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本編1 『幼少期』

第9話 5歳。ストロベリーの洗礼式

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月日が流れるのは早いもので、転生してから5年経ちました。で、本日は私の洗礼式なのです。

ステータスカードはもう既に所持しているけど、『鑑定の儀』を受けてなければ冒険者登録が出来ないみたいなの。

大聖堂や、教会に置いてある水晶で、儀式の時に魔力登録していなければ、冒険者登録の際に水晶に弾かれてしまうらしい。
だから、これから私は儀式に行かなければならないの。

シュタイザー領にある教会で受けるって言ったのに、サイラスもルカリスもユージーンも、屋敷の面々が全員「大聖堂で受けろ」って言うのよ!


「『偽ストロベリー』が居るから大聖堂はイヤ」って言ってるのに、「その件は大丈夫。安心して」って全然引かないの!
だから今、不貞腐れながら馬車に揺られてます…ブー。



そうそう。3歳の引越しの日、サイラスがユージーンを連れて現れ、「もう一人の護衛です」って紹介されたのよ。

「全能神様から神託がありました。宜しくお願いします」ってさぁ。吃驚仰天よ!

しかも!「ウソでしょ……」と呟いて、前庭で悶々としてたら、
《大変!侯爵一家が近くまで来てる!》って、朝っぱらから大慌て!
「一先ず話はあとね!遭遇しないようにしなきゃ!」と、ウルの転移魔法で新屋敷までひとっ飛び!

危機一髪だったぁ。

で、ニヤニヤして私を見詰めるユージーンに言ったわけ、「なんでニヤニヤしてるの?」って。「イヤなら護衛は断っても良いのよ?」って。そしたら、


ユージーン 「不快にさせたのならすみません。これがデフォなんです。なぜか表情筋が動かないんです。ずっとストロベリー様に会いたかったので、傍にいられるだけで幸せなんです。護衛させて下さい、貴方を護らせて下さい」


って言われちゃってねぇ。あまりにも真剣だし、サイラスにも、


サイラス 「ユージは誤解されやすいんです。この歳で剣の腕は立つし、とっても良い子なんです。だから、俺からもお願いします」


ってお願いされて、「そう…色々と誤解されそうなデフォなのね…私も何も知らずに不快な発言をしてしまったわ。ごめんなさいね。そういう事ならお願いします」
ってOKしちゃったのよ。

まぁ、今となっちゃOKして良かったって思ってるんだけどね。なんせ、同じ転生者だったから。

しかも、『誰が私のヒーロー?』のRPGモードのユーザーだったのよ。乙女ゲームの方も全ルートクリアしてたらしくて、色々知ってて聞いてて面白いの。

それに、とても頭が良いいし、本当に強いし、優しいのよね。
前世でも今世でも歳が近いから、今ではとっても仲良しで、一緒に料理したり、鍛錬したり、毎日がとても楽しいの。

護衛騎士なんだけどね…兄妹のような、幼馴染のような…そんな感じで仲良しです。

でも、ちょっと困ったこともあって、恋愛に後ろ向きな私と違ってユージーンはグイグイくるの。
元々、『ゲーム内のストロベリー』を推してたみたいで、本物に会う為にシュタイザー家の騎士になったらしい。

で、元々好きだったし、今はキャラとしてじゃなく、私自身が好きなんだって……まだ5歳なんだけど……
半年くらい前から好き好きアピールが凄くて、恥ずかしいし、困るしで……結構ヘロヘロです。

サイラスとルカリスは、そんな私達を優しく見守ってくれてて、本当のお兄ちゃんみたいなの。

「可愛らしいカップルですね」って言われるのは恥ずかしいからやめて欲しい…困るのよ本当に…

あ、そうそう。商業の神様にプレゼントされた屋敷がデカすぎて、「管理する使用人が必要ね」ってなって、ウルが、《僕の友達だよぉ》と100cmくらいのメイド服を着た男女を《使用人だよぉ》と連れて来た。

これがめちゃくちゃ可愛いの。猫耳、狐耳、熊耳がピョコピョコしてて!全員神族なんだって。

まぁ、なんで男の子もメイド服??って疑問だけど、《これが制服だもん!》って言われちゃったから、受け入れたよ。うん。可愛いは正義だからね!

それと、《家令は兎神族のハクだよぉ》と、うさ耳が可愛い執事服を着たイケオジを紹介された。
うさ耳執事。しかもイケオジ。インパクトが凄いよね!

でも、凄く有能なの。痒いところに手が届くっていうの?次の行動が分かってるかのように動くのよ。有難い。

で、メイドとして来てくれた子達はチョロチョロ動くマスコット。それぞれが好きな事して屋敷で働いてます。

でもまだ子供なので、だいたいは庭で遊んでるのよね。その度に『ハク』に怒られてるわ。

暴れる→怒られる→逃げる→捕まる→お菓子食べる→寝る……これがルーティンなの。可愛いよね。

まぁ、それで良いの。まだ子供だし。私は、自分のことは自分で出来るし、ユージーンが世話焼いてくれるから、ちっちゃいメイド達が傍に居なくても案外平気だったりしてます。

ふふ……ユージーンの過保護と溺愛が凄いんです。イケメンは心臓に悪いわ……

そんな感じで新生活を満喫しているわけですが、引越して5日目くらいかな?ルカリスの友達だっていう、Sランク冒険者の『エドワード』って人が、男の子を連れて遊びに来たのよ。「友達になってやって」って。

エドワードは、「弟だ」って言ってたけど、私はすぐに『違う』と分かった。だって、まだ小さいけど面影があるもの。攻略対象で自分の兄『アルヴィン』の。

だからといって指摘する事はしていない。エドワードが「弟」って言うなら「弟」として扱ってるわ。
遊びに来るのも否とはしていない。「侯爵一家と関わりたくない」とは言ったけど、兄と父は別に嫌ってないから。

敵認定しているのは『ピアーズ』と『キャロル』だけ。あの二人が関わって来なければ良いの。

ウルが《良いの?兄だけど良いの?》って心配してたけど、良いのよ。だって、とっても優しくて良いお兄ちゃんなんだもん。笑顔が可愛いの。

そして、私への可愛がり方が凄いの!遊びに来る度に、「ベリちゃん可愛い」って抱っこして頬スリスリするし、帰る時は抱きついて離れないし…油断してたら連れて帰ろうとするの。

その度に、「俺に勝てたらな」って、ユージーンに挑発され、剣の打ち合いして、最終的にはボロボロになってショボンとして帰って行く。

はは…ユージーンに勝てるわけないのにね…だって『勇者』の称号持ちなんだもん。
Sランクのエドワードと互角に打ち合いするユージーンには勝てないよ……兄……

だけど、2人共楽しそうにやり合ってるから止めないわ。歳が近いから仲良しだしね。

でも、たまにコソコソと2人で秘密の話しをしてて、悪い顔してニヤついてるのはなんなのかしらね……あれはちょっとやめて欲しいわ……ゾワッとするから……

なんだか、どんどん攻略対象者が私の周りに集まりつつあるのよね。
少し前に、オズワルドさんという第二魔法師団の人が来て、「第一師団長の息子さんを連れて来て良いか?」って言ってたのよ。

その子はたぶん攻略対象の一人、『デイビッド』だと思うの。チャラくて女好きキャラなんだって。ユージーンが教えてくれたわ。まぁ、ゲームの設定だけど。

その息子さん、引っ込み思案で友達がいないみたい。
で、私と同じ歳だから仲良くして欲しいってお願いされたの。

(またまた攻略対象か……)と思ったけど、ここは現実!ゲームじゃない!それにユージーンや兄、ルカにエド、サイラスがいるから大丈夫!と思ってOKした。
5日後くらいに来るみたい。ちょっとだけ楽しみです。

でもね、メンズしか集まらないのはどうゆうこっちゃ。私が逆ハーレム築いてるよ。女の子はどこ行った!?


まぁ、転生初日は「また不憫な人生が……」と、思ってたけど、新生活は沢山の人に囲まて、ワイワイガヤガヤと過ごしています。「不憫」なんて全然思うことなく楽しく毎日を生きています。


さて、大聖堂に向かってる馬車の中です。ベリーは「むう……」っとむくれて、一緒に乗ってるユージーンにグチグチと文句を言ってます。
そんなベリーは可愛いだけで、ユージーンにとってはご褒美でしかない。だって大好きだから。


「はぁ……馬車の乗り心地って最悪ね。それにしてもお兄までついてくるとは思わなかったわ。エドワードまでいるし。平民の洗礼式なのに護衛の数がエグくない?こんなに必要なの?
ルカリスもいるじゃん。騎士団の仕事はどうしたのよ……ねぇユージ聞いてる?」


ユージ 「ふふ。ベリーは今日も可愛いね。ムスッとしてても可愛いよ。その服もいいね、ウルに作ってもらったの?
うさ耳パーカーにミニスカ、ニーハイ……いいね。可愛い」


《あはっ!ベリーちゃんはいつも可愛いよねぇ。服はボクが作ったよぉ。うさ耳お揃い!エッヘン!》


「あ!もう!なんで膝に乗せるの!質問にも答えないし。ウル、服ありがと。凄く着心地良いよ」


《どぉ致しましてぇ。あはっ!ラヴラヴ♡どっキュン!ユージ飛ばすねぇ。ヒューヒュー》


「ウル!!」


可愛い可愛い言いながら、さり気なく膝に乗せられて吃驚だわ!動きが全く見えなかった。やっぱり『勇者』はチートよね。


ユージ 「え?お尻痛いんでしょ?チュッ。アルもルカもエドもみんなベリーが好きだし、心配なんだよ。
まぁ、冒険者にも護衛依頼するのはやり過ぎかな?と思うけどね。ウル、俺はこれからどんどん飛ばすよ。取られたくないし」


《良いね良いねぇ。馬車の中がホットだよぉ。邪魔しちゃ悪いから、ウルはサイラスのとこにいるねぇ。存分にチュッチュッしちゃってyo》シュッ。


頭頂部にキスされたぁ!しかもお尻って!確かに痛いけどオブラートに包なよ!
ウルは言うだけ言っていなくなるしぃ!くぅぅ……恥ずかしい……


「ユージ何してるのよぉ。みんなに見られるじゃない!」


ユージ 「ん~?マーキングだよ。アピールしとかないとね。チュッ。冒険者にちょっと厄介なのが参加してるんだよ。
はぁ……ベリーが絡まれないか心配……」


マーキングとか意味わかんない!アピール?誰に?それに厄介って何!?絡まれるとは?……あ、さっきから睨みつけてくる護衛の女の人にってことかな?
それとも、大聖堂で会うかも?な『キャロル』のこと?


「え~。心配なら大聖堂の儀式じゃなくて、領内の教会にすればいいのに…わざわざ1時間掛けて行かなくても…
厄介な絡まれって何よ……凄く嫌な予感がするわ……
あの女の人もだけど、主に『キャロル』が……はぁ嫌だ」


ユージ 「ん~。実は、サイラスと俺に、ウルを通じて神から伝言があってね。《洗礼式は大聖堂で行え》って。
あと、今まで黙ってたんだけど…『キャロル』はシュタイザー家にいないんだよ。色々あって修道院にいるんだ。だから、「その件は大丈夫」って言ったんだよ。
あと、あの冒険者の女はエドワードのストーカー。付き纏われてるんだってさ。門で合流した時にゲンナリしてたよ。ベリーを睨んでるのは、たぶん嫉妬だね。
ベリーが可愛いから。ま、放っとこ「弱い奴ほどよく吠える」ってね」


いやもう、何その色々な衝撃情報は!思わず口パッカーンしてユージーンを見上げちゃったわよ。

「近っ!!」

……口角あげてニヤッてするのやめてよ。表情筋動かないから怖いのよ。頬ツンツンもやめなさい。全く。
イケメンはどんな顔しててもイケメンだわ……顔あっつい……


ユージ 「ははっ。ベリー顔真っ赤だよ?ほら着いたから、その可愛い顔隠さないとね。フード被ってほら」


誰のせいでこうなってると思ってんのよ。貴方よ貴方!『ユージーン・スウィーティオ』よ!もう!



果てさて着きました『大聖堂』  ちょっと疲れたわ……
ユージーンにエスコートされて馬車から降りると、「ヒッ!」凄い視線の数!怖っ!

でもそれは一瞬だった……「凄い……素敵……」

降りて建物を見て、あまりの美しさに数秒息が止まった。
その場所、その周りだけに降り注ぐ光が神々しくて、『神域』って感じがした。天界で感じた空気感に似てて、少し懐かしくなった。

あの時は魂だけの状態だったけど、何となく覚えてる。神聖な空気を。それがこの場所から漂ってて、身体の中が浄化されてく感じがする。

今日儀式を受けるのに集まった人々も、静かに建物を見上げている。中には泣いてる人も、祈ってる人もいた。
5歳なんてまだまだ子供で、普段は走り回ってるだろう子達も、静かに建物を見上げて佇んでる。

『喋らない、走らない、騒がない』が絶対ルールで、みんな決まりを守ってて、純粋に「偉いな」と思った。

「さぁ、中に入って儀式を受けて来て下さい」とルカに言われて、アルヴィン、ユージ、サイラス、私でゆっくりと中へと進んだ。

静かにゆっくりと通路を通っていたら、後ろを走ってくる人の気配を感じた。(ん?)と振り返ったら、サイラスの足元をすり抜けて、フード被った子が突っ込んできた。

ベリー 「!?」

(え!なにこわい!なんかニヤッてしてる!)

いきなりの事で驚いたけど、ぶつかる寸前にサッと避けた。けど、バランス崩して「ベシャ」っと尻もちをついてしまった。

アル 「……!!」

横を歩いてたアルが、手を貸してくれて立たせてくれた。(ありがと兄さん。大丈夫、痛くないからそんな泣きそうな顔しないでよ)

みんな無言である。規則だからね。『決まり事はまもるくん』なのです。

(鍛錬してるのに鈍臭いにも程がある。情ぬ…ところで誰?そして何事??)

体当たりしようと私に迫って来てた子は、私が避けた事でつんのめって、前を歩いてたユージーンに「きゃあ♡ユージーン様ぁ」と言いながら頭から突っ込んでいった。

そのまま抱き留めないのがユージーンである。こちらもぶつかる寸前にサッと避けたので、その子はズザザザーとスライディングしていった。

「「「…………」」」

シスターもブラザーも、近くにいた他の親子も私達もみんな目が点になってる。そして誰も助け起こさない。哀れフードの子よ。

そんなすっ転んだ子は顔だけこっちに向けて、ユージーンとアルヴィンにチラチラ目線を送り、助けてアピールをしている。凄い目ヂカラ……

だが誰も動こうとしないので、焦れたその子はムクッと起き上がり、私を指差し暴言を吐いてきた。


キャロル 「そこの貴方!悪役令嬢のストロベリーね!私のユージーン様とアルヴィン様、そしてペットのサイラスを侍らせて何様のつもりかしら!外にはルカリス様までいたし、傍にはあの素敵な冒険者の人も居たわ!
まさか貴方、ジュノン様とセルビス様まで手中に収めてないわよね!全て私のヒーローなのよ!?返しなさいよ!主人公は私、ヒロインは私なのよ!
雑草は雑草らしく惨めに生きていなさいよ!あんたは所詮、悪役令嬢なのよ!」


そう言いきったあとにフードを外し、睨み付けてきた。その姿は煤けたハニーブロンドの髪とヘーゼルアイ。『誰が私のヒーロー?』のヒロイン、『キャロル』だった。

ただ、服は孤児みたいにボロボロだし異臭がする。目が血走ってるし、おでこも擦りむいてる。
あまりの汚さと臭いに顔が歪んだ。その場にいる全員がだ。

会うのを恐れていたけど、こう会ってみたら全然怖くなくて、むしろその姿が哀れに思えた。(可哀想な子)

私が何も言い返さず、黙ったままだったのが気に触ったのか、「何とか言いなさいよメス豚!」と、手を振りあげてきた。ガリガリの骨が浮いてる手で殴られても痛くないだろうが、触られたくないからサッと避けた。

避けられると思ってなかったのか、「キィィイ!」と悔しそうに唇を噛み締めてる。(あらら、唇から血が出てるわ痛そう)

と、そんなやり取りをしていたら、「「キャロル!やめなさい!」」という声と、「縛」という声が聞こえ、真っ白い騎士服を着た集団がキャロルを取り押さえた。


キャロル 「クッソ離せ!ババアもジジイも助けろよ!親だろうが!ああ~ん、ユージーン様ぁ。アルヴィン様ぁ。貴方のキャロルがピンチですわぁ、助けてぇぇ」


キャロルは終始「助けてぇ」と叫びながら、白騎士達に連れられ去って行った。凄かった。一部始終が凄かった。あれは異常すぎる。怖っ!

呆然と佇んでたら、「はっ」と我に返ったシスター達が、改めて「こちらへ」と待機室へ案内してくれた。

平民は大部屋3か所に集められ待機するらしいのだが、私は個室だった。(良いの?)と目線で訴えたが、ニコッと頷かれたのでペコッとお辞儀して部屋へと入った。

そしてドアが閉まった瞬間、一斉に「「「はぁぁぁ」」」と息を吐き出した。

そこからは堰を切ったように話し始め、みんな口々に「大丈夫か?」と心配されたけど、全然無問題。
寧ろ、心配なのはアルヴィン兄である。顔が真っ青。そうとう怖かったみたい。


「アル大丈夫?顔が真っ青だよ?」


そう声を掛けたら、「ベリちゃん~」と言いながら抱きついてきて頬スリスリ。うん。こりゃ相当ダメージ受けたな。甘んじて受け入れよう。


アル 「あの子ね。妹だったんだよ。まぁ、偽物だったんだけど。色々あって修道院に送られたはずなのに……
なんでココにいるの!?父上は何も言ってなかったから知らないのかな?痩せてたけど化け物みたいだった…
3歳の時の洗礼式の帰りから、僕をあの目で見るようになったんだ。舐めるように見るんだ。怖すぎる!」


うん。偽物の妹だったのは知ってる。本物は目の前だぜ兄よ。修道院行きはさっき聞いたからそれも知ってる。
それと、アルに色目を使うのは攻略対象だからだよ。


ユージ 「あれが『キャロル』か。ヒロインだってよ。ありゃ病気だな。くくっ。5歳でアレとは……
それにしても修道院にいたヤツがなんで外に出てるんだ?まさか、あの場にいた夫婦が両親で引き取ったとかか?なんか知ってるかサイラス」


サイラス 「ああ。本当の両親……有り得ますね。3歳で修道院とか異常ですから、親を探しだして引き取らせたのかもですね。それより!ヒロインとかヒーローとかって何ですかね?ベリー様を悪役令嬢とも言ってましたよね」


やっぱりそこ気になっちゃう感じ?サイラスに教える?どうする?とユージと目線で会話し、屋敷に帰ったら教える事にした。もちろん兄にもね。


ユージ 「その事については帰ったら教えるわ。アルにもな。今日は屋敷に泊まってけ。自分の家に帰っても落ち着かないだろ?エドに頼んで侯爵へ連絡入れてもらうわ」

うんうん。その方が良いよ。実は一部屋アルの部屋にしてあるんだ。泊まっていけるように。一応兄だしね。


アル 「?ん?うん。僕も『ヒロイン』とか『悪役令嬢』とか気になってたから聞きたい。それに泊まって良いの!!凄く嬉しい!ベリちゃん一緒に寝ようね!
(ユージ!侯爵って言っちゃってるよ!エドの弟だって言ってあるのに僕が侯爵家の人だってバレちゃう!)」


ユージ 「(あーベリーは、アルが侯爵家の人間だって知ってるんだよ)コソコソ」


え!一緒に寝る……だと……くっ……兄と一緒に寝る……ちょっと、いや、だいぶん嬉しいかも。兄妹だし良いよね!

あ、ま~た2人で秘密の会話してるぅ。ニヤッとすんなって。ユージの『ニヤッ』はマジ悪役だよ。
兄は『ニヤッ』としても、ただ可愛いだけなんだけどね。


「あ、ねぇ。サイラス、ウルがいなくない?」


サイラス 「あ、ウル様は《見てくるぅ》と言って飛んで行きました。たぶん『キャロル』って子のところでは無いでしょうか」


「なるほど」本当、ウルは偵察好きよねぇ。いつの間にか消えてて、だいたい爆笑しながら戻って来るのよ。
まぁ、聞いてて私達も楽しんでるんだけどね。はは。


コンコン「お待たせ致しました。先程は大丈夫でしたか?これより『祝福の儀』を行います。ストロベリー様は『祈りの間』まで起こし下さい。お連れ様は『鑑定の間』でお待ち下さい。それではストロベリー様こちらへ」


「はい!じゃあみんな後でね。行ってきまぁす」


控え室を出て『祈りの間』へ向かったストロベリー。そこは神界に一番近い場所と言われており、過去の歴代勇者はそこで神と会っていたそう。

それを知らないストロベリーは、緊張しながら部屋へと足を踏み入れた。瞬間、眩い光が襲った。


「きゃぁあああ!!」
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