不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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いたずら 5

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 ネヴィルは落ち込んでいた。
 ついついヴァレンが可愛くて、暴走してしまったのだ。上役にも怒られ、我に返って自分に呆れもした。

 翌日学校に行き、ヴァレンに謝ろうと思った。しかしヴァレンのいる教室に向かう勇気が出てこない。ため息ばかり漏らしているうちに、休憩時間は過ぎていった。
 とうとう放課後になってしまい、ようやく意を決して、ネヴィルはヴァレンのいる教室に向かった。しかし、そこにヴァレンの姿はなかったのだ。

「ヴァレンなら、急いで帰りましたよ。残念でしたね」

 エアイールに尋ねてみると、小生意気そうな声が返ってきた。
 ネヴィルはがっくりとうなだれる。そこまで避けられるほど、嫌われてしまったのか。

「……どうかしたのですか? 何かあったのですか?」

 様子がおかしいと思ったのか、心配そうにエアイールが声をかけてくる。

「いや……何でもないんだ……」
 無理やり笑みを浮かべて、ネヴィルはその場を素早く立ち去った。
 とぼとぼと一人で帰路に就く。追い打ちをかけるように、冷たい風が肌を突き刺す。もう冬が近づいてきているようだ、とぼんやりネヴィルは思った。

 もともと、ネヴィルはヴァレンに嫌がらせをしてきたのだ。それをヴァレンは許してくれ、仲良くしてくれた。
 それなのに、その優しいヴァレンをネヴィルは裏切ってしまったのだ。
 何という馬鹿なことを仕出かしてしまったのだろう。昨日に戻れるものならば、戻って自分を押し留めたい。いっそ、自らを浴槽の中に沈めてやりたいくらいだ。

 吹き付ける風が、ちくちくとネヴィルの身体と心を苛む。
 身を震わせながらネヴィルは石畳を見つめて歩き続ける。やっと館内に入ったときは、身体こそ暖かさに包まれたものの、心は冷えたままだった。
 しかし、自室に向かおうとしたネヴィルの前に立ちはだかった姿を見て、心臓が跳ね上がりそうになる。あろうことか、ネヴィルを見て笑みすら浮かべてくれたのだ。

「ネヴィル、お帰り」

 ヴァレンの笑顔は、いつもと同じく無邪気で、お日様のようだった。
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