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四話
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少し煽り過ぎたと後悔をして、目をギュッと瞑る。しかし、いつまで経ってもマークは殴ってこなかった。恐る恐る目を開けると、コリンが剣を抜き、マークを止めてくれていた。
「この期に及んで見苦しいぞ、マーク。元婚約者に殴りかかろうとするなんて」
「黙れコリン、これは僕とレイチェルの問題だ!」
コリンため息をつくと剣を収め、素手でマークを地面に押さえつけた。流れるような動作に、マークは抵抗することが出来ないようだった。コリンは少し悲しそうな顔をしており、それを見ていると胸が痛んだ。長い間、共に騎士団を取り纏めていた情があるのだろう。
「コリン、ありがとうございます。もう大丈夫ですので離してあげてください」
コリンが手を離すとマークはよろよろと立ち上がり、こちらを睨みつけ、馬鹿にするように笑った。
「僕がマリアと結婚するのが憎いんだろう?だからこんな卑怯な真似を……!」
マリア?そういえばお相手の名前も聞いていなかったわ。そのマリアさんはマークの国外追放についていくのかしら……。そんな事をぼんやり考えていると、可愛らしい少女が騎士団の方と一緒にこちらに向かってきた。あの方は確かコリンの部下だわ。
「団長、マリアを連れてきました」
騎士団の方がそう言うと、少女はおずおずとコリンに挨拶した。
「雑用係のマリアです……あの、何か御用でしょうか」
「騎士団団長のコリンだ。急に呼び出してすまない。確かめたいことがあってな」
コリンが言い終わらないうちに、マークが割って入ってきた。
「マリア、マリア!!僕と一緒に来てくれるだろう?」
「ひっ……ど、どちら様ですか?」
狂ったように言うマークが恐ろしかったようで、マリアは小さな悲鳴を上げた。マリアを守るようにコリンがマークの前に立ちはだかる。
「マーク、分かっただろう?この子はお前のことなんか名前も覚えちゃいないんだ」
コリンが諭すように言うと、マークは崩れ落ちた。
「そんな……僕に笑いかけてくれたじゃないか……」
どうやらマークは、マリアという少女に一目ぼれしていただけだった。幼い頃からレイチェル以外の異性と接したことがなく、成人してからも男ばかりの騎士団に所属していた彼は、笑いかけられただけで勘違いしてしまうような性格になっていたらしい。……なんて馬鹿らしい。マリアが可哀想だわ。
「いたぞ!捕まえろ!」
「早く国外に連れて行け!」
騒ぎを聞きつけた兵士達がマークをとらえ、ようやく騒ぎは収まった。
「君には本当に迷惑をかけてしまったね。すまない」
申し訳なさそうに頭を下げるコリンを見ていると、こちらの方が申し訳なくなってしまう。気にしないでと言っても気にしてしまうのだろう。だから私は手を組み、祈りを捧げた。オレンジ色の光が騎士団本部を包み込む。
「騎士団本部に守護の祈りを込めました。あのような事が二度と起きないように、私も協力するわ」
そう言うと、コリンはようやく微笑んだ。
「ありがとう、今度はこちらがお礼に伺うよ」
「じゃあその時お茶でも」
なんだかコリンがいつも以上に素敵に見えて、お茶に誘ってしまった。もう婚約者もいないし、新しいトキメキがあっても良いわよね。
ちらりとコリンを見ると少し顔が赤くなっていた。
「この期に及んで見苦しいぞ、マーク。元婚約者に殴りかかろうとするなんて」
「黙れコリン、これは僕とレイチェルの問題だ!」
コリンため息をつくと剣を収め、素手でマークを地面に押さえつけた。流れるような動作に、マークは抵抗することが出来ないようだった。コリンは少し悲しそうな顔をしており、それを見ていると胸が痛んだ。長い間、共に騎士団を取り纏めていた情があるのだろう。
「コリン、ありがとうございます。もう大丈夫ですので離してあげてください」
コリンが手を離すとマークはよろよろと立ち上がり、こちらを睨みつけ、馬鹿にするように笑った。
「僕がマリアと結婚するのが憎いんだろう?だからこんな卑怯な真似を……!」
マリア?そういえばお相手の名前も聞いていなかったわ。そのマリアさんはマークの国外追放についていくのかしら……。そんな事をぼんやり考えていると、可愛らしい少女が騎士団の方と一緒にこちらに向かってきた。あの方は確かコリンの部下だわ。
「団長、マリアを連れてきました」
騎士団の方がそう言うと、少女はおずおずとコリンに挨拶した。
「雑用係のマリアです……あの、何か御用でしょうか」
「騎士団団長のコリンだ。急に呼び出してすまない。確かめたいことがあってな」
コリンが言い終わらないうちに、マークが割って入ってきた。
「マリア、マリア!!僕と一緒に来てくれるだろう?」
「ひっ……ど、どちら様ですか?」
狂ったように言うマークが恐ろしかったようで、マリアは小さな悲鳴を上げた。マリアを守るようにコリンがマークの前に立ちはだかる。
「マーク、分かっただろう?この子はお前のことなんか名前も覚えちゃいないんだ」
コリンが諭すように言うと、マークは崩れ落ちた。
「そんな……僕に笑いかけてくれたじゃないか……」
どうやらマークは、マリアという少女に一目ぼれしていただけだった。幼い頃からレイチェル以外の異性と接したことがなく、成人してからも男ばかりの騎士団に所属していた彼は、笑いかけられただけで勘違いしてしまうような性格になっていたらしい。……なんて馬鹿らしい。マリアが可哀想だわ。
「いたぞ!捕まえろ!」
「早く国外に連れて行け!」
騒ぎを聞きつけた兵士達がマークをとらえ、ようやく騒ぎは収まった。
「君には本当に迷惑をかけてしまったね。すまない」
申し訳なさそうに頭を下げるコリンを見ていると、こちらの方が申し訳なくなってしまう。気にしないでと言っても気にしてしまうのだろう。だから私は手を組み、祈りを捧げた。オレンジ色の光が騎士団本部を包み込む。
「騎士団本部に守護の祈りを込めました。あのような事が二度と起きないように、私も協力するわ」
そう言うと、コリンはようやく微笑んだ。
「ありがとう、今度はこちらがお礼に伺うよ」
「じゃあその時お茶でも」
なんだかコリンがいつも以上に素敵に見えて、お茶に誘ってしまった。もう婚約者もいないし、新しいトキメキがあっても良いわよね。
ちらりとコリンを見ると少し顔が赤くなっていた。
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