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♡ え、すごい、そんなサービスやってるんだ♡

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 秋の終わり、銀杏の木が金色に輝く季節、温泉が有名な観光地に旅行に来ていた製紙会社に勤める凛(23)と梢(24)は、無料の足湯体験が出来る場所へと向かっていた。

「ふぇ~、この坂登るのー?」

 凛が肩で息をしながら言った。

「天空の足湯だってさ、あともう少しだよ」

 梢が凛の背中をポンとしながら言った。

「あ~ちっきしょ~」

 愚痴りながらもゆっくりと登る凛。

 しばらくすると足湯に到着した。

「ふぁ~やっと着いた~!」

「すごい景色良いねー、誰もいないし、入ろ入ろー」

 2人は履いていたブーツを脱ぎ、足湯に浸かった。

「ふぁ~気持ちいい~」

 凛がのびをしながら言った。

「結構歩いたからねー」

 梢がふくらはぎをもみながら言った。

「あ~ここでお酒飲めたら死んでもいい~」

 凛が足をバタバタさせながら言った。

「ありますよ」

 2人の背後から声がした。驚いた2人は振り向いた。そこには法被を着た中年男性がたっていた。

「お酒、ありますよ」

「え?」

 と凛。

「ビール、日本酒、焼酎、ワイン、なんでもご所望のままに」

 2人は顔を見合わせた。そして声を揃えて言った。

「ビールで」

「かしこまりました、少々お待ちください」

「あ、あの、料金は?」

 梢が聞いた。

「サービスですので、無料でございます」

「無料!?」

 凛が声を上げた。そして2人はハイタッチした。

「え、すごい、そんなサービスやってるんだ」

「私も知らなかった、最高だね、需要わかってるね」

 法被の中年男性、袴田俊朗は近くに停めてあるミニバンへと向かった。そしてコップを2つ取り出し、中にいるビール大好き横山さんにコップを渡した。

「ビール2つ、よろしく」

「あいよ」

「なんだよまた横山さんかよ」

 ワイン担当の篠山さんがグラスを回しながら愚痴をこぼした。

「まあ、こればっかりは」

 袴田が言った。

「客は?女?」

 焼酎担当の角田さんが焼酎をお湯で割りながら言った。

「はい、若い2人組です」

「いーな~!」

 日本酒担当の渡邊さんが燗をつけながら言った。

「へへへ、役得役得」

 横山さんはそう言って手に持っていた缶ビールをドリンクホルダーに置いて、チャックを下ろした。

『ジョボ、ジョボ、ジョンボボボボボボボボ』

 勢いよくコップに泡立った黄金色の液体が注がれていく。

「あいよ、ビール2つ」

 横山さんはコップを袴田に渡した。一仕事終えた横山さんは、ホルダーに置いた缶ビールをグビリと飲んだ。

「お待たせ致しました」

 袴田は2人にコップを手渡した。

「ありがとうございます~」

 梢が言った。

「ねえおじさんも入って入って~」

 と凛がスマホを自分達に向けながら袴田に言った。

「カンパーイ!イエーイ!!カシャ」

『ゴクゴクゴクゴク、プハー!!』

「うま~い!!おじさんこれなんて言うビール?」

 凛が袴田に聞いた。

「はい、横山産地ビールでございます」

「へ~、すごいドライなんだけどコクがあって、喉越し爽やかで美味しいですー」

 梢がビールを見ながら言った。

「ありがとうございます、伝えておきます」

 袴田はそう言ってその場を去り、ミニバンに乗り込んだ。そして次の温泉地へ向けて、旅立った。
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