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第8章 覚めてしまった夢

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 宗太さんのお母さんの家には、すでに叔父さんご夫妻がいらしていた。

「壱子ちゃん、そこに坐ってちょうだい」

 心なしか、お母さんの表情が固い。
 向かいに坐っていた叔父の政喜さんは、しかめ面のまま、こう言い放った。

「宗太と別れてくれ」

「政喜、まだ結論は出ていないでしょう」

「話す余地はないと、さっきから何度も言ってるだろう。だいたい姉さんが宗太を甘やかすから、こんなばかげた事態になったんだろうが」

 彼はテーブルに置いてあったA4サイズの封筒を、わたしに抛った。
 見覚えのある雑誌が入っていた。
 付箋がしてある。

 でも、見なくてもわかっている。
 そこに何が掲載されているのか。

「この間のパーティーに、あんたの事務所の若い子が紛れこんでいてね。あんた、来栖エリカとかいう三流タレントなんだってな。その子たちがいろいろ教えてくれたんで、調べる手間が省けたよ」

 ああ、リサと絢奈だったんだ。
 あのときの声の主は。

 3年前に1度だけ、わたしのヌード写真が週刊誌に掲載されたことがあった。

 モデルをする予定のグラドルがインフルエンザに罹り、酒井さんに頼みこまれて急遽、代役として引き受けた仕事だった。

 絡みこそなかったが、それを思わせるような、かなり際どいポーズはとっていた。

「壱子ちゃん、何かお話ししたいことはある?」
 お母さんはさりげなくその雑誌を閉じながら、わたしに問いかけた。

「いえ、間違いなくわたしの写真ですから。弁解することは何もありません」
 そう答えたわたしを見て、彼女は困ったように眉を寄せた。

「汚らわしい、こんな人が芹澤を名乗れると思っていたのかしら」
 叔母さんが吐き捨てるように言った。

「とにかく、明後日、宗太が帰ってきてから、改めて話し合いましょう」
 この期に及んでも、お母さんはまだ冷静にこの場を収めようとしてくれている。
 それだけでも、とてもありがたかった。
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