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迷宮13-5)盗っていっちゃだめですよ?
しおりを挟む「そろそろゴールについてもいい頃だと思うんだよね~?」
肩の小鳥に話しかけながら、冒険者の女の子はさして迷わず最奥の間に近づいてくる。
わたしは意識を集中して、女神像の髪の毛をふわりと動かして、羅針盤懐中時計を毛先で覆って隠した。
羅針盤懐中時計を冒険者さん達に盗られないためにはどうしたらいいか。
わたし、すっごく考えたのですよ。
コビットさんが預かってくれる案もでたんだけどね?
でもわたし、せっかくの贈りものだから、ずっと身につけていたくて。
最近、冒険者さんが訪れる回数も増えているのですよ。
その度に羅針盤懐中時計をはずすのも、ね?
なので、うーんうーんと悩みぬいて、ふと気がついたのですよ。
女神像も、もしかしたら動かせるんじゃないかって。
レンガをぐぐーっと動かすように、毛先に意識を集中すると、ふわっと動かせた。
女神像はレンガと違ってほぼ白に近い灰色の石像だから、無理かなーって思ったんだけれどね。
レンガみたいにパーツが一個一個ばらばらではなくて、一つの石から削りだしたような感じだから。
でも実際にやってみると、レンガよりも大変だけれど、毛先なら動かせることが判明したの。
だから、冒険者達が最奥の間に近づいてきたら、いそいそと髪の毛で羅針盤懐中時計を覆い隠してる。
こうやって女神像の髪の毛で隠してしまうと、外からではわからない。
物騒な冒険者の女の子も、わたしの大切な羅針盤懐中時計には気づかずに、宝箱だけを見て喜んでいる。
うん、今日の宝箱の中身は毒消しオンリーなのね。
冒険者達が来る回数が増えているし、スライムさんは食欲旺盛だし、毒消しのほうが今は余っているのかな。
薬草も毒消しも、どちらも冒険者さんが喜んでくれるから、コビットさんは本当にすごい。
今度、わたしも育て方を教わろうかな?
レンガを積むぐらいしかできないけど、がんばったら土とかを上手く動かして何か出来るかもしれないしね?
女神像を動かせたのですもん。
ね?
わたしは、ご機嫌に去っていく冒険者の女の子を見送りながら、同じぐらいご機嫌になっていた。
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