映画感想 九月

犬束

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ルートヴィヒ 完全復元版

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ヘルムート+ロミー<シルヴァーナ



 上映時間の240分は長いか、短いか。映画館で観るなら長く、18歳で即位してから、40歳で謎の死を遂げるまでを描くならば、短いともいえる。
 ロケは極寒のドイツで行われたそうですが、本物のお城で撮影されたのでしょうか。手元の書籍でも、検索しても(検索の仕方が下手)具体的には分かりませんでした。どちらにせよ、歴史劇はコスチュームプレイと呼ばれますけれど、貴族のヴィスコンティにとっては実家がお城、コスチュームところか私服だったんですよね。
 映画も残り三分の一辺りから、俄然盛り上がる、と言うか、好みの展開になってくる。もう、執務とかに気を回さなくなって、理想のお城を建て、美形の男の使用人や俳優ばかりを集め、自分の夢の中だけに嵌まり込み、生きて行くようになるんですよ。狂気の王と呼ばれる所以ながら、現代の医学でも、いわゆる「狂人」と診断されるのか知ら。大幅に逸脱していたとしても。
 お気に入りの俳優をお城に呼びつけ、白鳥のボートでお迎えに行き、大好きな場面を演じさせる。演じさせつづける。そんな王はとても楽しそうで、とても幼児っぽい。仕草も物言いも大仰で、芝居がかっている。実生活をオペラ化。撮影はドイツ語だったのに、イタリア語に吹き替えされたから? ドイツ語版も観てみたいです、機会があれば。
 記憶力も理解力もアレなので、映画も本も、何回か眼を通さないと全体像も掴めなかったりするので、この作品も鑑賞は二度目。
 初回の折に印象に残っているのは、虫歯を表現するためか、お歯黒を塗っていて、口の中が真っ黒で怖かったことぐらい。お城の豪華な内装も、衣装も忘れ去ってましたわ。
 今回のベストは、シルヴァーナ・マンガーノの存在感と美しさ。神。特に最初に登場する台詞のないシーン。あの、言葉を抑えた表情、手の動き。たまらん。神。ヘルムート・バーガーやロミー・シュナイダーの美貌もかなわない。
 美しいと言えば、ルートヴィヒ2世の弟、やはり発狂するオットー親王役のジョン・モルダー・ブラウンも、オーストリア皇后エリザベートの妹で、王が求婚するゾフィーを演じたソニア・ペトローヴァも、見惚れるほどの美形でした。
 つまり、ルードヴィヒは、お城=映画の、ヴィスコンティ自信でもあったのだろうか。

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