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chapter1

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「お前は誰だ?」

突然現れた男に問われた俺は、困惑した。

「え? 俺は……」

俺は自分の名前を言おうとしたが、口から出てきたのは別の名前だった。

「アルフレッド・フォン・ローゼンベルクだ」

「アルフレッド……?」

男は俺の顔を見つめて首をかしげた。

「お前がアルフレッドだと? 冗談じゃない! お前はアルフレッドという名前に値しない!」

男は怒鳴りながら俺に詰め寄ってきた。

「何言ってんだよ! お前こそ誰だ!」

俺は反射的に男を突き飛ばした。

すると、男はバランスを崩して後ろに倒れ込んだ。

その瞬間、周りから驚きの声が上がった。

「アルフレッド様が王子様を……!」

「なんてことを……!」

「これは大変だ……!」

俺は周りを見回した。

すると、自分が今いる場所が学園祭であることに気づいた。

そして、自分が今やったことがどれほど重大なことであるかも。

俺は王子様を突き飛ばしたのだ。

王子様というのは、この国の第一王子であり、この学園の生徒会長でもある人物だ。

彼は容姿端麗で才能豊かで、国民からも生徒からも絶大な人気を誇っている。

そして、彼はこのライトノベルの主人公でもある。

そう、俺は好きなライトノベルの世界に転生してしまったのだ。

しかも、俺が転生したのは、その作品の主人公ではなく、悪役令嬢の婚約者である貴族の息子だった。

悪役令嬢というのは、主人公と恋に落ちた王子様を奪おうとして、最後には追放される役どころだ。

俺はそんな彼女に一目惚れしてしまった。

彼女は本当は優しくて可愛くて、悪いことをしたくないのに、周りの期待や圧力に押されてしまっているだけなのだ。

俺は彼女の運命を変えるために、主人公や王子様と対立しながらも、彼女に寄り添っていくことを決めた。

しかし、それがどれほど困難なことか、俺はまだ知らなかった。

「アルフレッド……」

王子様が立ち上がりながら俺を睨んだ。

「お前は何を考えているんだ? お前はこの学園の名門貴族であり、私の親友であり、そしてエリザベス・フォン・ハイネの婚約者だぞ」

エリザベス・フォン・ハイネというのが、俺が惚れた悪役令嬢の名前だ。

彼女は金髪碧眼でスタイル抜群で、学園でもトップクラスの美少女だ。

しかし、彼女は王子様に執着しており、主人公である転校生の少女を敵視している。

そのせいで、彼女は周りから嫌われており、最終的には王子様に婚約破棄されて国外追放される運命にある。

「私はエリザベスと幸せになりたいんだ」

俺は王子様に真っ直ぐに答えた。

「そんなことを言っても無駄だ。エリザベスは私にしか興味がない。お前はただ彼女を不幸にするだけだ」

王子様は冷たく言った。

「それは違う。エリザベスはお前に想いを寄せているように見えるかもしれないが、それは本当の気持ちではない。彼女はただ自分が求められていると思っているだけだ。本当はお前なんか好きじゃないんだ」

俺は反論した。

「何? お前はエリザベスの気持ちを知っているとでも言うのか? 笑わせるな。お前はエリザベスに対して何もしてやれていないじゃないか。お前はただ彼女を飾り物にしているだけだ」

王子様は俺の言葉に激怒した。

「お前は何を言っているんだ! 私はエリザベスを愛している! 私は彼女に全てを与えてやった! お前には分からないだろうが、私は彼女のためにどれだけ苦労してきたか!」

王子様は自分の胸を叩いて言った。





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