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40.土下座

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 すっかり夜も更けてしまった。
 アデルジェスは相も変わらず部屋の隅で本を読んでいた。わざわざ明かりを運んで部屋の隅で固まる姿は、どう見ても怪しい。

 途中で扉を叩く音がしたときは慌てふためいて、明かりを倒してしまいそうになった。どうにか取り繕うと、食事が運ばれてきた。運んできたのは知らない子供だったが、あの忙しい中ミゼアスが手配してくれたらしい。
 ありがたく頂いたが、やはり一人では少々味気なかった。

 食べ終わると、再び読書に戻った。
 しばらくして何冊かあったその手の本を読み終わると、長椅子に戻った。部屋の隅で縮こまっていたせいか、身体が痛んだ。
 身体を伸ばし、腕や足をさすっていると不意に扉が開く。

「ただいま。遅くなってごめん」

 ミゼアスが戻ってきた。見れば顔は素顔に戻っている。服装は水色の長衣のままだったが、化粧は落としてきたようだった。
 長椅子の上のアデルジェスに、倒れるように被さってくる。

「疲れた……」

 ミゼアスは目を閉じて呟くと、甘えるようにアデルジェスの胸に額をすりよせる。

「お疲れ様……」

 ミゼアスの温もりを感じながら、背中を優しく撫でてやる。腕の中にミゼアスがいると思うと、満たされていく気分だった。

「あいつ……やらせろってしつこくて参った……僕は初会じゃ床入りしないって言っているのに……。僕から誘ったことになっているから、あまりむげにもできないし……大変だったよ……」

 この言葉を聞いた瞬間、満たされようとしていた気持ちが一気に冷え込んだ。
 当然のことではある。ここは娼館だ。自分には何も言う権利などないということもわかっていたが、それでもアデルジェスは心が冷えていくのを感じた。

「それで……どうしたの?」

「ん……仕方ないから……って、何? どうしたの?」

 驚いたようにミゼアスが顔を上げる。
 アデルジェスがミゼアスの長衣の裾をめくり上げ、中に手を這わせ始めたのだ。

「ちょっ……あっ……」

 太ももの内側をかすめるように撫でると、ミゼアスが甘い声を漏らした。

「感じているの? いやらしい身体だね」

「え……きみ、どうしたの……? あっ……ちょっと……や、あぁっ!」

 甘い悲鳴をあげて、ミゼアスが背をのけぞらせる。アデルジェスがミゼアスの中心を握ったのだ。

「どうやって可愛がってもらったの? 俺じゃあ経験がなくて楽しませてあげられないし……教えて?」

「な、何を言っているんだい……ちょっ! そこは!」

 慌てて身をよじろうとするミゼアス。しかしアデルジェスはもう片方の手でしっかりと押さえ込み、逃がさない。
 ミゼアスの秘所に指を這わせ、ゆっくりとえぐるように埋め込もうとする。

「痛っ! やめて! 濡らしてもいないのに無理だよ!」

 甘さなどない純粋な悲鳴にアデルジェスは動きを止める。確かにそこは乾いていた。

「……濡らしてないの?」

「濡らしたのなんて昨日の夜じゃないか。お風呂だって入ったし、とっくに乾いているよ」

 ミゼアスの言葉にアデルジェスの思考が混乱する。何か食い違っているようだ。

「……さっき、してきたんじゃないの?」

「最後まで人の話を聞きなよ。仕方ないから、手で抜いてやったんだって。べたべた触ろうとしてきたけれど、かわしたし」

 その言葉が頭に染みこんでくると、アデルジェスは顔をひきつらせた。勘違いで暴走してしまったのだ。しかも疲れているミゼアスに構うこともなく、身勝手に。
 ミゼアスの秘所から指を離す。抱き上げて長椅子に座らせ、めくった裾も整えてやる。
 それからアデルジェスは床に額をこすりつけるように平伏した。

「申し訳ございませんでした」
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