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第一章 追放と告白
第5話 新しい剣を手に入れる
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「ヤッ!」
僕はなまくらな剣を振り下ろし、やっとのことで新たなスライムを一体倒した。
すかさず自分のステータスを見る。
───────────────
冒険者マルコス LV2
【攻撃力】 3
【魔力】 0
【体力】 5
【スキル】 レベル2
【スキルランク】 S
【スキル能力】
・体を輝かせる
・回避
───────────────
ダメだ。
スライム一体倒したくらいでは何も変わらない。レベルなんて上がりっこない。
しかも、こんななまくら剣じゃ、スライムを倒すにも一苦労だ。
これでは、いつまでたってもレベルアップなど望めない。
そう思った僕は、地面から魔石を一つ拾い上げ、その足で道具屋へと向かった。
僕には大きな目標があった。
ボスキャラを一人で倒せるような冒険者になること。
それが今の目標だ。
そうすれば……。
そんな冒険者になれば、病気の母にもっと良い薬を買ってあげられる。
それに……。
マチルダさんはこう言った。
「あなたがダンジョンのボスキャラを倒すような剣士になったら、お付き合いを考えるわ」と。
マチルダさんの気が変わらないうちに早くレベルアップしてボスキャラを倒さなければ。
僕が、僕が、あのマチルダさんを幸せにするんだ。
頭の中が妄想でいっぱいになってくる。
マチルダさんと二人で手をつないで歩きたい。
二人だけで笑って話をしたい。
そして、もう一度、ちゃんとしたキスをしたい。
そのためには。
そう、そのためにはこんななまくらな剣ではダメだ。
それが、僕のたどり着いた答えだった。
スライムの森から15分ほど歩くと、町の道具屋に到着した。
ここの店主は、スライム一匹も倒せない僕に無料で今の剣をゆずってくれた人だ。
相談に乗ってくれるに違いない。
店のカウンターに立つ男に僕は頭を下げた。
「おおっ、マルコスじゃないか! 今日はどうしたんだ?」
威勢のいい店主の声。
僕はその声に押されながら話し出す。
「実は、新しい剣がほしくて……」
「お前はスライムも倒せないんだろ。そんなに良い剣は必要ないぞ」
「それが、倒せるようになったんです。スライムならなんとか倒せるんです」
そう言いながら、僕は持っていた魔石を店主に見せた。
「こ、これは! 本当だ、間違いない、ブルースライムの魔石じゃないか!」
店主の驚いた顔が心地よかった。
「で、もっと強い敵を倒したいので、今よりも良い剣がほしいのです」
「良い剣って、どんなモンスターを倒すつもりなんだ?」
「はい、ダンジョンのボスキャラを一人でも倒せるような剣がほしいのです」
「だ、ダンジョンのボスキャラを、一人で倒す?」
一瞬、店主がポカンとした顔をした。そしてこう続けた。
「バカか! ブルースライムをようやく倒せるようになったお前が、ボスキャラなんか倒せるわけねえだろ。命がいくつあっても足りねえぞ。そんな叶いもしない願望はさっさと捨ててしまうんだな」
店主の言うことはよくわかる。
だいたい、新しいスキル能力の『回避』というものが、どういう能力なのかまだはっきりとはつかめていない。
スライムの攻撃は回避できるのだが、他のモンスターの攻撃もすべて回避できるのだろうか?
もしそうななら、ものすごいチートスキルなのだが、そんなにうまい話があるわけない気もする。
なんたって、僕はまだレベル2なのだ。
F級のスライムに勝つのがやっとのレベルだ。
仮に『回避』が思っている能力と違って、回避できない攻撃もあるのなら、僕は一瞬にしてこの世から消えてしまうことになるだろう。
そんなことになれば……。
病気の母親はどうなるのだ。
それに、落ち込んでいるマチルダさんを僕がなんとか元気づけてあげたいし。
無茶をしてはいけない。
これが僕の答えだった。
一歩一歩確実に登っていき、いつしかボスキャラを一人で倒せる冒険者になるんだ。
スライムの次は……。
「おじさん、スライムの次はゴブリンを倒したいんです。ゴブリンを倒せるような剣をください」
「そうだな……。それならなんとか見繕ってやるか。でも、タダでってわけにはいかないぞ。ハガネの剣、2000ルピアでどうだ」
2000ルピア……。
そんな大金、持ち合わせていない。
僕の思いを察したのだろう。店主はこう言った。
「代金は出世払いでいい。ゴブリンの魔石を10個も売ればなんとかなるだろう。何年かかってもかまわねえから、しっかりと稼げるような冒険者になったら払ってくれ」
ありがたい。
やはりここの店主は最高だ。
最後に店主はこう言って僕を送り出した。
「マルコス、命は粗末にするなよ。あわてず少しずつレベルアップすればいいんだからな」
「はい、いきなりダンジョンの奥に行くなんて無謀なことはしませんので安心してください」
僕はそう言って道具屋を後にした。
帰り道、僕は新しく手にしたハガネの剣をさっそく腰に備えた。
今までのなまくら剣とは全く別物だ。
なんとも言えない迫力がある。
モンスターを倒すための力がみなぎっている。
この剣を見ていると、さっそくその能力を試したくなった。居ても立っても居られなくなってきた。
ほんの少しだけゴブリンとたたかってみよう。
ダンジョンの奥まで行かずに、入り口付近でとどまればいい。
そう思った僕は、ゴブリン山にあるダンジョンへと足を向けた。
いきなり奥にさえ入らなければいいんだ。
もう一度僕は、そう自分に言い聞かせた。
僕はなまくらな剣を振り下ろし、やっとのことで新たなスライムを一体倒した。
すかさず自分のステータスを見る。
───────────────
冒険者マルコス LV2
【攻撃力】 3
【魔力】 0
【体力】 5
【スキル】 レベル2
【スキルランク】 S
【スキル能力】
・体を輝かせる
・回避
───────────────
ダメだ。
スライム一体倒したくらいでは何も変わらない。レベルなんて上がりっこない。
しかも、こんななまくら剣じゃ、スライムを倒すにも一苦労だ。
これでは、いつまでたってもレベルアップなど望めない。
そう思った僕は、地面から魔石を一つ拾い上げ、その足で道具屋へと向かった。
僕には大きな目標があった。
ボスキャラを一人で倒せるような冒険者になること。
それが今の目標だ。
そうすれば……。
そんな冒険者になれば、病気の母にもっと良い薬を買ってあげられる。
それに……。
マチルダさんはこう言った。
「あなたがダンジョンのボスキャラを倒すような剣士になったら、お付き合いを考えるわ」と。
マチルダさんの気が変わらないうちに早くレベルアップしてボスキャラを倒さなければ。
僕が、僕が、あのマチルダさんを幸せにするんだ。
頭の中が妄想でいっぱいになってくる。
マチルダさんと二人で手をつないで歩きたい。
二人だけで笑って話をしたい。
そして、もう一度、ちゃんとしたキスをしたい。
そのためには。
そう、そのためにはこんななまくらな剣ではダメだ。
それが、僕のたどり着いた答えだった。
スライムの森から15分ほど歩くと、町の道具屋に到着した。
ここの店主は、スライム一匹も倒せない僕に無料で今の剣をゆずってくれた人だ。
相談に乗ってくれるに違いない。
店のカウンターに立つ男に僕は頭を下げた。
「おおっ、マルコスじゃないか! 今日はどうしたんだ?」
威勢のいい店主の声。
僕はその声に押されながら話し出す。
「実は、新しい剣がほしくて……」
「お前はスライムも倒せないんだろ。そんなに良い剣は必要ないぞ」
「それが、倒せるようになったんです。スライムならなんとか倒せるんです」
そう言いながら、僕は持っていた魔石を店主に見せた。
「こ、これは! 本当だ、間違いない、ブルースライムの魔石じゃないか!」
店主の驚いた顔が心地よかった。
「で、もっと強い敵を倒したいので、今よりも良い剣がほしいのです」
「良い剣って、どんなモンスターを倒すつもりなんだ?」
「はい、ダンジョンのボスキャラを一人でも倒せるような剣がほしいのです」
「だ、ダンジョンのボスキャラを、一人で倒す?」
一瞬、店主がポカンとした顔をした。そしてこう続けた。
「バカか! ブルースライムをようやく倒せるようになったお前が、ボスキャラなんか倒せるわけねえだろ。命がいくつあっても足りねえぞ。そんな叶いもしない願望はさっさと捨ててしまうんだな」
店主の言うことはよくわかる。
だいたい、新しいスキル能力の『回避』というものが、どういう能力なのかまだはっきりとはつかめていない。
スライムの攻撃は回避できるのだが、他のモンスターの攻撃もすべて回避できるのだろうか?
もしそうななら、ものすごいチートスキルなのだが、そんなにうまい話があるわけない気もする。
なんたって、僕はまだレベル2なのだ。
F級のスライムに勝つのがやっとのレベルだ。
仮に『回避』が思っている能力と違って、回避できない攻撃もあるのなら、僕は一瞬にしてこの世から消えてしまうことになるだろう。
そんなことになれば……。
病気の母親はどうなるのだ。
それに、落ち込んでいるマチルダさんを僕がなんとか元気づけてあげたいし。
無茶をしてはいけない。
これが僕の答えだった。
一歩一歩確実に登っていき、いつしかボスキャラを一人で倒せる冒険者になるんだ。
スライムの次は……。
「おじさん、スライムの次はゴブリンを倒したいんです。ゴブリンを倒せるような剣をください」
「そうだな……。それならなんとか見繕ってやるか。でも、タダでってわけにはいかないぞ。ハガネの剣、2000ルピアでどうだ」
2000ルピア……。
そんな大金、持ち合わせていない。
僕の思いを察したのだろう。店主はこう言った。
「代金は出世払いでいい。ゴブリンの魔石を10個も売ればなんとかなるだろう。何年かかってもかまわねえから、しっかりと稼げるような冒険者になったら払ってくれ」
ありがたい。
やはりここの店主は最高だ。
最後に店主はこう言って僕を送り出した。
「マルコス、命は粗末にするなよ。あわてず少しずつレベルアップすればいいんだからな」
「はい、いきなりダンジョンの奥に行くなんて無謀なことはしませんので安心してください」
僕はそう言って道具屋を後にした。
帰り道、僕は新しく手にしたハガネの剣をさっそく腰に備えた。
今までのなまくら剣とは全く別物だ。
なんとも言えない迫力がある。
モンスターを倒すための力がみなぎっている。
この剣を見ていると、さっそくその能力を試したくなった。居ても立っても居られなくなってきた。
ほんの少しだけゴブリンとたたかってみよう。
ダンジョンの奥まで行かずに、入り口付近でとどまればいい。
そう思った僕は、ゴブリン山にあるダンジョンへと足を向けた。
いきなり奥にさえ入らなければいいんだ。
もう一度僕は、そう自分に言い聞かせた。
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