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1. Welcome to 王道学園!

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 私立百華咲学園──幼等部から高等部まであるエスカレーター式の人里から離れた場所にある全寮制の学園。
 ここは金持ちの御曹司や名家の子息が多く集う男子校である。
 男子ばかりで思春期にも周りには男子しかいないため、9割がゲイかバイだ。
 残りの1割はノンケだが、それは大体途中入学した人である。まぁ転校してくる人自体、数は少ないのだが。


 これは、そんな波乱万丈間違いなしの学園に在籍する、とある男子高校生のお話────


─────────


「って感じのプロローグですよね?」

「突然何を言い出すんだお前は。頭でもやられたか?あぁ、元々か」

「否定はできませんね!」


 プラチナブロントの髪を指先で弄りながらドヤ顔で言い放った。
 白川 雪月(しらかわ ゆづき)それが私の名前だ。学園の高等部の2年生である。
 そして、目の前で溜息をついたのは友人である、黒瀬 凪(くろせ なぎ)。同じく高等部の2年生である。


 今私達は家庭科室でティータイムに興じている。
 何故家庭科室なのか疑問に思うだろう。
 それは私達が家庭科部に所属しているからだ。昨年先輩が卒業したため、今は部員が私達2人しかいない。

 2人だけの部活動。

 それはそれで気が楽なので積極的に部員は募集しておらず、来た時に対処すればいいだろうと楽観的に考えている。


「そうだ、凪。明日転校生が来るんですって」

「あぁ、なんか話題になってたな」

 相槌を打ってから、凪はカップの中のコーヒーを1口飲む。
 私はふふっと堪えきれなかった笑みを零して話し出す。

「高校2年という中途半端なこの時期に転校生と言ったらやはり、あれしかないでしょう」

「あれって?」

 勿体つけるように紅茶を飲む私を見て、凪は少し眉を顰めて首を傾げた。

「ズバリ!王道学園には欠かせない、王道主人公!恐らく、もじゃもじゃ頭に瓶底メガネの超絶ダサい転校生くんがやってくるはずです!」

 キャー!と騒ぐ私を見て、またろくでもないことを…と溜息をついて凪はコーヒーを煽る。

「あと、理事長の甥だと思うので、私達と同じSクラスに来るはずです」

 私達のいるSクラスは、財閥や金持ちの子供が大半で他は勉学や部活動での成績優秀者が揃っている。Sクラスの下はA、B、C、D、Eと続くが、AからEのクラス分けはランダムだ。


「理事長の甥ってことは確定なのか……」

「当然です。だってこの時期に転校してくるなんて、王道学園の主人公以外有り得ませんからね!」

「そうか」

 意気揚々とする私にツッコミを早々に放棄した凪は、今日の部活動で作ったクッキーを一つ取り、口に運んだ。

「で、問題はその転校生くんの性格です。周りを引っ掻き回しても、常識のある子であればいいのですが……ただ騒ぐだけの馬鹿なら要りません」

「辛辣だな……」

「だって、普通に迷惑じゃないですか」

 私の言葉に、同感だ。と言いながら頷く凪。

「何にしろ、明日が待ち遠しいのは変わりありません。あぁ、今までも波乱万丈でしたが、明日からはもっと楽しいことが起きそうですね!」

 ワクワクしながら話す私に、凪がお前は見た目だけはいいんだが…と呟き、コーヒーを飲む。
 私はその呟きに否定も肯定もせず紅茶を飲んだ。


「本当に、何でこんな事になったんだろうな……」

 唐突にボソッと呟いた凪に、私は凪の言いたい事が分からず、首を傾げる。
 それを見た凪は口を開く。

「またお前と一緒だなんて、何の冗談だってことだ」

 その言葉を聞いて、ああ、と納得した私はニヤリと笑って答える。

「だって、私達は前世から魂の双子でしょう?」

「……確かにな」

 私の言葉を特に否定する訳でもなく、凪は答え、残りのコーヒーを飲み干した。


 そう、私達には前世というものがある。2人は前世では女友達だった。
 もう一度言おう。
 女友達だった。
 そう、今世では2人とも性別が転換しているのだ。
 最初の頃は男になったことに驚いたのだが、私も凪も生活していくうちに順応した。
 『魂の双子』というのは、前世の私達の趣味に対する価値観が驚く程に似ているということから、2人の間でよく使われていた言葉である。

 そんな私達の出会いは中等部1年の頃。
 私が中学受験でこの学園を受けて見事合格した。
 真新しい制服を着て教室に入ると、真ん中辺りの席に座っていた凪と目が合い、お互いに何かを感じ取って、話してみるとあらまビックリ、前世からの友人だったって訳だ。

 凪はお前と一緒だなんて~と言っているが私はそれが2人の間のネタだと理解しているので、オーバーリアクションで返したり、先のように返したりするのが毎度のお決まりになっている。


「とにかく、明日ですね……楽しみです!」

「何でそんな楽しみなんだ?」

「勿論、転校生くんと生徒会の絡みが見られるからに決まってるじゃないですか!」

「転生してもお前は腐ったままなんだな……」

「隠してますけどね!」

 ウキウキしながら紅茶を飲み干す。
 前世からBL好きでお腐れ様な私を見る凪の目が死んでいた事に、私は気づかないフリをした。


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