は一人で参加していませんよ。婚約者と参加していますが、王女殿下の目は節穴ですか?」
「あなたの婚約者なんてどこにいるのよ? 地味眼鏡の血筋と成績しか取り柄のないあなたに婚約を申し込む令嬢なんていないでしょう? もしいるとしたら余程の変わり者ね。あなたこそ自分に婚約者がいるなんて妄想しているのではないかしら?」
「ユージェニー王女殿下。お話に割り込んですみません。私はフローレンス・アンベールと申します。アドリアン様と生徒会活動をしております」
「生徒会所属の才媛のフローレンス様ですね。婚約者がいないから、婚約者がいない者同士アドリアンと参加されているのでしょう? 可哀想に。気の毒ね」
「いいえ、違いますわ。私はアドリアン様の婚約者ですわよ」
「あなた見る目は大丈夫? それともこんな地味眼鏡をわざわざ婚約者にしなければならないほど切羽詰まっているのかしら?」
「ユージェニー王女殿下こそ見た目にばかりこだわってその人の本質を見落としているのではなくて?」
フローレンスはアドリアンをこき下ろして侮辱するユージェニー王女殿下に対して怒っていた。
確かに外見はその人を構成する要素の一つだが、外見が全てではない。
だから外見にばかり囚われて、その人の中身をろくに見ようともしないのは愚か者がすることだ。
現にユージェニー王女殿下が連れているクレメントは見た目こそ良いが黒い噂が絶えないグラミリアン男爵家の長男だということはフローレンスも把握している。
外見は地味でも品性高潔なアドリアンと外見は良くても中身が怪しいクレメント。
どちらが良いかなんて考えるまでもないだろう。
「クレメントのことを言ってるのかしら? 王女のわたくしが間違っているなんてそんなことあり得ないわ。現にお父様だってアドリアンと婚約破棄してクレメントと新たに婚約することに何も言わず承諾して下さいましたわ」
「そうなのですわね。その婚約、国王陛下が祝福して認めていると本気で思っていらっしゃるならば、王女殿下は本当におめでたいですわ。そう思いますわよね、アドリアン様?」
「そうですね。私もフローレンス嬢と同じくそう思いますよ。陛下はユージェニー王女殿下のことはもう廃嫡する予定でいらっしゃるのかもしれません。好きにして良い代わり、王家には関係ないこととして関わらないで欲しいということだと思いますよ」
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そしてフローレンスに目掛けて手に持っていた葡萄ジュースがたっぷりと入ったグラスを思い切り振りかざす。
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