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第二章

追放されたのは過去のこと

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「実は……」

 私は、第一王子殺害未遂の冤罪をかけられたこと、王族の寛大な処置で死刑から国外追放になったことを話した。

「それで、森を抜けたところでクラウスにお会いしたのです」

 三人は黙って私の話を聞いていたが、一通り話し終えた時の反応は様々だった。

「そんなの酷すぎるわ! 辛い思いをしてきたのね……リディアちゃん、本当に無事で良かった!」

 クリスティーナさんは、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら私の話に耳を傾けてくれた。私のために泣いてくれるなんて、シャーロット様以外ではクリスティーナさんだけだ。

「ありがとうございます。大変でしたけれど、もう終わったことです。それに、こうして皆さんに会えたのですから……」

「そうね、リディアちゃんとクラウスが森で出会わなかったらクラウスは今頃……。 リディアちゃん、これからは私たちが貴女の味方になるわ! 何かあったらすぐに言ってちょうだいね」

「クリスティーナさん……そんな風に言っていただけて嬉しいです」

 クリスティーナさんは私の両手をぎゅっと握りしめて、しばらく離さなかった。
 
 一方、ヘルマンさんは少し考えこんでいるようだった。

「なにか陰謀のようなものを感じるな……。事件から処刑判決までの流れがスムーズすぎる。おそらくだが、リディアさんは権力争いにでも巻き込まれたのだろう。聖女と言っても後ろ盾がないのなら利用しやすい……。苦労したね。もう聖女だった頃のことは忘れて、自由に生きると良い。君はその権利を得たんだ」

 ヘルマンさんは宰相をしていると言っていたし、争いごとの流れをよく分かっているのだろう。
 私も偶然にしては出来すぎているとは思っていた。きっと最初から仕組まれていたのだろう。今となっては確かめようもないけれど。

 クラウスは一言も発しなかったが、私のために怒ってくれているのを感じた。テーブルの上に乗せられた彼のこぶしがぶるぶると震えていたからだ。

「クラウス、そのこぶしを緩めてください。貴方がそこまで怒ってくださるのは嬉しいですが、手が痛くなってしまいますよ」

「え? あぁ……無意識だった。それにしても許せない。君はもっと怒るべだ! 復讐するなら手を貸そう」

「あまり物騒なことをおっしゃらないで」

 反応は三者三様だけれど、三人とも私のこれからのことを案じてくださっている。そのことが私の張りつめた気持ちを解してくれた。
 ルーファス様が倒れた日からずっと、緊張や恐怖でピリピリとしていた気持ちがすっと消えていった。

(この方たちに出会えて本当に良かった……王国を出て、最初に出会ったのがクラウスで良かった)

 



 話も色々聞けたし、そろそろお暇するとしよう。ここは居心地が良いから長居しすぎた。

「お話も出来ましたし、私はこれで……。お世話になったご恩は忘れません。ありがとうございました」

 挨拶をして屋敷を出ようとすると、クラウスに腕を掴まれた。

「どうかなさったのですか? まだお話が?」

 クラウスが驚きの提案をしてきた。

「ねえ、リディア。ここで僕達と暮らさないかい?」
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