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終章
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「先生」
お屋敷に戻ってきて、コハクの後に飼い始めた何代目かの子猫の背を撫でていると、無意識に呟いていた。
「ん?」
「……いえ、なんでもないです」
やっぱりまだ言えない。
そのうえ、呼び方が“先生”から変えられない時点で私のダメさがさらに際立っている。
それなのに、先生が私にくれる愛情は、今も変わらず大きすぎて深すぎる。
それに応えて返すには全然足りないけれど、今まで一緒に過ごしてきて少しずつ膨らんできたこの気持ち。
昔、先生に対して感じていた同情混じりの気持ちとは違う。
時折胸をぎゅっと掴まれるような、けれど、どこか気分を浮き上がらせてくれるような。
いつか顔を見てちゃんと言えるようになったら。
その時はあの女の子のような満面の笑みで言おう。
「貴方のこと、私も愛してます」
と。
((終))
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