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お茶会(2)
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「あら、噂の伯爵様がいらっしゃったわ! やっぱりお忙しい方は違うわね。堂々と遅れてくるなんて」
「ヘンリー様との逢瀬をお楽しみだったのでしょう? お仕事が一緒だなんて、ほーんと羨ましいわ」
「本当に仕事なんてしているのかしら? 学校に通ったこともないのでしょう? いくら優秀な家庭教師がついていたって……ねえ?」
クリスティーナはひっそりとため息をついた。覚悟していたとはいえ、到着して早々、嫌味を浴びせられるとは思わなかったのだ。
「ようこそ伯爵。私達、とーってもお待ちしておりましたのよ? 時間に遅れるのなら、ご連絡をくださればいいのに」
口だけにっこりと笑って迎えてくれたのが、ソフィア・マルネ公爵令嬢だろう。
艶やかな銀髪と金色の瞳が魅力的で、歳はクリスティーナよりも少し若そうだ。しっかりとした振る舞いからは自信が感じられた。
鋭く睨んでいる目を見るに、クリスティーナに良い印象を持っていないのだろう。ヘンリーが言っていた通りだ。それどころか嫌悪すら感じているように見えた。
「長い時間お待たせしてしまったのですね。お茶会は十五時だと伺ったのですが、皆さんは随分前からお集まりでしたのね」
紹介状でヒラヒラと顔を仰ぐとソフィアの顔が歪んだ。言い返されると思わなかったのだろう。
あまりに幼稚なやり口に、クリスティーナは笑ってしまいそうになる。
「ま、まあ皆さん。せっかく来ていただいたのですから、あまり責めてはお可哀想ですわ。さあ伯爵もどうぞ席へ」
どうやらソフィアは、この嫌がらせをまだまだ続けるようだ。
クリスティーナは黙って指定された席に着いた。
この場にいたのはソフィアの他に、三人。ソフィアの取り巻きだろう。
「皆さんご存知だと思うけど、あちらがクリスティーナ・フェンネル伯爵です。ジュリアス殿下の生誕パーティーでお近づきになったので、今回ご招待したのです」
ソフィアがそう言うと、周りの令嬢たちが一斉に話し始めた。
「あのパーティーで? まぁ、ソフィア様は優しすぎるわ」
「そうよ。ソフィア様はずっとヘンリー様をお慕いしていて、婚約だって本当はっ!」
「伯爵は社交界にいらっしゃらなかったから、ご存じないのよ。ヘンリー様とソフィア様がどれほどお似合いか」
(なるほど……そういうことね。ヘンリーのことが好きだから、私が気に食わないわけか……)
クリスティーナは彼女たちの言葉から、ある程度察することが出来た。だからと言って、なぜこんな嫌味を言うのかは理解できなかった。
(私にどうしてほしいのかしら? 結婚が決まっている相手に文句を言ったって、何も変わらないのに。まあ私は結婚しないけど……)
どう対応すべきか考えていると、ソフィアの甘い声が聞こえてきた。
「いいのよ、皆さん。伯爵が困っているわ。お二人の仲が拗れてしまっては可哀想よ。でも……ヘンリー様って気難しいでしょう? このままでは、伯爵が辛い思いをするのではと心配です。私で良ければヘンリー様のこと、お教えしますわ」
ソフィアが慈悲深い表情を作りながらクリスティーナに申し出た。
黙り込んでいたのが、落ち込んでいるように見えたのだろう。ソフィアの目の奥には優越感がチラリと見えていた。
(人間って厄介ね……)
とにかくソフィアの真意は分かった。クリスティーナをこき下ろして自分が優位に立つ。そして、ヘンリーに相応しいのは自分だと主張したかったのだろう。
それだけのようなので、クリスティーナのすべきことはただ一つだった。
(彼女を言い負かして、反省させればいいのよね?)
「ヘンリー様との逢瀬をお楽しみだったのでしょう? お仕事が一緒だなんて、ほーんと羨ましいわ」
「本当に仕事なんてしているのかしら? 学校に通ったこともないのでしょう? いくら優秀な家庭教師がついていたって……ねえ?」
クリスティーナはひっそりとため息をついた。覚悟していたとはいえ、到着して早々、嫌味を浴びせられるとは思わなかったのだ。
「ようこそ伯爵。私達、とーってもお待ちしておりましたのよ? 時間に遅れるのなら、ご連絡をくださればいいのに」
口だけにっこりと笑って迎えてくれたのが、ソフィア・マルネ公爵令嬢だろう。
艶やかな銀髪と金色の瞳が魅力的で、歳はクリスティーナよりも少し若そうだ。しっかりとした振る舞いからは自信が感じられた。
鋭く睨んでいる目を見るに、クリスティーナに良い印象を持っていないのだろう。ヘンリーが言っていた通りだ。それどころか嫌悪すら感じているように見えた。
「長い時間お待たせしてしまったのですね。お茶会は十五時だと伺ったのですが、皆さんは随分前からお集まりでしたのね」
紹介状でヒラヒラと顔を仰ぐとソフィアの顔が歪んだ。言い返されると思わなかったのだろう。
あまりに幼稚なやり口に、クリスティーナは笑ってしまいそうになる。
「ま、まあ皆さん。せっかく来ていただいたのですから、あまり責めてはお可哀想ですわ。さあ伯爵もどうぞ席へ」
どうやらソフィアは、この嫌がらせをまだまだ続けるようだ。
クリスティーナは黙って指定された席に着いた。
この場にいたのはソフィアの他に、三人。ソフィアの取り巻きだろう。
「皆さんご存知だと思うけど、あちらがクリスティーナ・フェンネル伯爵です。ジュリアス殿下の生誕パーティーでお近づきになったので、今回ご招待したのです」
ソフィアがそう言うと、周りの令嬢たちが一斉に話し始めた。
「あのパーティーで? まぁ、ソフィア様は優しすぎるわ」
「そうよ。ソフィア様はずっとヘンリー様をお慕いしていて、婚約だって本当はっ!」
「伯爵は社交界にいらっしゃらなかったから、ご存じないのよ。ヘンリー様とソフィア様がどれほどお似合いか」
(なるほど……そういうことね。ヘンリーのことが好きだから、私が気に食わないわけか……)
クリスティーナは彼女たちの言葉から、ある程度察することが出来た。だからと言って、なぜこんな嫌味を言うのかは理解できなかった。
(私にどうしてほしいのかしら? 結婚が決まっている相手に文句を言ったって、何も変わらないのに。まあ私は結婚しないけど……)
どう対応すべきか考えていると、ソフィアの甘い声が聞こえてきた。
「いいのよ、皆さん。伯爵が困っているわ。お二人の仲が拗れてしまっては可哀想よ。でも……ヘンリー様って気難しいでしょう? このままでは、伯爵が辛い思いをするのではと心配です。私で良ければヘンリー様のこと、お教えしますわ」
ソフィアが慈悲深い表情を作りながらクリスティーナに申し出た。
黙り込んでいたのが、落ち込んでいるように見えたのだろう。ソフィアの目の奥には優越感がチラリと見えていた。
(人間って厄介ね……)
とにかくソフィアの真意は分かった。クリスティーナをこき下ろして自分が優位に立つ。そして、ヘンリーに相応しいのは自分だと主張したかったのだろう。
それだけのようなので、クリスティーナのすべきことはただ一つだった。
(彼女を言い負かして、反省させればいいのよね?)
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