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第一章 そこは竜の都
十八話
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人間の世界は、魔法なんて殆ど無くて。
「そもそも回復とかの概念が無いんです、魔法や魔力に。調べるので、あるという事だけは確かなんですけど。私もそれで、平均的なものだったらしいですし」
魔法を使うとは、奇跡を起こすに等しい行為。
「竜の皆さんの魔力が多いというのは、私達には有名な話で。それでも陛下のお使いになるものと同じくらいかな、と思ってたんですけど。もっと明確な程に差があるみたいです」
壁のクローゼットが開かなかったのも、そのせいかも知れない。アイリスはふと思い出した。
「だから平均の私の魔力量も、皆さんからすると殆ど感じられない程になるんだと思います。道具が感知する最低値を下回るくらいに……でもそれだと、これから沢山の障害に阻まれそうですね……」
何もかもが魔力とその魔法で構成されるなら。
「今もそれで、扉を開けられませんでしたし……」
どうするか、とアイリスは扉を見つめる。
「……待って。本当に? そんなに言うほど少ないの?」
空いてる方の手を額にやり、ブランゼンが問いかける。
「……ブランゼンさんが見せてくれた光の……魔力の塊なんですが」
アイリスは少し遠くを見るように、思い出しながら話す。
「あれは、国王陛下の奇跡の魔法と同じものです。多分」
「え?!」
「遠くからしか拝見した事がないので、完全に一致するとは言えないんですが……あの輝きはとてもよく似ていました。陛下は両手を使っていらっしゃいましたけど」
「それが、人の使う最大級の魔法か」
ヘイルは顎に手を当て、興味深げに言った。
「最大……かは分かりませんが奇跡なので、私達にとってはとても偉大で有り難くて……」
アイリスは顔に力を入れ、うーんと唸りながら身体を曲げた。
「……ヘイル、測定器は?」
「今は持っていない。今の話じゃ、あった所で数値が出るかも分からんな」
「……」
ブランゼンの手が外れ、アイリスは腕を組んで考える。
(何か……魔力の底上げや増幅をさせる何か……底上げ?)
「あ!」
アイリスの顔がぱっと華やぐ。
「ブランゼンさん! あの、足を治して頂いた時『魔力の底上げ』って仰ってましたよね」
「え? ええ」
「似たような事が行える道具ってありませんか?」
ブランゼンは目を見張った後、言い難そうに口を開いた。
「アイリス。自分の魔力を増幅させるのは時間がかかるし、場合によってはとても危険を伴うものよ。一歩間違えるとそのまま死んでしまう」
死んでしまう。言葉が耳に入って、アイリスの動きが止まる。
「それと長期で外からもらう場合もね、相性が良くないと毒になるの。こちらも最悪の結末は同じ」
「……そう、なんですか」
身の内にあるものはそんなに難しいものだったのかと、アイリスは胸に手を当てる。
「相性の良い相手を探すのは有りでしょうけど……その場合まずアイリスの魔力の質をどうにかして……」
「アイリス、ちょっと手を出してくれ」
ブランゼンの呟きの横から、ヘイルが手を差し出した。
「? はい」
アイリスは別の方法はないかと考えながら、出された手に自分の手を重ねる。
「…………ん?」
包み込まれそうなほど大きな手。その感触を認識してから、思考が目の前に向いた。
「ヘイル?」
訝しげなブランゼンの声音に、ヘイルは笑って返す。
「相性だけなら、俺が適任だな」
「えっ」
「はっ?」
「そもそも回復とかの概念が無いんです、魔法や魔力に。調べるので、あるという事だけは確かなんですけど。私もそれで、平均的なものだったらしいですし」
魔法を使うとは、奇跡を起こすに等しい行為。
「竜の皆さんの魔力が多いというのは、私達には有名な話で。それでも陛下のお使いになるものと同じくらいかな、と思ってたんですけど。もっと明確な程に差があるみたいです」
壁のクローゼットが開かなかったのも、そのせいかも知れない。アイリスはふと思い出した。
「だから平均の私の魔力量も、皆さんからすると殆ど感じられない程になるんだと思います。道具が感知する最低値を下回るくらいに……でもそれだと、これから沢山の障害に阻まれそうですね……」
何もかもが魔力とその魔法で構成されるなら。
「今もそれで、扉を開けられませんでしたし……」
どうするか、とアイリスは扉を見つめる。
「……待って。本当に? そんなに言うほど少ないの?」
空いてる方の手を額にやり、ブランゼンが問いかける。
「……ブランゼンさんが見せてくれた光の……魔力の塊なんですが」
アイリスは少し遠くを見るように、思い出しながら話す。
「あれは、国王陛下の奇跡の魔法と同じものです。多分」
「え?!」
「遠くからしか拝見した事がないので、完全に一致するとは言えないんですが……あの輝きはとてもよく似ていました。陛下は両手を使っていらっしゃいましたけど」
「それが、人の使う最大級の魔法か」
ヘイルは顎に手を当て、興味深げに言った。
「最大……かは分かりませんが奇跡なので、私達にとってはとても偉大で有り難くて……」
アイリスは顔に力を入れ、うーんと唸りながら身体を曲げた。
「……ヘイル、測定器は?」
「今は持っていない。今の話じゃ、あった所で数値が出るかも分からんな」
「……」
ブランゼンの手が外れ、アイリスは腕を組んで考える。
(何か……魔力の底上げや増幅をさせる何か……底上げ?)
「あ!」
アイリスの顔がぱっと華やぐ。
「ブランゼンさん! あの、足を治して頂いた時『魔力の底上げ』って仰ってましたよね」
「え? ええ」
「似たような事が行える道具ってありませんか?」
ブランゼンは目を見張った後、言い難そうに口を開いた。
「アイリス。自分の魔力を増幅させるのは時間がかかるし、場合によってはとても危険を伴うものよ。一歩間違えるとそのまま死んでしまう」
死んでしまう。言葉が耳に入って、アイリスの動きが止まる。
「それと長期で外からもらう場合もね、相性が良くないと毒になるの。こちらも最悪の結末は同じ」
「……そう、なんですか」
身の内にあるものはそんなに難しいものだったのかと、アイリスは胸に手を当てる。
「相性の良い相手を探すのは有りでしょうけど……その場合まずアイリスの魔力の質をどうにかして……」
「アイリス、ちょっと手を出してくれ」
ブランゼンの呟きの横から、ヘイルが手を差し出した。
「? はい」
アイリスは別の方法はないかと考えながら、出された手に自分の手を重ねる。
「…………ん?」
包み込まれそうなほど大きな手。その感触を認識してから、思考が目の前に向いた。
「ヘイル?」
訝しげなブランゼンの声音に、ヘイルは笑って返す。
「相性だけなら、俺が適任だな」
「えっ」
「はっ?」
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