68 / 475
第2章 新生活スタート
32
しおりを挟む「ヨハン、あの……。僕はパパやママ。グレン兄さんに迷惑をかけているのではないでしょうか……。こんなすぐに倒れちゃう僕なんて……」
「ルカ様。何をおっしゃいます! ルカ様は迷惑などかけてませんよ? ルカ様は良い子でらっしゃいます!」
「そうですよ! ルカ様はこの家のアイドルですからね!」
いやいや、ミリアム。アイドルはやめなさいよ、アイドルは……。
ヨハンが「失礼致します」と言うとそのまま抱っこしてくれて小さな声で「たぶん迷惑をかけてるのはこちらでしょう」と言った。
だから「僕は本当にここの家の子になってよかったって思います」と小声で言うとヨハンと目が合い、小さく笑った。
「あら、ルカちゃん! 今日は具合はどうかしら? こちらに来ると言うことは少しは良くなった?」
ママに出迎えられてヨハンに思わずギュッと抱きつくと後からやって来たパパと目があった。
「サラ、ルカは少し熱が上がったみたいでね……。本来ならばベッドに戻してあげたいんだけど、いつも部屋で一人ぼっちだしそれはやはり可哀想だろう?」
「そう……そうね! お熱が出てからずっと一人は寂しいわね! モニカ、ミリアム。暖炉の前に毛皮を敷いてちょうだいな! クッションもよ! 暖炉の前に座ってお話しすることにするわっ! ローラはルカちゃんのために毛布を用意してちょうだい!」
そう言うとてきぱきと暖炉の前に団欒コーナーが出来上がり、俺は何故かママの膝枕で寝かせられました。
そして知ったのだ。
これは本来グレン兄さんにしたかったことなのだと!
俺に関しては完全なるとばっちりであるとっ!
本来貴族と言うのは生まれてから普通は乳母に育てられるものらしい。
成人を迎えるまで乳母が子の面倒を見るのが一般的なのだそうだ。
親は子の方向性を決めるだけ。
これはヨハンも兄の手紙にも書いてあったが特権階級の慣例らしい。
しかしこのウォルター家はグレン兄さん一人のみ。
他の家はと言うと何が起きてもいいようにスペアを作るのは当たり前なのだそうだ。
グレン兄さんが幼い頃はパパたちも下の子をと思っていたらしいがとある様々な理由から一人っ子として育てることを決意したらしい。
しかも慣例を破ってまで子に関わる機会を増やしたのだとか……。
つまるところ、コレは今までやりたくてやりたくて仕方がなかった事がグレたらしいグレン兄さんには出来ず、燻っていた思いが新たな息子の俺で昇華と言うか成就させているらしい。
俺がママの膝枕でスヤスヤと寝落ちした頃、グレン兄さんが仕事から帰ってきたらしく、ミリアムが言うには俺たち三人の姿を見てなんとも言えない顔をしていたそうだ。
羨ましいのか、呆れているのか、はたまた嬉しいのか逆なのか……。
とにかく形容しがたい複雑そうな面持ちだったらしい。
「ただいま帰りました。ルカは寝てしまいましたか……」
「ぐっすり眠ってしまったみたいね……。可愛いわ? そうだ、グレンにもしてあげましょうか? 膝枕……」
寝ている俺に毛布を掛けてパパがお膝抱っこしてくれたらしく、空いた膝をママが早くしろと急かすようにポンポン叩くとグレン兄さんは思いきり困った顔をしていたらしい。
なにそれ、俺も見たかった!
パパにも急かされるように言われて、仕方なく寝転ぶとパパとママは笑顔で、グレン兄さんは真っ赤な顔を隠すように両手で顔を覆い、ママは優しく頭を撫でていたそうな……。
パパは俺の頭を優しく撫でて、背中をポンポンしていたらしい。
え、なにそれ、俺も見たかったっ!!
お陰でミリアムいわくその日のパパとママのラブラブ度は最高潮で、ソレに一役買ってしまったグレン兄さんは終止恥ずかしそうだったのだとか……。
しつこいけど俺も見たかったっ!!
恥ずかしがりながらも膝枕を堪能するって可愛いじゃんかぁ!
あー、仲間はずれみたいでなんかやだなぁ……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,527
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる