210 / 324
■例えばこんなクッキング■オマケ的短編④
誤解です!1
しおりを挟む
「……理人。もしこれ以上ゴネるんなら……私、実家に帰らせてもらうんだからね?」
言ってふいっと寝室に背を向けてリビングの方へ歩き出す。
「待って、葵咲ちゃん!」
ついうっかり、なんだろうけれど……理人が余裕のない時に私を呼び捨てできなくなることは知っている。
それが思わず出てしまうのってかなり動揺してるってことだよね?
そう思うと嬉しくてたまらないのに……。
表向き、今の私は理人に怒ってるから、振り向いてやらないの。
そうしたら、すぐに後ろから包み込むようにギュッて抱きしめられて……正直私、すごくホッとして――。
理人はこうでなくっちゃ、って思ってしまう。
私から誘わないと乗ってこないなんて理人らしくないけど、でも……この感じからすると彼自身かなり我慢して寝室の隅っこに隠れていたんじゃないかなって思ったの。
……何が理人をこんなに躊躇わせていたの?
背中に感じる理人の熱はいつも通りそんなに熱くは感じられないし、私に回された腕が剥き出しなのだって、夏なんだからって考えたら別におかしくはない。
エアコンがきいていない部屋で、こんな風に強く抱きしめられるのは正直暑くてしんどいなって思うけれど、さっきみたいに避けられるよりはよっぽど良いって思ってしまって。
「ね、理人……何をそんなに警戒していたの?」
私を抱きしめている理人の腕にそっと触れながら問いかけたら、「そ、それは……」って戸惑う声。
本当何なの、この歯切れの悪さ。
ギュッと彼の両腕に載せた手に力を込めて、
「隠し事はなしよ?」
振り仰ぐようにして理人を見上げたら……
「バカなことをして……って笑わないでくれる?」
ってまたその話?
これってもう、嘘でも笑わないって言わないとダメなパターンかなあ。
私は小さく吐息を落とすと、「分かった。笑わないよう頑張る」って言って理人の腕をぽんぽんって叩いたの。
セレがニャーンって言いながらそんな私たちの足にまとわりつくようにすり寄ってきて。
「分かった」
と、理人がやっと観念したように私から腕を離してくれて、すぐ背後に立っている気配がしたの。
前に回ってこないってことは、私に振り返って?って言いたいのかな。
それとも少しでも時間稼ぎしようとしてるとか?
私はどんな事態でも笑わないでいられるよう、大きく深呼吸をしてから、ゆっくりと後ろを振り返った。
「――?」
ん? 別におかしくないよ?
私の後ろには、エプロン姿の理人が立っていて、別にこれと言っておかしいところはない気がしたの。
言ってふいっと寝室に背を向けてリビングの方へ歩き出す。
「待って、葵咲ちゃん!」
ついうっかり、なんだろうけれど……理人が余裕のない時に私を呼び捨てできなくなることは知っている。
それが思わず出てしまうのってかなり動揺してるってことだよね?
そう思うと嬉しくてたまらないのに……。
表向き、今の私は理人に怒ってるから、振り向いてやらないの。
そうしたら、すぐに後ろから包み込むようにギュッて抱きしめられて……正直私、すごくホッとして――。
理人はこうでなくっちゃ、って思ってしまう。
私から誘わないと乗ってこないなんて理人らしくないけど、でも……この感じからすると彼自身かなり我慢して寝室の隅っこに隠れていたんじゃないかなって思ったの。
……何が理人をこんなに躊躇わせていたの?
背中に感じる理人の熱はいつも通りそんなに熱くは感じられないし、私に回された腕が剥き出しなのだって、夏なんだからって考えたら別におかしくはない。
エアコンがきいていない部屋で、こんな風に強く抱きしめられるのは正直暑くてしんどいなって思うけれど、さっきみたいに避けられるよりはよっぽど良いって思ってしまって。
「ね、理人……何をそんなに警戒していたの?」
私を抱きしめている理人の腕にそっと触れながら問いかけたら、「そ、それは……」って戸惑う声。
本当何なの、この歯切れの悪さ。
ギュッと彼の両腕に載せた手に力を込めて、
「隠し事はなしよ?」
振り仰ぐようにして理人を見上げたら……
「バカなことをして……って笑わないでくれる?」
ってまたその話?
これってもう、嘘でも笑わないって言わないとダメなパターンかなあ。
私は小さく吐息を落とすと、「分かった。笑わないよう頑張る」って言って理人の腕をぽんぽんって叩いたの。
セレがニャーンって言いながらそんな私たちの足にまとわりつくようにすり寄ってきて。
「分かった」
と、理人がやっと観念したように私から腕を離してくれて、すぐ背後に立っている気配がしたの。
前に回ってこないってことは、私に振り返って?って言いたいのかな。
それとも少しでも時間稼ぎしようとしてるとか?
私はどんな事態でも笑わないでいられるよう、大きく深呼吸をしてから、ゆっくりと後ろを振り返った。
「――?」
ん? 別におかしくないよ?
私の後ろには、エプロン姿の理人が立っていて、別にこれと言っておかしいところはない気がしたの。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
214
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる